あなたの会社は、近代的な事業体になってますか?
デービッド・アトキンソンさんをイベントに呼ばれたそうで。
はい。コムデックの恒例イベントを伊勢でやっておりまして。基調講演をお願いしました。
中小企業の経営者の中で賛否が分かれるタイプだと思うんですけど。
そうですね。
日本は零細企業が多いからダメなんだっていう意見の方ですよね。
だけど日本ってそういう零細企業で成り立っている国じゃないですか。
じつは彼自身も中小企業の社長なんですよ。小西美術工藝社っていう。
そうなんですね。どんな会社なんですか?
国宝とか重要文化財の修繕・補修を業務にする企業です。
日本の文化や日本の伝統、日本の技術を大すごく事にしていて。日本が好きなイギリス人なんですよ、彼は。
へえ。意外ですね。
そういう一面を知らない人も多いので、単に中小企業の悪口を言ってる人だと思ってる。
僕は好感を持ってるんですけど。
日本の文化を残していくためにも「ある程度の企業規模が必要」ってことでしょうか。
日本には素晴らしい商品やサービスがたくさんある。
グローバルでは評価されているのに国内では安いまま。それを変えていきたいんでしょう。
話を聞くと確かに好感持てますね。
日本はずっと現状維持じゃないですか。それによって格差も開いていってる。そこを変えていきたい。
その1つの手段として「中小企業もイノベーションを起こしましょう」「生産性を上げましょう」という話。
なるほど。
生産性を上げるには「企業の統合整理」みたいなのは必要なのかもしれないと思います。
確かにそうですね。
辛口なイメージですけど、割と正しいことを言っているのかなと思います。
ただ安田さんがおっしゃった通り「アトキンソンが嫌いだから今年は行かない」っていうクライアントさんもいました。
分かります。そういうイメージありますよ。
ほんの数名ですけど、いつも来てくれるクライアントさんで。結構びっくりしました。
数名で済んでいるところがすごいですよ。賛否分かれますから。
分かれますね。
でも言ってることは正しいですよ。
ヨーロッパのワインシャトーも家族経営なんですけど、ちゃんと近代化しているというか、近代的な事業体になってます。
そうなんですよ。
商品は伝統を守って作ってるんですけど、事業として近代化すべきところはしていってる。
日本もせっかくいいものをたくさん持っているわけですから。経営者が発想を変えていかないと。
そこが問題であることは事実ですよね。
やっぱり日本は社長が多すぎるんですよ。その大半が従業員の上位互換みたいな人たちで。
働き者なんですけど、やってることは従業員なんですよ。
企業体になっていないと。
企業組織になってない。
顧客価値だとか、組織能力だとか、従業員満足とか、そういうことを考えて会社を伸ばしていく専門家ではない。
現場の専門家がリーダーをしてるだけ。アトキンソンさんが嫌いな社長の大半は現場社長なんですよ。
日本は経営の専門家じゃない人が社長をやってるケースが多いですよね。
ヨーロッパの会社みたいに経営のプロみたいな人を雇えばいいのに。
ほんとそうなんですよ。
ワイン作りが好きなら、自分は現場をやって経営はプロに任せて、オーナーとして報酬を受け取ったらいいだけ。
まずそういう発想がないです。教育されていないから。お金の教育、経営の教育がなされてない。
日本の経営者って働き者だし、現場にも強いんだけど、戦略的に経営することができないですよね。
中小企業庁が「中小企業を強くする」っていつも言ってますけど。
彼らの施策って思考転換のための教育じゃなくて、甘やかしてお金を投下してるだけ。
育成というより延命ですよね。
そもそも働き者の社長で成り立っていたのは人口が増えてる時代の話ですよ。
真面目なだけではもう無理だと。
人口が減ってマーケットがシュリンクしていく中で、下りエレベーターをがむしゃらに登ろうとする社長はもう無理なんです。
ビジネスモデルを変えてスキップしながら登っていく社長の方がいいわけですよ。
早く走れなくても下りエスカレーターを上りエスカレーターに変える力がある。それが経営力があるということ。