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Conversation対談

2023.04.03

第11話『焼きそばパンは答えではない』

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

うわべだけ真似する人はどの世界にもいる

  • 安田

    知能ではAIに勝てないですよね。

  • 基本的にはそうですね。知能はAIになると思います。

    生田
  • 安田

    昔は人間が指示した通りに機械が動いてましたけど。知能と労働が逆転しちゃった感じですか。

  • その知能に対して、新たな価値につながる「問いかけ」ができるのが人間ですね。

    生田
  • 安田

    問いかけ?たとえばどのような。

  • そこに答えはないんですよ。「自分たちって何者なんだろう?」とか「どういうものを後世に残したいのか?」というバックボーンによって、問いが変わってくる。

    生田
  • 安田

    難しいですね。

  • この問いができる人間になるには感性が必要です。すなわち文化とか教養とか地域の歴史とかをわかっている人間がAIに問いかける。

    生田
  • 安田

    問いかけるとどうなるんですか。

  • 問いかけると AIが答えを返してくる。いま流行りのチャットGPTみたいに。

    生田
  • 安田

    チャットGPTって凄いんですか?

  • 凄いですよ。なんでも答えてくるので。

    生田
  • 安田

    じゃあ答えはもうAIに任せれば間違いないと。

  • 答えを出すのはAIだけど、出てくる答えは問いによって違うということです。

    生田
  • 安田

    なるほど。いい答えを得るにはいい問いが必要なんですね。

  • 問いに良いも悪いもないんですよ。

    生田
  • 安田

    え!ないんですか。

  • 問いに対する答えには良し悪しがあるけど。問いに良し悪しはないです。

    生田
  • 安田

    お金になる問いとか。

  • たとえば「上がる株を予想してくれ」とか、そういう問いはもうAIが勝手にやってしまうわけです。

    生田
  • 安田

    良し悪しがない問いだから人間にしかできないってことですか。

  • そうです。ものすごく早すぎるものとか。

    生田
  • 安田

    早すぎる?

  • あまりにも今の流行から先に行ってるものって、売れるかどうか分からないじゃないですか。

    生田
  • 安田

    予想できる範囲ならAIがやってしまうと。

  • そうなんです。

    生田
  • 安田

    つまり「何をやるべきなのか」というより、「何をやりたいか」というような根源的な問いですね。

  • そう。現時点ではそこは人間が考えていくしかない。

    生田
  • 安田

    人間の役割があって良かったです(笑)

  • AIが候補をつくることは出来ます。たとえばAIが絵を描いたり音楽をつくったり。

    生田
  • 安田

    AIがつくった絵や音楽の中から「これがいい」というものを人間が決めると。

  • AIが作ったベースを人間がアレンジするとか。

    生田
  • 安田

    人間がゼロから作るアートは無くなるんですか。

  • なくならないと思います。どちらが売れるかは分かりませんけど。

    生田
  • 安田

    AIが描いた絵と人間の画家が描いた絵を、普通の人は見分けられるんでしょうか。

  • たぶん99.9%の人は見分けがつかないと思います。

    生田
  • 安田

    ですよね。マーケットで買うのはそういう人たちですから。

  • そうなんです

    生田
  • 安田

    ということは「売れるものを作ろう」ということ自体に意味がないと。

  • お金という解像度で考えるとテクノロジーには勝てないと思います。

    生田
  • 安田

    株や為替みたいなお金を増やすゲームでは、もう人間は勝てないですよね。

  • 勝てるとしたら「信用」でしょうね。

    生田
  • 安田

    信用ですか。

  • 信用もしくはコミュニティ。コミュニティの中核にあるのは共同幻想じゃないですか。

    生田
  • 安田

    共同幻想?

  • コミュニティの参加者全員が「価値がある」と信じているものですね。

    生田
  • 安田

    なるほど。

  • 基本的に「算数できるものは絶対にAIには勝てないよ」というのが明確になったということです。

    生田
  • 安田

    信用は算数できませんか。

  • 算数できない信用が「どこにあるんだろう」って考えることが大事。焼きそばパンは算数できない価値じゃないですか。

    生田
  • 安田

    例の焼きそばパンですか。ビュッフェの時間が終わった後に賄い食で作ってあげる。

  • そう。焼きそばパンを提供されたお客様がホテルのファンになるかもしれない。そのコミュニティのファンになるかもしれない。
    【ファン化に関するサービスについてはこちら】

    生田
  • 安田

    かもしれないってことは、ファンになるかどうか分からないってことですよね。

  • 分からないですね。人間の心の問題なので。計算できないんです。

    生田
  • 安田

    「ウチもビュッフェの時間が終わったら焼きそばパンを出すぞ」と真似しても、うまくいかないと。

  • うまくいかない。焼きそばパンは答えじゃないから。

    生田
  • 安田

    全体を見ずに部分だけ真似する人って多いですよね。

  • うわべだけ真似する人はどの世界にもいます。

    生田
  • 安田

    焼きそばパンは象徴ではあるけれど、答えではないということですね。

  • そうです。だからAIにはできない。

    生田
  • 安田

    「もしかしたら喜んでくれるかも」と想像することが人間の価値なんでしょうか。

  • 人を幸せにできるのは人だけなのかもしれません。

    生田
  • 安田

    深いですね。

  • そこには人間味とか、その人のアドリブとか、「伊勢だから」とか、計算できない不確定な要素が必要だと思うんですよ。

    生田
  • 安田

    伊勢だから?

  • たとえば「あの人は京都出身だから、おそらくこういう景色が好きだろうな」とか。「ちょっと薄味にしておいてあげたほうが喜ぶだろうな」とか。

    生田
  • 安田

    なるほど。

  • それって京都のことを知ってるとか、その人を思いやるとか、いろいろ複合的じゃないですか。

    生田
  • 安田

    思いやりって複合的なんですね。

  • 複合的で複雑系なんです。

    生田
  • 安田

    そのためには教養なり文化なりを背景にした感性が必要ってことですね。

  • それがないと出来ない行為です。

    生田
  • 安田

    もしかしたら会社や資本主義が生まれる前のほうが、人間って感性が豊かだったのかもしれないですね。

  • それは間違いないでしょう。

    生田

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