日本人は「サービス」を勘違いしている
なぜ日本は値上げに関してこんなにネガティブなんでしょう。
だって値上げしたらバッシングされるじゃないですか。
「うわ、あいつ値上げした」「それで車を買い替えた」「家を建てた」って、よくわからないバッシングをされる。
儲けて家や車を買ったって、ぜんぜん良いじゃないですか。
そうなんですよ。なぜ儲けるとバッシングするのか、よくわからないですけど。
値上げに対する負の感情がつきまといますよ。
バッシングされるのが嫌だから、みんな値上げしないんですか。
売れなくなるというのもあると思いますけど。バッシングへの不安の方が大きいと思いますね。
なるほど。だから社員は値上げするのを嫌がるんですね。営業マンとか。現場の販売員とか。
そう思います。
消費者として「安く買いたい」というのは理解できるんです。
だけど値上げしなきゃ自分の給料も増えないんですけど。
値上げのバッシングを受けるのが嫌なんでしょうね。そもそも社員は、お金の話をお客さんにするのが嫌いですから。
確かに嫌いな人が多いです。
高く売るには説明がいるので。安いとお金の話をしなくて済むじゃないですか。
でも「給料はちゃんと上げてほしい」って言うでしょ。
そうなんですよ。
「上げられるわけないだろ」って思うんですけど。不思議でしょうがないです。
日本人は八方美人なんですよ。
お客さんに嫌われたくないってことですか。
そうです。嫌われたくないんです。
だから値上げしたくないと。
そう。
「うちはいい商品を扱ってるから高いんです」って言えばいいだけなのに。
言えませんよ。だって“和を以て貴しとなす”ですから。
私はサラリーマン時代から高く売るのは平気でしたけど。
安田さんは和なんて考えてないから(笑)。
確かに。いかに楽をするかばかり考えてました(笑)
日本人はそういう人が少ないんですよ。
つまり「和が乱れる」から高い提案をしたがらないと。
そうです。
じゃあ「高い提案をして平気な人」って、経営者に向いてる?
稲盛さんが「経営者の一番大事な仕事は値決めだ」と言ってますからね。
やっぱり値決めできる人間はリーダーになっていくんでしょう。
でも普通に考えたら、「社員の給料をできるだけ安くしよう」という社長の会社には人が来ないじゃないですか。
そうですね。
「できるだけ社員の給料を高くしたい」「そのためにできるだけ高りたい」と考えるわけなので。
経営者はそう思っているでしょうね。
なぜ社員もそう思わないのか。不思議でしょうがないです。
日本はサービス業が多いというのも影響として大きいと思いますよ。
サービス業が多い国はたくさんありますけど。
世界では「人にいい状態を与える」「人をいい状況に変える」というのがサービスの定義なんです。
日本だと「あげる」「タダ」「値引き」という感覚なんですよ。
たしかに。サービスって「タダ」っていう意味ですね。
そう。日本のサービスの定義は「あげる」「タダ」「値引き」なんです。
とくに生産性の低い中小企業とか儲かってない中小企業サービスは後者なんです。
だから儲からないと。
コムデックもそうでしたけど。
クラウドサービスとか、ソフトウエアとか、データベース設計とか、形に残って機能が比較されやすいものって、高い利益を取れないんですよ。
たしかに。取りにくいですよね。
現代は製品では高い利益が取れない。じゃあどこで利益を乗せるかというとサービスなんです。
なるほど。
製品で利益を薄く獲得して、さらにお客様をよい状態に変えるサービスで利益を上げる。これしかないです。
サービスを付加価値にするってことですね。
そうなんです。
けど儲かってない会社は「製品の利益をサービスでさらに薄くする」ということをやってしまう。
安くする、タダ、値引きで。
どうしてそうなっちゃうんでしょう。
中小企業はサービスの考え方を間違えてるから。
値引きはサービスじゃないってことですね。
それはグローバルでいう「正しいサービス」ではない。それが分かっていない。
お客さんに「サービスしてよ」って言われたら、「安くしてよ」という意味ですよ。
そこを変えなくちゃいけない。
「サービスしてよ」って言われたら、「いいんですか!?サービスさせていただいて」って言わないと。
「うちのサービスは高いですよ」と(笑)
「サービスしてよ」と言われて値段を下げているようじゃダメ。
その思考回路になっているところがダメなんです。
確かにそうですね。日本人に染みついてますよね。「笑顔0円」とか。タダでおしぼりも出てくるし。
コンビニでサービスを求めて怒鳴ったりする人がいるような国だし。
やばいですよ。海外だったら店員に怒鳴り返されますよ。
日本人はそこでお客さんに謝っちゃうので。「失礼しました」とか言って店長が出てきたりするし。
おかしいですよ。
なぜこんなにサービスを勘違いするようになっちゃったのか。
とにかく経営者は「“サービス”というものの価値観を入れ替える」という作業を、絶対にやらないといけない。
「サービスとは高いものなんだ」と。
そうです。その価値観を持ったほうがいい。
機能的な価値を付加するのではなく、サービス的な価値できちんとお金をもらう。
「付加価値=機能を増やす」と思っている経営者が多いですよね。
人をいい状態に変えるサービス。それが付加価値ですね。
なるほど。まずは社長の頭から変えていかないと。
日本の中小企業は上から下まで、「あげる」「タダ」「値引き」習慣が染みついてます。
自覚がないところがさらに恐ろしい。まずは社長が率先して値上げをしましょう。
既存のお客さんから値上げするのは難しいです。
新しいお客さんに「この値段です」とやっていくほうが早いですね。
まずは新規のお客さんに高く買ってもらって、その後に安い既存のお客さんを減らしていくと。
高くても買ってもらえるようにサービスを磨いて、新規の集客をする。まずはここからです。
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