人間の感情にアプローチ
最新のAI事情について生田さんに聞きたいんですけど。
はい、何でしょうか。
実は私、X(旧twitter)で投稿する時に挿絵をAIに描いてもらうんです。これがまた一瞬で出来るんですよ。
そういうのは一番得意なところですね。
そうなんです。「こういうイメージ画像を書いてください」って言ったら一瞬で出てくる。
「ちょっとここを変えて」って言ったら一瞬でアレンジしてくれる。とにかくすごいんです。
分かります。下手なデザイナーに発注するより良かったりしますよね。
そうなるとデザイナーの仕事は当然減っていくわけで。
二極化していくんじゃないですか。AIで代用されちゃう人と、より価値を発揮していく人と。
より価値を発揮するのはどういうデザイナーですか?
AIを活用してデザインする人も出てくるし。
指名が入るような個性的なデザイナーはより価値が高くなっていくと思います。
代用されちゃうのはどういう人ですか。
ただ単に言われた通りの挿絵を描いてた人は仕事がなくなりますね。
的確な指示さえすればAIで代用できますからね。しかも一瞬で完成してコスト0円。
その「的確な指示」という部分が面白くて。
逆に言えば的確な指示がないと的外れな挿絵が上がってきてしまうわけですよ。
分かります。私も自分で指示しておいて「あれ?」っていう絵が出てくることがあります。
人間はその曖昧な部分も汲み取って「おそらくこういう絵が欲しいんだろう」という推測ができるわけですよ。
だけどAIはある意味こちらの指示に忠実だから。
人間のデザイナーでも推測できる人は少ないですよ。ちゃんと伝えても理解してくれない人もいますし。
そういうデザイナーは完全に置き換えられていきますね。
適切な指示をすればAIは忠実に仕事をしてくれますから。
Xの挿絵程度ならAIの方が早くて正確です。
「1点2,000円で描きます」という安いだけのデザイナーは食えなくなっていくでしょうね。
「指示されていないことまで察する」ということが出来ないと食えなくなると思います。
AIを使った新しいデザイナーも出てくるので。
それはどんなデザイナーですか?
AIに的確な指示を与えて挿絵を描かせるデザイナーとか。
なるほど。そこにもノウハウが必要ですもんね。
何度指示しても「思い通りの絵が上がってこない」という時もありますし。
そこを代行していくスペシャリストは出てくるでしょう。
これは挿絵に限らずいろんな分野で出てくると思います。
AIはキャッチコピーも書けるし、作曲もできるし、コーディングまでやりますから。
いろんな挿絵をストックしておいて「ぴったりの挿絵を紹介するデザイナー」とかは、どうですか。
キュレーションするっていうことですか。マッチする絵や写真を選ぶみたいな。
そういうイメージです。
あり得るでしょうね。ただAIは人件費がかからないので。選ぶより作る方が早いかもしれません。
確かに。同じ指示を出しても違う絵をいくつも作ってくれたりするし。
いずれにしても「どうやってAIを活用していくのか」という勝負ですね。
AIを活用できない人は生き残っていけなくなると。
AIが苦手な仕事もあるので。逆にそういう仕事は増えると思いますよ。
たとえばどんな仕事ですか?
たとえば人間関係ですね。
縁を繋いだり、思い出を作ったり、その場所に一緒に行ったり、時間を共に過ごしたり。
これはAI が苦手な分野だと言われています。
なるほど。つまり「AIを駆使する仕事」と「AIが苦手な仕事」が増えていくと。
そうです。
僕らは伊勢で仕事をしていますけど、伊勢のような歴史的なものは作れないし、そういう価値との出会いも作れない。
基本的にAIは新作を作るのが得意なんですよ。
確かに。毎回新作を作ってきますよね。
音楽にしろ、動画にしろ、テキストにしろ、アートにしろ、瞬時にたくさんの新作を生み出す。
それがAIの強みですね。
同じテーマで「10個挿絵を考えてくれ」って言ったら、人間のデザイナーは怒りますもんね。
めちゃくちゃ費用もかかるじゃないですか。
だけどAIだったら100個でも作れてしまうわけですよ。ノーコストで。
そこと張り合う仕事はしんどいです。
数や単価で勝負してはいけないと。
数・スピード・価格で勝負するのは無理です。もっと人間の感情にアプローチしないと。
「あなたは今こういう気分でしょ?」ってミスターチルドレンのイノセントワールドをかけられるのが人間。
AIに思い出は作れないので。