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Conversation対談

2023.03.20

第9話『働かないアリは必要か?』

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

働きアリでも100%を出し続けていたら崩壊する

  • 安田

    完売するのはよくない?どういう意味ですか。

  • ことば通りですよ。完売しない方がいいんです。

    生田
  • 安田

    弁当とか売れ残ったら困ると思うんですけど。

  • まあ、食べ物はそうですよね(笑)

    生田
  • 安田

    完売しないほうがいい商品って、たとえばどんなものですか?

  • たとえば僕らみたいなサービス業って、完売しなくてもいいじゃないですか。ホテルとか。

    生田
  • 安田

    ホテルは完売した方がいいでしょう!満室の方が儲かるし。

  • そんなことないですよ。スタッフは疲弊するし、辞めちゃうし、かえって儲からない。

    生田
  • 安田

    とはいえ売上は増やしたいし。

  • 完売するより価格設定を変えた方がいいです。

    生田
  • 安田

    安すぎるってことですか。

  • ホテルなんてそうですね。稼働率9割が損益分岐点なんてヤバすぎる。
    3割でそこを超えていくぐらいにビジネス設計、単価設計をしていかないと。

    生田
  • 安田

    3割!飲食やホテルは稼働率90%でようやくトントンみたいな感じですよ。

  • そういう会社ってじつは多いんです。
    ホテルはわかりやすいですけど、人の時間が商品になってるビジネスは全部同じ。僕らのビジネスも同じです。

    生田
  • 安田

    なるほど。

  • 人が8時間稼働したらどれだけ利益が上がるか。ここをまず考えないと。

    生田
  • 安田

    そこが利益の分かれ目ではダメだと。

  • 今まではそれでも良かったんです。でもこれからは厳しい。次の時代に向けての投資もできないし。

    生田
  • 安田

    アリの組織には「働かないアリがいる」って、本で読んだことがあるんですけど。

  • 蟻ですか?

    生田
  • 安田

    そう。アリとキリギリスのアリ。
    アリはみんな働き者だと思われているんですけど、サボってばかりのアリも一定数いるらしくて。

  • そうなんですね。

    生田
  • 安田

    アリ社会にもハプニングがあるらしいんです。そういう緊急時の余力らしいです。

  • なるほど。バッファですね。

    生田
  • 安田

    平時に100%で働いてたら、いざという時に崩壊しちゃうそうです。だから「人間の世界でも働かない人が必要じゃないの?」っていう話。

  • 面白いですね。

    生田
  • 安田

    すごく示唆に富んだ本です。「現実社会じゃ許されないな」って気がしますけど。
    生活保護でも叩かれちゃう世の中なので。

  • そうですよね。

    生田
  • 安田

    生田さんの会社には「働かないアリ」みたいな人って、いますか?
    「Aくんはいいんだ。働かないのが仕事なんだ」みたいな人。

  • いますね。

    生田
  • 安田

    いるんですか!

  • 僕は許容してます。

    生田
  • 安田

    すごいですね。

  • 「なんでこいつはいいんですか?」ってたまに言われることがあるんですけど。

    生田
  • 安田

    そりゃ言われるでしょう。何て答えるんですか?

  • みんなが「言った通りの仕事」ばかりしていたら、考える時間とか、気づきとか、多様性が失われるって。
    よく社内で言ってます。

    生田
  • 安田

    みんな納得してますか?

  • どうなんでしょうね。僕は必要だと思ってますけど。

    生田
  • 安田

    あえて作り出してるんですか?

  • 勝手にそうなっていきますね。

    生田
  • 安田

    勝手に?

  • 強制してやらせるのは簡単なんです。けど、ゆるやかな指示だと、3割ぐらいは掃除しないやつとか出てくるんです。

    生田
  • 安田

    ダメじゃないですか。

  • 会社の指示に従うのは7〜8割ぐらいで、2〜3割は「あ、忘れてました」とか。はなからそういうところに共感していないとか。

    生田
  • 安田

    社員旅行にも来ない人っていますよね。

  • いますね。社内のアンケートも絶対回答しないやつとか。

    生田
  • 安田

    います、います(笑)

  • そういうのも「面白いな」って思って見ていないと。

    生田
  • 安田

    これまでの常識だと、少なくとも言われたことはちゃんとやって、その上で「自分のやりたいことはやれ」って言われました。

  • それが常識ですよね。けど、それだけでは組織が進化しないんですよ。遊びの時間も残しておかないと。

    生田
  • 安田

    遊び時間を与えても「意味ない人」っていませんか?

  • います。

    生田
  • 安田

    ですよね。けど「社員に遊びの時間を与えよう」ってなったら、全員に一律で、「ひとり15分は好きなことをしようね」みたいになるじゃないですか。

  • それだとあんまり意味がないです。

    生田
  • 安田

    「AくんとBくんだけはいいんだ」みたいに言ったら、組織が崩壊しませんか。

  • そのAくんBくんが、他でバリューをめっちゃ出していることが前提ですけど。

    生田
  • 安田

    そうですよね。でもそれって時間差があるじゃないですか。すぐに成果が出ることばかりじゃないので。

  • その通りですね。

    生田
  • 安田

    「三年寝太郎」じゃないですけど、終わってみたら「価値があったね」「回収できたね」って感じで。
    途中段階ではわからないですよ。

  • 分からないからこそ光を当て続けないといけないんです。

    生田
  • 安田

    光を当て続ける?

  • それこそ「千と千尋」の「腐れ神(くされがみ)」ですよ。

    生田
  • 安田

    あのドロドロの臭い神様(笑)

  • そう。腐れ神を綺麗にするといっぱい宝物が出てきたじゃないですか。

    生田
  • 安田

    そうでしたね。

  • その人のいいところに光を当て続ける。性善説かもしれないけど、ダイバーシティのなかでは重要だと思います。

    生田
  • 安田

    「言われたことをその通りにやる方が合ってる」という人もいますよね。

  • そういう社員に「自由にしていいよ」って言うと思考停止しちゃいます。

    生田
  • 安田

    ですよね。

  • でも、やってみないと分からないので。なかなか難しい問題ですよ。
    ウチの場合2〜3割は日常の仕事とは切り離したプロジェクトをやる時間に充てるんです。

    生田
  • 安田

    やってみてどうですか?

  • プロジェクトが苦手な子はいますね。

    生田
  • 安田

    ですよね。

  • プロジェクトってまさにイレギュラーのかたまりなので。

    生田
  • 安田

    アリの場合は遺伝子に組み込まれているそうです。
    「キミは働かないアリだ」「危機的になったらスイッチが入る」って最初から設計されてる。

  • アリの世界だったらそれでいいんですけどね。人間の場合は「働きアリ」が文句を言いますから。

    生田
  • 安田

    そういう場合はどうするんですか。

  • 社長が受け止めて納得させるしかないですよ。

    生田

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