個別最適化?
新潟県の過疎地に「めちゃくちゃ高いけど売れてる古着屋さん」というのがあるらしいです。
生田さんは古着とか着ますか?
気に入ったものがあれば着ますけど。最近は買ってないですね。
なんとデニムジャケットが638万円。作業着が297万円。
1番高いのは1650万円のジーンズで去年の秋に売れたそうです。
高すぎですね(笑)
めっちゃ高いじゃないですか。でも海外の人がわざわざ買いに来るらしいです。
海外に比べたら安いんですって。
転売ですかね。
そうなんです。海外でさらに高く売れたりするらしいんです。
なぜこんな古着が売れるのか。
分かります。ビンテージってことですよね。
そうビンテージ。言い換えれば単なるボロですよ。
単なるボロではないですけど(笑)
「今の技術では作れない」とかなら分かりますよ。日本刀や昔の大工道具みたいに。
はいはい。
言ったら工業製品じゃないですか。手作りでもないし。
まあ、そうですよね。
なぜこんなに人気があるのか、こんなに高いのか不思議。
そもそも昔のリーバイスってそんなに大量生産なんですか。
もちろん今ほど大量には作れないでしょうけど。でも当時の量産品ですよ。
同じデザインで作ろうと思えば今でも作れるはず。
復刻版とかもありますもんね。
あります。昔のデザインにインスパイアされたシャツとか。
それだったら分かるんです。私も欲しいなって思いますし。
でも古着ですよ。ボロですよ。
世の中にはいろんな人がいるってことです。メルカリでトイレットペーパーの芯を買う人もいるぐらいですから。
ITで世界が繋がったからでしょうね。昔だったら新潟の過疎地では絶対に成り立たないですよ。
ネットがなかったら絶対に成り立たない。
ですね。まあ個別最適化の極みですよ。
個別最適化?
ニーズのマッチングですね。近代アートみたいなもんじゃないですか。この古着屋は。
近代アート?
近代アートって個人の好みで売れていくじゃないですか。
確かにそうですね。
作家とファンがネットで繋がっていて、自分で個展を開いたりして。アートで生活できる人が増えてるイメージです。
古着の場合は目利きみたいな人も必要になるはずで。まあワインと一緒ですよ。
ウイスキーは12年も18年ものが毎年出てきますけど、1950年のワインはもう増えることがない。
古着とビンテージワインは近いってことですか。
これ以上増えることはないので。ワインよりはニッチだけど、そういうマーケットがあるんでしょうね。
ワインなら実際に飲めるわけだし。
古着が600万って高すぎませんか。もはや着れませんよ。ボロボロすぎて。
だからそれは古着ではなくてアートなんですよ。きっと。
つまり眺めて楽しむわけですか。
おそらく初期のリーバイスって、ちゃんとした形で残ってるもの自体が少ないんでしょう。
同じものを復刻版で作っても売れないですかね。
売れるでしょうけど買う目的が違う。復刻版は買ったら着るでしょ。安いから。
だけど古着は着ない。飾って眺めて楽しむ。
貧乏な人が新品を買って、お金持ちが古着を買うと。面白いですね。
新品は実用的なのでどんどん安くなる。古着はどんどん値上がりしていく。
「このデニムはブラッドピットが1回所有してた」みたいな話になって。
NFTみたいなトレーサビリティが古着でも証明できるようになっていきますよ。