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Conversation対談

2023.03.06

第7話『みんな名前を奪われている』

テーマ「デジタル化の次に来るもの」

消費者は”ストーリー”を買っている

  • 地方にも絞り込んだお店って出てきてるんですよ。

    生田
  • 安田

    たとえば?

  • 街のパン屋がクロワッサンしかつくらなくなって、いつの間にか全国から人が買いに来たり。

    生田
  • 安田

    分かります。

  • そういうのはポツポツ出てきてる。

    生田
  • 安田

    2023年は脱コロナも見えてきたし。みんなで頑張っていきたいですよね。

  • そうなんです。だけど新しいことをやるんだったら、いままでの延長線上で「効率良くがむしゃらに頑張る」のは辞めたほうがいい。

    生田
  • 安田

    もうそっちは無理っぽいですよね。

  • とことん大きくしないと無理です。中小企業は「ちょっと違ったやり方」とか「違ったマーケット」とか「尖った売り方」とか、そういうことをやったほうがいい。

    生田
  • 安田

    私も同感です。だけど間違った尖らせ方をする人が多くて。

  • それはどんな?

    生田
  • 安田

    たとえばさっきのクロワッサンの話ですけど。「クロワッサンが大好きで、クロワッサンだけつくりたい」みたいな人がクロワッサン専門店をつくるのはいいんです。

  • ですよね。

    生田
  • 安田

    だけどそういうお店がヒットすると、「あ、クロワッサン専門店が儲かるのか」って、安易に真似しちゃう人が多くて。

  • 分かります。高級食パンとかそうですよね。

    生田
  • 安田

    そうなんですよ。高級食パンも一斉に流行って、一斉に売れなくなったじゃないですか。

  • あれは「間違った尖らせ方」ということですね。

    生田
  • 安田

    はい。頭で考えて、「どうやら、こういう絞り込みをしたらお客さんが増えるらしいぞ」というやり方は前時代のやり方というか。デジタル化と変わらない気がします。

  • そこで大事にするべきは地元の人だと思いますね。

    生田
  • 安田

    地元の人ですか。

  • はい。地元のずっと来店してくれる人。

    生田
  • 安田

    つまり目の前にいる、いまのお客さんを大事にするということですね。

  • そうです。たとえばECとかをバキバキにやって、そっちにぜんぶ体重を乗せてやったら、結局コモディティ化の話になっちゃう。

    生田
  • 安田

    なるほど。なっちゃいますね。真似しやすくなるし。

  • 「1日〇〇個限定のクロワッサンはここでしか買えません」とか。クロワッサンについてお客様にすごく熱い説明を届けるとか。オフラインを徹底的にがんばる。

    生田
  • 安田

    消費者が何を買っているかというと、クロワッサンを買っているようで、クロワッサンじゃないですもんね。

  • そのとおりだと思います。「クロワッサンが好きで好きでしょうがなくて、めちゃくちゃこだわってクロワッサンをつくっている」という、ストーリーが商品。

    生田
  • 安田

    単にクロワッサンの味とかじゃないということですよね。

  • 違うんですよ。もちろん味も大事なんですけど、応援してもらっている関係になっているということ。「クロワッサン+その人」という世界観が支持されてる。

    生田
  • 安田

    そうなってくると計算ではないですよね。その人の感覚とか世界観みたいなものが価値なので。

  • だから「感性を磨こう」ということで、このメディアを立ち上げたわけですよ。

    生田
  • 安田

    なるほど。

  • 情報に関しては属人化しちゃだめなんです。

    生田
  • 安田

    情報は属人化しちゃだめ?

  • はい。情報格差はいらないんです。ITを使ってみんなに最新の情報を届ければいいし、情報格差なしで働くというのが理想なんです。けどここではき違えちゃいけない。

    生田
  • 安田

    はい。

  • 情報は属人化しちゃいけないんですけど、「この人じゃなきゃだめ」という、お客さんからの頼られ方としての属人化はしていったほうがいい。していかなきゃダメ。

    生田
  • 安田

    なるほど。でもそれって会社にとってはリスクですよね。

  • そうなんです。うちの会社も「こいつに辞められたら困る」みたいな感じなので「スタッフ一人ひとりを薄めよう」と思ったときもあります。

    生田
  • 安田

    そうしないと組織として機能しないじゃないですか。「この人がいなくなったら仕事が止まる」みたいなのは会社として非常にまずいですよ。

  • まずいです。まずいんですけど、その人が「居たい」と思えるようなプラットフォームにしておかないとダメなんです。

    生田
  • 安田

    あえてリスクの高い人をつくって、辞めないようにすると。

  • ONE PIECEでも、ゾロはゾロだし、サンジはサンジだし。

    生田
  • 安田

    たしかに。

  • 彼らが麦わら海賊団から抜けちゃったら、ルフィーはすごく痛手だと思うんです。けど「ゾロ、おまえあんまり目立つなよ」って絶対ルフィーは言わないじゃないですか。

    生田
  • 安田

    「替えがきくゾロ」では意味がないということですね。

  • 意味がないんですよ。

    生田
  • 安田

    なるほど。

  • パン屋の話でいうと、店主がひとり親方で「クロワッサン」プラス「店主」というところで支持される存在になればいいんですけど。

    生田
  • 安田

    はい。

  • 中小企業も最初は社長がそういう形で。集客もファン化も採用も、ぜんぶ社長の力でやっていくことが必要だと思うんです。
    【ファン化に関するサービスについてはこちら】

    生田
  • 安田

    ですね。

  • けど会社が大きくなってくると、従業員もそういう形にならなくちゃいけなくて。

    生田
  • 安田

    替えが効かない存在にならなくちゃいけないと。

  • それがインセンティブにもなると思うんですよ。お金だけじゃなくて、うちの会社で仕事をしていたら「こういう存在になれるよ」って。とくに若い子たちには響くと思う。

    生田
  • 安田

    わかります。生活できないほど給料が安いとだめだけど。やっぱり仕事そのものを楽しめないとハッピーじゃないですよね。

  • 「俺がやった仕事」「俺じゃなきゃいけない仕事」って、絶対に承認欲求として大事だと思っていて。

    生田
  • 安田

    間違いないです。

  • だけど多くの会社は「千と千尋の神隠し」みたいに、従業員の名前を奪っちゃってるんですよ。

    生田
  • 安田

    なるほど。たしかに。「〇〇課所属の営業マン」ですからね。

  • 「コムデック」という船の上でゾロだったりサンジだったりナミだったり。ひとりひとりの役割が輝くようにしていかないと駄目だなと。

    生田
  • 安田

    ワンピースはそれぞれが別の役割ですけど、同じ職種の場合はどうするんですか。

  • たとえばkintone構築なら、「サタさんがやったkintone構築」みたいな形にしたい。そうなれば同質化・コモディティ化と違う路線で戦えるし。

    生田
  • 安田

    じゃあ生田さんは拡大じゃなく属人化に向かうということですね。

  • はい。属人化に向かいます。アイドルビジネスのように属人化していきたいです。

    生田

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