労働時間の正しい計算方法・残業代を計算する際の注意点
従業員の給与を正確に計算するためには、労働時間をしっかりと把握し、給与計算に紐づける必要があります。
そして労働時間を正しく計算するには、一般的な知識はもちろん、多様な勤務形態における計算方法の違いも認識しておかなければなりません。
この記事では、労働時間の正しい計算方法や残業代を計算する際の注意点、多種多様な勤務形態における労働時間の計算方法について解説します。
この記事でわかること
- 労働時間と勤務時間の違い
- 労働時間の計算方法
- 残業代の計算方法
こんな人に向いている記事です
- 労働時間の計算方法を知りたい方
- 労働時間や給与の計算をミスなく行いたい方
目次
労働時間とは?勤務時間との違い
労働時間とは、「被雇用者(労働者)が雇用主の指揮命令下で会社のために働く時間」のことを指します。
労働時間は「勤務時間」とよく混同されますが、勤務時間は会社にいる時間=拘束時間を指します。
つまり、始業時刻から終業時刻までの間、全ての時間が勤務時間に該当します。
勤務時間から、指揮命令下にない休憩時間を引いた時間が労働時間です。
原則として会社は給与を労働の対価として支払うため、勤務時間のうち、労働時間が給与計算の対象となります。
勤務時間の計算方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
▼勤務時間とは?正しい計算方法を具体例を用いて解説します
労働時間の正しい計算方法
労働時間の計算は、大きく以下の3つのルールで行います。
- 勤務時間から休憩時間を引く
- 1分単位で計算する
- 遅刻や早退の分は労働時間から差し引く
どのように労働時間を計算していくか、具体的に解説していきます。
ガイドラインに対応するための方法についてはこちら!
▼労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインとは?対応するための方法を解説
労働時間は勤務時間から休憩時間を引いた時間
先ほども説明した通り、勤務時間から休憩時間を引いた時間が労働時間です。
労働基準法においては、給与の支払い対象は実際に働いている時間=労働時間とされています。
そして、法律の見解により、休憩時間は業務とは完全に別のものという扱いですので、会社は休憩時間分は給与を支払う必要はありません。
具体的には、朝8時に出社して17時に退勤し、間に1時間休憩がある場合、勤務時間は9時間で、労働時間は8時間(勤務時間9時間-休憩1時間)となります。
この時気を付けなければいけないのは、「休憩時間は雇用者の指揮命令下から本当に外れているか」という点です。
例えば、休憩時間と言いながらも電話番をする必要がある場合には、雇用者の指揮命令下にあったとみなされ労働時間になるケースがあります。
労働時間は1分単位での計算が原則
原則として、労働者が勤務した時間は1分単位で把握し、給料に反映させなければなりません。
例えば、20分残業しているのにそれを無しにしたり、2分の遅刻を1時間の遅刻として扱うことはNGです。
管理は大変ですが、従業員の労働時間は1分単位で記録し、正確に給与に反映させましょう。
遅刻や早退の場合は労働時間から差し引く
給与の対象となるのは従業員が働いた時間のため、遅刻や早退の場合は労働時間から差し引く必要があります。
その際、実態以上に労働時間から差し引くことはしてはなりません。
例えば、5分の遅刻なのに15分遅刻したとして処理することはできません。
働いた時間分のみ給与を支払う、働いていない時間はその分だけ差し引くという管理を徹底しましょう。
労働時間を15分単位で計算する場合
労働時間は1分単位で計算するのが原則ですが、実際に1分単位で給与を計算しようとすると計算が非常に煩雑です。
そのため、実態としては計算しやすい15分単位などで勤怠管理をしている企業も多くあります。
ただし、これは15分未満であれば切り捨てて計算しているという意味ではありません。
支払いは1分単位で行う必要があります。
例えば18時まであと5分あるので、それまで書類整理をしてからキリよく帰宅するといった様に、意図的に15分という区切りをするとよいでしょう。
15分単位での勤怠管理の方法と注意点についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
▼時給を15分単位で計算する際の注意点・正しい勤怠の計算方法
労働時間には上限がある
労働時間には、各企業によって定められた「所定労働時間」と、法律によって定められた「法定労働時間」があります。
労働基準法により、法定労働時間は1日8時間、週に40時間までと定められており、法定労働時間を超える場合(残業をさせる場合)は36協定を締結しなければなりません。
また、法定労働時間を超過した場合は通常の時給分に加えて割増賃金を支払う必要があります。
割増賃金が発生するケースは以下の3種類です。
- 時間外労働:法定労働時間(1日8時間)を超えた労働のことで、割増率は25%
- 深夜労働:午後10時~午前5時までの間の労働のことで、割増率は25%
- 休日労働:法定休日における労働のことで、割増率は35%
時間外労働の上限規制に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
▼時間外労働の上限規制とは?法改正のポイントをわかりやすく解説します
残業代の計算には月平均所定労働時間数が必要
残業代の計算には、「割増基礎単価」と呼ばれる基本給や手当を足した数値を月平均所定労働時間数で割った数値、つまりは「残業や休日出勤をするときの1時間当たりの単価」を用います。
この割増基礎単価を算出するためには、その従業員の「月平均所定労働時間数」が必要です。
月平均所定労働時間数とは
月平均所定労働時間数とは、1か月あたりの平均的な所定労働時間数を計算した数値で、年間合計の所定労働時間数を12で割ることで求められます。
自社の月平均所定労働時間数を求めるためには、「自社の年間休日数」と「1日の所定労働時間」が必要です。
残業代の計算に月平均所定労働時間数が必要な理由
残業代は「残業時間×1時間当たりの基礎賃金(割増基礎単価)×割増率」で求められ、割増基礎単価を算出するためには月平均所定労働時間数が必要となります。
算出に1か月当たりの平均的な所定労働時間が必要な理由は、月によって同じ時間残業しても手当が異なるということを防ぐためです。
例えば、単純に当月の月給を月の日数で割ってから割増基礎単価を求めると、月によって労働日数が異なるため、割増基礎単価が月によって変動します。
月によって割増基礎単価が異なると残業代も変動してしまうため、月平均の所定労働時間で計算することで変動を抑えるという目的があるのです。
月平均所定労働時間数の計算方法
月平均所定労働時間数は以下の計算式で求められます。
(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12か月 |
なお、年間休日数は各企業の休日数を参照します。
暦通りでなく、各企業独自のカレンダーがある場合はその企業の休日が対象ですので、就業規則を確認のうえ、計算しましょう。
例えば、年間休日数が110日の会社で、一日の所定労働時間が8時間の場合には、以下のような月平均所定労働時間数となります。
(365日-110日)×8時間÷12=170時間
多種多様な勤務形態における労働時間の計算方法
ワークライフバランスの重視や働き方改革の流れの中で、企業には様々な勤務形態があります。
勤務形態に応じて労働時間を的確に把握しなければなりません。
ここではフレックスタイム制、変形労働時間制、みなし労働制について解説していきます。
フレックスタイム制の労働時間計算
フレックスタイム制とは、一定期間内で定められた総労働時間の範囲内で日々の始業・終業時刻を労働者が決められる制度です。
通常の1日8時間、週40時間の計算ではなく、「清算期間の暦日数÷7×40時間」で算出された時間を法定労働時間として計算します。
例えば、1か月単位のフレックスタイム制で、30日ある月の場合は以下のような計算式となります。
清算期間の暦日数:30日÷7×40時間=171.42時間(171時間25分)
この場合、171.42時間を超えたところからが残業という扱いになります。
月の暦日数別の法定労働時間
月の暦日数 | 法定労働時間 |
28日 | 160時間 |
29日 | 165.71時間(165時間42分) |
30日 | 171.42時間(171時間25分) |
31日 | 177.14時間(177時間8分) |
変形労働時間制の労働時間計算
変形労働時間制とは、時期ごとの業務量の違いに合わせて労働時間を月単位や年単位などで調整できる制度です。
代表的な1か月単位の変形労働時間制では、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(※は44時間)以内となるように設定します。
例えば、1週目と3週目が繁忙期の場合に、1週目46時間、2週目34時間、3週目44時間、4周目36時間とすれば、1週間当たりの平均労働時間は40時間となります。
※常時使⽤する労働者数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、 接客娯楽業
このように設定した所定労働時間に対し、実労働時間が上回り、さらに40時間を超えている分については割増賃金が発生します。
具体例は以下の表をご参照ください。
所定労働時間 | 実労働時間 | 時間外労働 | |
1週目 | 46時間 | 45時間 | 0時間 |
2週目 | 34時間 | 36時間 | 0時間 |
週目 | 44時間 | 47時間 | 3時間 |
4週目 | 36時間 | 42時間 | 2時間 |
みなし労働制の労働時間計算
みなし労働制とは、営業などで採用されることが多く、あらかじめ定められた労働時間を労働したとみなす制度です。
例えば、1日の労働時間が8時間と設定されると、実際に働いた時間が6時間でも10時間でも8時間分の賃金が支払われます。
よく企業で取り入れられているのは、「みなし残業」になります。
みなし残業とは、実際の残業時間数に関わらず、一定の時間数分の金額を給与として支払う制度です。
なお、みなし残業代が設定されている場合でも、決められた時間を超過した場合は時間外労働として賃金を支払わなければなりません。
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