会社の人気者が社長のバトンを継いでいく
生田さんは「顧客とファンの違い」って何だと思います?
「お客さんを育ててファンにしたい」ってよく言いますよね。
はい。多くの経営者が望むことです。
でも元々ファンになる可能性のある人じゃないと、ならないと思うんです。
つまりファンは元々ファンだってことですか。
前回「機能」と「意味」の話をしたと思うんですけど。
セロテープのファンとか、ハサミのファンっていないじゃないですか。機能として使っているだけなので。
「ハサミのファン」はいないですね(笑)
「このメーカーのこのハサミのファン」みたいな人はいるかもしれませんけど。
そうなんですよ。それって最初からお客さんが「ハサミ」という機能を見てるのか、メーカーの考え方とかコンセプトを見ているのかの違いで。
ファンになる人は「最初から決まってる」ということですね。
情報提供することで「好きになってもらうきっかけ」を与えることはできると思います。
後付けでのファン化も可能だと。
ただし、そのためには「ファン化プログラム」みたいなものが企業側に必要です。
【ファン化に関するサービスについてはこちら】
一生懸命サービスしているだけではファンになってくれない。
ただ「ファンになってほしい」と思っていても、それは無理な話で。
どうすればいいんですか。
ギアを変えてあげるためのプログラムやコンテンツが必要ですね。あとは届け方も非常に重要で。
届け方?
はい。YouTubeをやり始めて分かったんですけど。たとえば安田さんがアイドルだったとして。
私がアイドルだったとして。
安田さんに1,000人のファンがいて、CDを出したら2人に1人は買ってくれますと。
そしたら500枚売れますよね。
はい。
1枚1,000円で500枚だったら売上が50万になるじゃないですか。
そうですね。
これは「CDという音楽を聴くツールを500人に提供しました」ということだと思うんです。
だけど無料でYouTubeに公開しちゃうという方法もある。
ほほう。
無料でYouTubeに公開して、すごくゴージャスなCDを1枚作って、1,000人のファンのうち1名様に100万円で限定販売する。
すごい戦略ですね。1000人の中に買ってくれる人がいるかどうか。
ファンは1,000人ですけど、YouTubeで配信したら1万再生とかするかもしれないじゃないですか。
もっと無限の可能性があるわけですよ。
確かに。
つまり届け方を変えるだけでファンを増やせるわけです。あとは発信主体も非常に大事ですね。
発信主体ですか。
ウチはオウンドメディアで事例公開する時は「コムデック」でやってるんです。
けどYouTubeの「kintone芸人」ではコムデックの名前をほぼ出してません。
そうなんですか。
kintone芸人は「イクタとサタ」でやってます。
それはどうして?
結局「人推し」なんですよ。人にしかファンは付かないので。
「会社にファンを付ける」って、難しいですもんね。
そうなんですよ。だけど中小企業は属人化を辞めちゃってるじゃないですか。
それはどういう意味ですか。
「営業担当」とか「サポート担当」とか「○○課長」とか。
要は、中小企業は名前を奪っちゃってますよと。「千と千尋」の話ですよ。
ファン作りとは逆行してると。
そうなんですよ。
中小企業は「ファン化したい」「ファン化したい」って言っているけど、やってることは顧客集めなんです。
肩書きで寄ってくるのはファンじゃなくて顧客だと。
そういうことです。
生田さんは「ファン」と「顧客」の違いを、どう定義してるんですか?
「顧客は僕らの商品やサービスを購入してくれる人たち。
僕たちの商品やサービスよりもいいものがあったら、そっちに行っちゃう人たち」と社員には言ってます。
ああ、なるほど。
「ファンは僕たちの商品やサービスを提供している“あなた”を応援してくれている人」と言ってます。
だから「イクタ」「サタ」なんですよ。
なるほど。
そして「イクタやサタがいるコムデック」なんですよ。順番が逆なんです。
つまり「個人を際立たせていかないと、中小企業のファンは生まれない」ってことですね。
とくに僕たちはデジタル分野なので。
複製が効くものじゃないですか。作って届けるだけだったらあまり価値になっていなくて。
どういう価値を意識してるんですか。
「〇〇さんがアドバイスしてくれてる」とか。「〇〇さんが困ったときに面倒を見てくれる」とか。
「うちは〇〇さんに任せてる」とか。
そういう役務に意味がくっついてくるんです。
なるほど。
納品したアプリはあくまでも機能でしかないので。
「それをどう運用していくのか」という部分に意味がくっついてくる。だからやっぱり人を出していかないと。
大きい会社だと商品ごとにファンを作ってますよね。
「チョコボールのファン」とか「カレーヌードルのファン」とか。
チョコボールは「キョロちゃん」のファンとも言えます。
大企業はお金があるのでキャラクターでファン化できるんです。
確かに。
中小はそんな予算もノウハウもないし、人でやっちゃったほうが早いんです。
ただし、それは「サタがいなくなる」「イクタが死んだ」で終わっちゃう。
個人にファンがつくとそうなりますよね。その人がいなくなったら終わり。
だから大手は属人化を嫌います。
誰が辞めても問題ないようにキャラにファンをつけるのが大手。でも中小はそれができない。
リスクはあっても中小は人でファン化した方がいいと。
中小企業にはそんな資金力がないので。人を推してあげたほうがいいよねっていう。
社長が頑張って自分のファンを作るのはどうですか?
すごく重要ですよね。だから僕も自分でkintone芸人をやってるわけで。
逆に「社員の誰か」にたくさんファンが付いてる状態って、危なくないですか?
辞めて独立しちゃうとか。
いずれその人を社長にすればいいと思います。というか、そうなっちゃいますよ。
機能性は劣るけど意味のあるムダですね。
いずれその人を社長にすればいいと思います。というか、そうなっちゃいますよ。
お客さんに人気のある人を社長にしちゃうってことですか。
「営業がうまい」でも「経営力がある」でも「ファイナンスの知識がある」でもなく、会社の人気者が社長のバトンを継いでいく。そういう時代ですね。