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Conversation対談

2024.09.09

第86回『損益計算書に載らない価値』

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

「雇わない経営」のほうが利益が出しやすい?

  • 安田

    生田さんは「雇わない経営」についてどう思いますか?

  • 面白い取り組みだと思います。ただ圧倒的多数の経営者は人を雇い続けるでしょうね。

    生田
  • 安田

    やっぱりそうなんですかね。私はもう慣れちゃったので、雇わない方が楽だし利益も出しやすいんですけど。

  • 普通の経営者には難しいんじゃないですか。人を雇って組織として利益を追求する方がイメージしやすいと思いますよ。

    生田
  • 安田

    雇ったほうが利益は出しやすいと。

  • 多くの経営者にはそうでしょうね。ただし、人を雇うとしても「儲かる仕組み」がないといけない。
    そしてある程度の規模まで持っていかなくちゃいけない。この二つは必須じゃないですか。

    生田
  • 安田

    儲かる仕組みと規模ですか。

  • はい。必要最低限のスケールは必須ですね。大きければいいとは思いませんけど。

    生田
  • 安田

    具体的にはどれくらいの規模まで持っていかなくちゃいけないんでしょう。

  • 業種にもよるとは思うんですが。たとえば僕らの業界だったら10億というのがひとつの目安でしょうね。

    生田
  • 安田

    それは市場の大きさによって決まるんですか。

  • 市場の大きさによって変わると思いますが、共通しているのは「何かで1番にならないとダメ」ってことですね。

    生田
  • 安田

    なるほど。

  • 日本人は子供の頃からマンガで英才教育されてるはずなんです。2番を目指す主人公なんていないですよね。

    生田
  • 安田

    確かに。いませんね(笑)

  • 人を雇うなら「利益2000万出たからこれでいいや」ではまずいってことです。
    そこで止まっちゃうといずれ事業として成り立たなくなる。

    生田
  • 安田

    ある程度のポジションまで持っていかなくちゃいけないと。

  • なんらかのポジションで1番にならなきゃダメってことです。
    価格、クオリティを含め、「この分野であればこの会社が一番だよね」というブランドがないと。

    生田
  • 安田

    それは規模が大きいほど作りやすいんでしょうか。

  • そんなことはないと思います。大きくしたことによってクオリティが維持できなくなるケースもあります。
    適正規模が必要ですよね。

    生田
  • 安田

    適正規模を判断するのが難しそうです。

  • なんらかの分野で1番で、なおかつ「業界トップ層で切磋琢磨できる規模感」がベストでしょうね。

    生田
  • 安田

    なぜトップ層にいる必要があるんですか。

  • トップ層に入っていないとマーケットに良い商品・良いサービスとして認知されない。
    だからある程度の規模が必要なんです。

    生田
  • 安田

    なるほど。ある程度の規模感がないと「なんらかの分野での1番」というブランドが生まれないと。

  • はい。そしてブランドを維持するためにはビジネスモデルが必要です。
    各分野にスペシャリストがいるビジネスモデル。そうなると役割分担するだけの規模感が必然的になってくる。

    生田
  • 安田

    なるほど。各分野のスペシャリストによってそのブランドが保たれていくわけですね。

  • そうです。完全に人に依存しないモデルにしたいなら徹底的にスケールしないと。

    生田
  • 安田

    つまり業界ナンバーワンの大企業になるしかない。

  • 大企業はインフラも支えているし社会貢献という意味ではすごいと思います。
    ただ意外と大企業の商品やサービスってファンが育ちにくい。別にそこじゃなくてもいいやみたいな感覚になりやすい。

    生田
  • 安田

    「私の商品」「私のサービス」という感覚が薄れるんでしょうね。

  • そうなんですよ。大きくしすぎると尖ったことができなくなるし。スピード感も失うことになります。
    そういうトレードオフですね。

    生田
  • 安田

    中小企業にはちょっと致命的ですよね。

  • はい。なので大きくし過ぎないということが大事なんです。

    生田
  • 安田

    経営者が意識すべきは1人当たりの生産性でしょうか?

  • いえ。経営者が生産性だけで見てしまうと従業員が離れていきます。「ここじゃなくてもいいや」となるので。
    とはいえ生産性もすごく大事なポイントで。生産性が低いとやはり従業員が辞めちゃう。

    生田
  • 安田

    難しいですね。

  • 中小企業は生産性プラス「損益計算書に載ってこない価値」というものを大事にしないといけない。
    そのバランスですね。

    生田
  • 安田

    効率を重視しつつ、効率では図れない価値を損なわないようにする。

  • はい。それって経営者にしかできない仕事なんですよ。

    生田

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