ホーム  >  対談一覧  >  第14話『“回し”という仕事』

Conversation対談

2023.04.24

第14話『“回し”という仕事』

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

人生の機転

  • 店長が変わって、その人との出会いによって僕の人生が変わりました。

    生田
  • 安田

    店長って何歳ぐらいの人ですか。

  • ちょうど僕の一回りぐらい上。当時32とか3とか。

    生田
  • 安田

    その人は仕事ができたんですか。

  • 仕事もできたし、気づかいもできたし、冗談も言うし、お客さんからも好かれるし。

    生田
  • 安田

    「この人みたいになりたい」と思ったわけですか。

  • 「めっちゃええ人やなあ」と思って。

    生田
  • 安田

    「この人のために頑張ろう」みたいな?

  • そうですね。売上と原価の話とか、働く意義みたいな話を、たくさんしてくれて。

    生田
  • 安田

    キャバクラで「働く意義」を教えるって、凄いですね(笑)

  • 「お客さんが延長することで、こういうサービスを提供することになるから
    働くってことは、こういう価値を生み出すことなんだ」みたいな。

    生田
  • 安田

    よく分かりませんけど(笑)

  • いろんな“カルピスの原液”みたいな話を注入されたわけです。

    生田
  • 安田

    なるほど。人生の本質みたいな話ですね。

  • そうです。

    生田
  • 安田

    そんなの「知らんがな」って子も多いですけど。生田さんはそういう話に興味があったんですか。

  • たぶん、その人にちょっと懐いていたんでしょうね。

    生田
  • 安田

    リスペクトしてたってことですか。

  • はい。その人の言葉だから、「ああ、働くってそういうことなのか。だったら面白いかもな」って。

    生田
  • 安田

    「こうやったら稼げるよ」とかじゃないんですね。

  • 違いますね。

    生田
  • 安田

    若者を巻き込むにはそっちの方が早そうなのに。

  • お金では釣らなかったですね。まあ時給は上がっていきましたけど。

    生田
  • 安田

    それで店長を目指すようになったんですか。

  • スキルにマインドも備わって、「社員にならないか?」って話になってきたんです。

    生田
  • 安田

    で、どうしたんですか?

  • 社員になりました。

    生田
  • 安田

    社員試験とかを受けて?

  • 「社員なりまーす」「どうぞー」みたいな。そんなノリ(笑)

    生田
  • 安田

    簡単ですね(笑)

  • 超簡単(笑)

    生田
  • 安田

    社員になったら何が変わるんですか。

  • まず固定給に変わる。固定給は25万ぐらいですかね。

    生田
  • 安田

    当時の大卒初任給よりかなり高いですよね。

  • そうですね。でもお金だけじゃなかったです。
    社員になるインセンティブを僕は3つ感じていて。そのひとつが給料。

    生田
  • 安田

    あとのふたつは何ですか?

  • 好きな店長と「もっと楽しく仕事できるだろうな」っていうのと、あとは役職がつくこと。

    生田
  • 安田

    役職がつくとどうなるんですか。

  • 箔がつくし給料が上がる。そんな感じです。

    生田
  • 安田

    なるほど。ヒエラルキーの上に行けると。

  • そうです。でも僕にとって重要なのは仕事内容が変わることでした。

    生田
  • 安田

    どう変わるんですか。

  • アルバイトはホールしかやらないんですけど、キャバクラでもっとも花形といわれているのは“回し”という仕事なんです。

    生田
  • 安田

    それはどういう仕事ですか。

  • 「○○ちゃん、きみはあそこの席に行ってください」ってキャストをお客さんのところに付けて、店を回す仕事ですね。

    生田
  • 安田

    それって店長の仕事じゃないんですか。

  • 店長がやるケースは多いです。「回し」という能力の高い人が店長になっていくから。

    生田
  • 安田

    なるほど。順番が逆なんですね。

  • 難しい業務で、かつ花形だから、これがうまくやれるやつは出世して店長になる。

    生田
  • 安田

    生田さんは店長でもないのに「回し」をやらせてもらえたんですね。

  • 「たぶん生田だったらできるだろう」みたいなのがあって。
    「社員になったら、すぐ回しもさせてあげるよ」というのが、大きな動機づけでした。

    生田
  • 安田

    なるほど。「回し」という仕事がやりたかったと。

  • そうなんです。

    生田
  • 安田

    回しって何が難しいんですか。人気のある女の子って、だいたい決まってますよね。

  • 決まってますね。

    生田
  • 安田

    人気のある女の子をいかに効率よく回していくか?

  • そこは大事なんですけど、それだけではなくて。キャストとお客さんの相性を見抜くとか。

    生田
  • 安田

    お客さんの好みのタイプを見抜くってことですか。

  • 大人しそうなお客さんに “押し”タイプの女の子をつけるのか、“引き”のタイプの女の子をつけるのか。ここが回す人間の力量ですね。

    生田
  • 安田

    可愛い子をつければいいとは限らない?

  • 限られたリソースの中でエース級ばかり付けるわけにいかない。
    押しが強いのをつけりゃいいってわけでもない。「どう配置すると、いちばんお店が儲かるか」を考える。

    生田
  • 安田

    なるほど。結構のレベルの高い仕事ですね。

  • レベル高いです。たとえば女の子が20人いて、その中の5人がめっちゃ可愛いかったとして、お客さんが20人入って来たとしたら。

    生田
  • 安田

    どうするんですか。

  • 可愛い5人をひとつの卓に集中させたら、他の卓の客は帰っちゃうかもしれない。

    生田
  • 安田

    そりゃそうですね(笑)そこはバランスよく。

  • 問題は女の子をどう入れ替えていくか。
    基本は50〜60分の中で3人ぐらいの女性に接客されるんですね。15分ずつぐらい。

    生田
  • 安田

    その中のひとりは可愛い子をつけるとか。

  • 延長前に可愛い子を持っていったほうが「もうワンセットいこうかな」「延長しようかな」ってなるじゃないですか。

    生田
  • 安田

    確かに。せっかく可愛い子が来たのに「時間切れ」とか、ありますよね。

  • 逆に可愛い子がいなくなったら、「この機会に帰ろうか」とか。

    生田
  • 安田

    なりますね。同じ組み合わせでもつけるタイミングで売り上げが変わると。

  • そうなんですよ。だから店の売上を決めるのは回しの能力と言われてます。

    生田
  • 安田

    同じ卓で誰に可愛い子をつけるかも考えるんですか。

  • もちろん。席の中でイニシアチブを持っている人に合わせます。

    生田
  • 安田

    それはお金を払う人ってことですか。

  • 常連の場合もあるし、「今日はこの人を接待してあげないといけない」ってケースもある。

    生田
  • 安田

    それはどうやって見抜くんですか。

  • 常連の人が教えてくれます。それを聞き出せる関係性をつくっておかなきゃダメ。

    生田
  • 安田

    凄い仕事ですね。ちなみに回し係ってフロアに何人ぐらいいるんですか。

  • ひとりでぜんぶ仕切るんです。だから面白いんですよ。

    生田

生田智之 伊勢で働く社長のチャンネル生田智之 伊勢で働く社長のチャンネル

※掲載されているすべてのコンテンツの無断での転載、転用、コピー等は禁じます。©Copyright Comdec. All Rights Reserved.