イレギュラーを制する者がラグジュアリーを制する
徹底的にスケールするか、そうでないならイレギュラーで戦った方がいいと。そういう話でしたよね。
そうです。地方の中小企業はメジャーリーグを目指すのではなく、草野球を極めたほうがいい。
草野球が好きですね(笑)生田さん。
でも草野球って、グラウンドなんて舗装されていないから。球が思いっきり変なバウンドして「うわ、やべぇじゃん」みたいになるんですよ(笑)
そこは我慢するしかないと。
我慢というか楽しむしかない。むしろイレギュラーで生産性を上げたほうがいい。
イレギュラーで生産性を上げる?
違う言い方をするなら、中小企業は「プレミアム」よりも「ラグジュアリー」のほうがいいってことですね。
イレギュラーがラグジュアリーなんですか。「ラグジュアリー」って高級ブランドのイメージなんですけど。
高級ブランドなんてイレギュラーですよ。あんなの普通の生活にはまったく必要ないじゃないですか。
確かに。
中小企業はそちらを目指すべきだと思います。
たとえばメジャーリーガーは野球がメチャクチャうまいじゃないですか。球が速いとか、飛距離がすごいとか。
そうですね。
「野球で飯を食おう」と思ったらこの競争に勝たなくちゃいけない。
そうなんですよ。そういう競争から「ちょっと距離を置きましょう」ってことですね。
「野球の上手さ」から距離を置いた場合、どうやって食っていけばいいんですか。
その答えは1個じゃなくて。それこそ、さっきの「イレギュラーを楽しむ」みたいなのもあるし、「応援を楽しむ」とか、「お弁当を楽しむ」とか。
なるほど。明確な答えがないってことですね。
「これをやれば必ず儲かる」という答えがあるわけじゃない。だけどその分、答えは無数につくれると思います。
それを自分で見つけなきゃいけないと。
そうです。プライスレスを見つけないとだめ。
まさにラグジュアリーですね。
たとえば朝食はビュッフェ・スタイルで「朝6〜9時までご自由に」というホテルがあると思うんですけど。
ビジネスホテルはだいたいそんな感じですね。
9時5分に行ったらビュッフェが撤去されていて。「もうなくなっちゃったんですか?」「ああ、ごめんなさい、9時までなんですよ」これがレギュラーですよね。
はい。
イレギュラーってなにかというと、「ああ、ごめんなさい。撤去しちゃったんですけれども、ちょっと確認しますね」で、焼きそばパンが出てくるとか。
焼きそばパン?
めっちゃ面白いじゃないですか。焼きそばパンが出てきたら。
なぜ焼きそばパンなんですか。
それをホテルの人がちゃんと説明する必要があって。「今日ビュッフェで提供したパンと夜に提供する予定の焼きそばで、特別にお持ちしました」みたいな。
その人のために作っちゃうってことですか。
そう。レギュラーで飯が食えなかった人を、イレギュラーでちゃんと何とかしてあげる。
通常のサービスに含まれてない、「新しい価値をその場で生み出す」ということですか。
そうです。それって思考停止じゃ絶対に無理なんですよ。
でも捉えようによっては、「定時過ぎてるのに残業して、お客さんに無理やりサービスを提供している」とも取れるじゃないですか。
そうじゃないんですよ。終わってるのに無理やり店を開けるという話じゃなく「Aというサービスができないんだったら、BとかCを考えなくちゃいけない」ということ。
なるほど。
そこにはマーケットが無限大にあるってことなんです。
中小企業は「大手の下請け」ではなかなか厳しくなってきてますよね。
特殊な技術や商品価値がないと厳しいです。
これからは草野球チームとして、食っていく術を考えなくちゃいけない。
そうです。考えなくちゃいけない。
大企業の場合はそれこそ「うまい・安い・早い」って、10人いたら10人とも分かる価値を作らなきゃいけないですよね。
そういう戦いですから。
草野球の場合は「何に価値を感じるか」って、人によって違いますよね。
まさに、そうなんです。
全員にウケるというのは難しい。
難しいというか、そっちの方向で考えちゃいけない。たとえば彼氏が所属している草野球チームだったら応援するじゃないですか。
するでしょうね。
草野球はそういう人間関係を大事にしたほうがいいと思う。
だけど草野球って、マスメディアでは取り上げられないですよ。どうやって人間関係を広げればいいのか。
それもまた「らしさ」だと思うんですよ。「実はこんな感じの試合だった」というのをSNSとかで届けてあげれば、共感する人が増えるかもしれない。
共感する人が増えれば草野球で食えるようになりますか?
それだけでは難しいです。草野球的なビジネスをやるとしたら、いままでの草野球じゃだめだと思うんですよ。
どうしたらいいんですか。ルールを新しく変えちゃうとか?
いろいろ考えられると思うんですけど。要は、そこで楽しんでくれる人がいて、喜んでお金を払ってくれれば商売としては成り立つわけですよ。
理屈は分かりますけど、楽しませるのってなかなか難しいですよ。
難しいですよね。だから、「デジタル化の次に来るもの」が必要なんですよ。これまでの延長ではない価値というか。面白さというか。