店長が変わって、その人との出会いによって僕の人生が変わりました。

ちょうど僕の一回りぐらい上。当時32とか3とか。

仕事もできたし、気づかいもできたし、冗談も言うし、お客さんからも好かれるし。

「めっちゃええ人やなあ」と思って。

そうですね。売上と原価の話とか、働く意義みたいな話を、たくさんしてくれて。

「お客さんが延長することで、こういうサービスを提供することになるから
働くってことは、こういう価値を生み出すことなんだ」みたいな。

いろんな“カルピスの原液”みたいな話を注入されたわけです。

そうです。

たぶん、その人にちょっと懐いていたんでしょうね。

はい。その人の言葉だから、「ああ、働くってそういうことなのか。だったら面白いかもな」って。

違いますね。

お金では釣らなかったですね。まあ時給は上がっていきましたけど。

スキルにマインドも備わって、「社員にならないか？」って話になってきたんです。

社員になりました。

「社員なりまーす」「どうぞー」みたいな。そんなノリ（笑）

超簡単（笑）

まず固定給に変わる。固定給は25万ぐらいですかね。

そうですね。でもお金だけじゃなかったです。
社員になるインセンティブを僕は３つ感じていて。そのひとつが給料。

好きな店長と「もっと楽しく仕事できるだろうな」っていうのと、あとは役職がつくこと。

箔がつくし給料が上がる。そんな感じです。

そうです。でも僕にとって重要なのは仕事内容が変わることでした。

アルバイトはホールしかやらないんですけど、キャバクラでもっとも花形といわれているのは“回し”という仕事なんです。

「○○ちゃん、きみはあそこの席に行ってください」ってキャストをお客さんのところに付けて、店を回す仕事ですね。

店長がやるケースは多いです。「回し」という能力の高い人が店長になっていくから。

難しい業務で、かつ花形だから、これがうまくやれるやつは出世して店長になる。

「たぶん生田だったらできるだろう」みたいなのがあって。
「社員になったら、すぐ回しもさせてあげるよ」というのが、大きな動機づけでした。

そうなんです。

決まってますね。

そこは大事なんですけど、それだけではなくて。キャストとお客さんの相性を見抜くとか。

大人しそうなお客さんに “押し”タイプの女の子をつけるのか、“引き”のタイプの女の子をつけるのか。ここが回す人間の力量ですね。

限られたリソースの中でエース級ばかり付けるわけにいかない。
押しが強いのをつけりゃいいってわけでもない。「どう配置すると、いちばんお店が儲かるか」を考える。

レベル高いです。たとえば女の子が20人いて、その中の5人がめっちゃ可愛いかったとして、お客さんが20人入って来たとしたら。

可愛い5人をひとつの卓に集中させたら、他の卓の客は帰っちゃうかもしれない。

問題は女の子をどう入れ替えていくか。
基本は50〜60分の中で3人ぐらいの女性に接客されるんですね。15分ずつぐらい。

延長前に可愛い子を持っていったほうが「もうワンセットいこうかな」「延長しようかな」ってなるじゃないですか。

逆に可愛い子がいなくなったら、「この機会に帰ろうか」とか。

そうなんですよ。だから店の売上を決めるのは回しの能力と言われてます。

もちろん。席の中でイニシアチブを持っている人に合わせます。

常連の場合もあるし、「今日はこの人を接待してあげないといけない」ってケースもある。

常連の人が教えてくれます。それを聞き出せる関係性をつくっておかなきゃダメ。

ひとりでぜんぶ仕切るんです。だから面白いんですよ。