「生田」が出来上がるまでのお話
パチスロに明け暮れた学生時代(笑)
そうですね(笑)
そこからどうやって「伝説のキャバクラ店長」になったんですか?
当時はバイトも買い手市場で。「バイトするのに茶髪はないだろ」という時代だったんです。
茶髪だったんですね(笑)
茶髪だし、髪も長いし。
普通のバイトは雇ってもらえないと。
無理でしたね。それにお金が欲しかったわけじゃないし。
お金はパチスロで十分稼いでいたから。
はい。「気分転換にちょっと働いてみよう」ぐらいの気持ちでした。
で、パチンコ屋で知り合った常連のおじさんに相談したら「いい店知ってるよ」って。
それがキャバクラ?
はい。「夜の店だったら、ぜんぜん働けるんじゃない?」みたいな感じで。
そのとき初めてキャバクラを知ったわけです。
キャバクラを知らなかったんですか。
行ったことがなかったので。それで電話したら「面接に来い」って言われて。フラッと自転車で行きました。
履歴書は持って行ったんですか。
持っていったと思います。
面接はどうだったんですか。
その場で「今日から来れる?」って言われて。
どうしたんですか?
やっぱり、ちょっと怖いじゃないですか。
いや怖いですよ。いきなり採用とか言われて。裏でどんなことがあるか分からないし。
面接も本当に10分ぐらいで。
仕事内容は教えてくれたんですか?
まったく。
それは怖い。
飲食店のホールみたいなものだとと思ってました。
でも入ったんですよね。
ちょっとビビって「明日からでいいっすか?」って(笑)1日だけリードタイムを経て入りました。
どうでしたか。実際に入ってみて。
面食らったって感じですね。「やっていけるんかな」っていうぐらい。
何がいちばんびっくりしました?
まず人が多いこと。お客さんもバンバン来るし、女の子もバンバン来るし。しかも全員えらそうなんですよ。
黒服さんは腰が低いイメージですけど。
黒服は黒服に対してえらそうなんです。
そうなんですね。
僕みたいな三下に「おい、こいつに仕事教えたってくれ」みたいに店長が言うんですけど、面倒を見てくれる人がいるわけでもなく。
超ヒエラルキー社会ですね。
そうなんですよ。カースト制度でいうところの“スードラ”です。
厳しい!
店長とお客さんと女の子は“バラモン”で。僕は最下層にプロットされたわけです。
綺麗な女の子がたくさんいて嬉しくなかったですか。
ぜんぜん。
キャバクラ勤務する人って、女の子目当てか、お金を稼ぎたいか、どちらかですよね。
そうですね。だから僕は死ぬほどモチベーションなかったです。
よく辞めなかったですね(笑)
「辞めよっかな」って何回も思いました。
たまたま同世代のめっちゃ仕事ができる人が入ってきて。よく話すようになって。
キャバクラで仕事ができる人って、何ができるんですか?
ホール全体が見えていて次に何が起こるかを予測してます。
水が減っていく、氷が減っていく、お酒が減っていく、それを補充する作業をどんどん先回りでやっていく。
なるほど。
僕は何も知らないし出来なくて。
簡単そうですけどね。減ったら持っていけばいいんでしょ。
キャバクラってシステム上50分で席が入れ替わる可能性があるんです。
だからたとえ氷が減っていても45分の席では替える必要がない。帰る可能性があるので。
なるほど。
延長したら替える。でも、そういうことも誰も教えてくれない。
彼ははとにかくホール全体が見えていて、次に何が起こりそうだってことを予測できてました。
「今日から来い」って言いながら誰も教えてくれないんですね。
まったく教えてくれなかったです。だけど店は「猫の手も借りたい」ほど忙しくて。
よく辞めなかったですね。時給はいくらだったんですか?
当時1,100円とか1,000円とか。
パチスロのほうが高いですよね。
圧倒的に高いです。
見返りに合わないですね。
そうなんです。なので、もう潮時かなってときに同世代の子が入ってきて。
その人との出会いが大きかった?
はい。「仕事上手だね。どんな感じでやってんの?」って、ようやく僕も質問できる相手ができたわけですよ。
先輩には質問できなかったんですか。
先輩は2種類いて。
めっちゃ甘い先輩は、「生田くんは裏でゆっくりしてたらいいから。忙しくなったら呼ぶわ」みたいな。あとはまったく目も合わせてくれない先輩。
激甘と激辛しかいないんですね(笑)
そうなんです。
その同世代の人がかっこよく見えたんですか。
見えました。
そこで成長意欲が芽生えるわけですね。
成長意欲とは違いますね。
「こいつができるんだったら、俺もこれぐらいはできる」みたいな。モチベーションは低いままだけど、スキルだけは上がっていったんです。