消費者は”ストーリー”を買っている
地方にも絞り込んだお店って出てきてるんですよ。
たとえば?
街のパン屋がクロワッサンしかつくらなくなって、いつの間にか全国から人が買いに来たり。
分かります。
そういうのはポツポツ出てきてる。
2023年は脱コロナも見えてきたし。みんなで頑張っていきたいですよね。
そうなんです。だけど新しいことをやるんだったら、いままでの延長線上で「効率良くがむしゃらに頑張る」のは辞めたほうがいい。
もうそっちは無理っぽいですよね。
とことん大きくしないと無理です。中小企業は「ちょっと違ったやり方」とか「違ったマーケット」とか「尖った売り方」とか、そういうことをやったほうがいい。
私も同感です。だけど間違った尖らせ方をする人が多くて。
それはどんな?
たとえばさっきのクロワッサンの話ですけど。「クロワッサンが大好きで、クロワッサンだけつくりたい」みたいな人がクロワッサン専門店をつくるのはいいんです。
ですよね。
だけどそういうお店がヒットすると、「あ、クロワッサン専門店が儲かるのか」って、安易に真似しちゃう人が多くて。
分かります。高級食パンとかそうですよね。
そうなんですよ。高級食パンも一斉に流行って、一斉に売れなくなったじゃないですか。
あれは「間違った尖らせ方」ということですね。
はい。頭で考えて、「どうやら、こういう絞り込みをしたらお客さんが増えるらしいぞ」というやり方は前時代のやり方というか。デジタル化と変わらない気がします。
そこで大事にするべきは地元の人だと思いますね。
地元の人ですか。
はい。地元のずっと来店してくれる人。
つまり目の前にいる、いまのお客さんを大事にするということですね。
そうです。たとえばECとかをバキバキにやって、そっちにぜんぶ体重を乗せてやったら、結局コモディティ化の話になっちゃう。
なるほど。なっちゃいますね。真似しやすくなるし。
「1日〇〇個限定のクロワッサンはここでしか買えません」とか。クロワッサンについてお客様にすごく熱い説明を届けるとか。オフラインを徹底的にがんばる。
消費者が何を買っているかというと、クロワッサンを買っているようで、クロワッサンじゃないですもんね。
そのとおりだと思います。「クロワッサンが好きで好きでしょうがなくて、めちゃくちゃこだわってクロワッサンをつくっている」という、ストーリーが商品。
単にクロワッサンの味とかじゃないということですよね。
違うんですよ。もちろん味も大事なんですけど、応援してもらっている関係になっているということ。「クロワッサン+その人」という世界観が支持されてる。
そうなってくると計算ではないですよね。その人の感覚とか世界観みたいなものが価値なので。
だから「感性を磨こう」ということで、このメディアを立ち上げたわけですよ。
なるほど。
情報に関しては属人化しちゃだめなんです。
情報は属人化しちゃだめ?
はい。情報格差はいらないんです。ITを使ってみんなに最新の情報を届ければいいし、情報格差なしで働くというのが理想なんです。けどここではき違えちゃいけない。
はい。
情報は属人化しちゃいけないんですけど、「この人じゃなきゃだめ」という、お客さんからの頼られ方としての属人化はしていったほうがいい。していかなきゃダメ。
なるほど。でもそれって会社にとってはリスクですよね。
そうなんです。うちの会社も「こいつに辞められたら困る」みたいな感じなので「スタッフ一人ひとりを薄めよう」と思ったときもあります。
そうしないと組織として機能しないじゃないですか。「この人がいなくなったら仕事が止まる」みたいなのは会社として非常にまずいですよ。
まずいです。まずいんですけど、その人が「居たい」と思えるようなプラットフォームにしておかないとダメなんです。
あえてリスクの高い人をつくって、辞めないようにすると。
ONE PIECEでも、ゾロはゾロだし、サンジはサンジだし。
たしかに。
彼らが麦わら海賊団から抜けちゃったら、ルフィーはすごく痛手だと思うんです。けど「ゾロ、おまえあんまり目立つなよ」って絶対ルフィーは言わないじゃないですか。
「替えがきくゾロ」では意味がないということですね。
意味がないんですよ。
なるほど。
パン屋の話でいうと、店主がひとり親方で「クロワッサン」プラス「店主」というところで支持される存在になればいいんですけど。
はい。
中小企業も最初は社長がそういう形で。集客もファン化も採用も、ぜんぶ社長の力でやっていくことが必要だと思うんです。
【ファン化に関するサービスについてはこちら】
ですね。
けど会社が大きくなってくると、従業員もそういう形にならなくちゃいけなくて。
替えが効かない存在にならなくちゃいけないと。
それがインセンティブにもなると思うんですよ。お金だけじゃなくて、うちの会社で仕事をしていたら「こういう存在になれるよ」って。とくに若い子たちには響くと思う。
わかります。生活できないほど給料が安いとだめだけど。やっぱり仕事そのものを楽しめないとハッピーじゃないですよね。
「俺がやった仕事」「俺じゃなきゃいけない仕事」って、絶対に承認欲求として大事だと思っていて。
間違いないです。
だけど多くの会社は「千と千尋の神隠し」みたいに、従業員の名前を奪っちゃってるんですよ。
なるほど。たしかに。「〇〇課所属の営業マン」ですからね。
「コムデック」という船の上でゾロだったりサンジだったりナミだったり。ひとりひとりの役割が輝くようにしていかないと駄目だなと。
ワンピースはそれぞれが別の役割ですけど、同じ職種の場合はどうするんですか。
たとえばkintone構築なら、「サタさんがやったkintone構築」みたいな形にしたい。そうなれば同質化・コモディティ化と違う路線で戦えるし。
じゃあ生田さんは拡大じゃなく属人化に向かうということですね。
はい。属人化に向かいます。アイドルビジネスのように属人化していきたいです。