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現状認識から始めるDXの挑戦!DXのカギを握る「CX」の考え方のポイント

これまでの担当者勉強会では、中小企業におけるDXの目的とは、単なる業務効率化ではなく自社の事業価値を向上させ、「お客様にとっての自社の価値」つまり競争優位性を獲得することにあると説いてきました。

しかし、いざ「お客様にとっての自社の価値」とは何か?を考えようと思っても、なかなかすぐには出てこない、または出てきても会社の方針から離れてしまっていて的外れ……ということも少なくありません。

そこで今回の担当者勉強会では、これまでの「DXとは」という内容の総括も含めて、「ITを活用してお客様に提供する新しい価値」を順序立てて考えるための方法、「現状認識」とその要素を解説します!

DXとは?業務効率化だけじゃない!事業価値を向上させ競争優位性を獲得すること

社会全体が「ITを前提とした」形へと変革し、ビジネスシーンにおける人々の価値観も「電話でなくては」「対面でなくては」という考え方から、「出社しなくてもいい」「チャットで聞きたいことだけすぐ確認できればいい」「オンライン商談なら移動の必要もない」というように、「当たり前」がITにシフトする時代となりました。

ITが当たり前になることで、ビジネスのスピードはもちろん上がります。これまでの担当者勉強会では、そのビジネススピードの変化に対応するべく、具体的なクラウドツールを用いた業務効率化をご案内してきました。

例えば、LINE WORKS(ラインワークス)を活用したコミュニケーションスピードの向上やDropbox Business(ドロップボックスビジネス)kintone(キントーン)を用いた「いつでもどこでも仕事に関する情報を確認できる」状態の構築等、コムデックラボで数多くご紹介している通りです。

しかし、業務効率化とは「会社の内側」の変化です。

業務効率化だけでは、必ずしも「自社のお客様にとってうれしい変化」につながるとは言えません。

DX(デジタルトランスフォーメーション)において重要なのは、業務効率化したことがお客様にとってプラスになっているかどうかという視点を持つこと。

つまり、お客様(自社の外側)目線で自社の事業価値を上げることがDXの目的になります。

DXに成功している企業とは?4社の具体例を紹介!

それでは、DXに成功している企業とは、どんな企業で、どのような効果が生まれているのでしょうか?

「DX 成功事例」等と検索すると、「RPAによる完全自動化」や「AI、IoTによる大幅な効率化」等が先頭に現れますが、それらはあくまで大企業が莫大な費用をかけて成功させている事例であり、中小企業が真似をするのは現実的ではありません。

そこで、「ITを活用してどんな差別化を行ったか」「お客様目線でどんな価値があるか」に重きを置いて4社ピックアップしてみました。

ワークマン

顧客データ、購買データベースからお客様が求めているものを把握し、従来の「建築現場の作業従事者」向けのラインナップに加えてこれまで主なターゲットとしてこなかった若者や女性向けの機能性ウェアを開発することで他社と差別化を図った。
若年層や女性目線で、機能性に優れたウェアを安価に購入することができるという新たな価値が生まれた。


ZARA
各店舗の販売実績がリアルタイムで生産工場に共有され、過不足のない生産が可能になった。
これにより、販売を担う自社だけではなく、生産を担う会社の業務効率も向上し、店舗で買い物をするお客様にとっては「欲しいものが品切れで無い」という状態がなくなるという効果があった。

コマツ
レンタル重機の稼働状況をリアルタイムで収集し、パーツ交換のタイミング等を予測することで先回りして準備ができるようになった。
これにより、お客様にとっては機器のトラブルで業務がストップするリスクがなくなった。

BASE
Amazonや楽天といった大手ECサイトがターゲットにしていない個人事業の飲食店をターゲットとすることで、コロナによる時短営業等の影響を受けた事業者を一気に取り込み成長につながった。
お客様である個人事業の飲食店からは、出店手数料等が割高となってしまう大手に比べ、手軽に出店できるようになった。

DXを阻む要因と成功のカギ、CXとは?

これらの事例の企業のように、ITを活用してお客様にとっての自社の価値を向上させるためには、ITを扱える人材や、IT活用を推進する体制づくり等がもちろん必要になりますが、それ以上に重要なのは「最終的にお客様に提供したい自社の新しい価値(CX)」すなわちDXのゴールを設定し、「何のためにIT活用するのか」を明確にした「DX設計図」が必要であることは前回の担当者勉強会でお伝えしました。


▼ 【具体例つき】DXの成否を分ける!DX設計図のつくりかた 

自社全体の業務プロセスとそのプロセスで利用するデジタルツール、その効果を測るKPIと会社の最終的な目標であるKGI、そしてCX(顧客体験価値)が一つにまとまったDX設計図をつくり、設定したKPIやKGIの達成に向かって従業員自身が行動を変革していくことがDXの本質となります。

顧客数や売上高、粗利益といったKPI,KGIは、経営者や管理職であれば比較的すぐ思いつくでしょう。これらの数値は中期経営計画等にも明記されているはずです。

しかし、DXのゴールであるCXはどうでしょうか?

CXとは、価格や機能性といった物理的価値だけではなく、満足感や安心感といった感情・経験という「体験価値」を重視すべきという考えに基づく指標です。

商品サービスの機能や性能を高めることはもちろんですが、それらは差別化を図りにくく、またお客様のご要望が多様化、高速化する現代においてはすぐに陳腐化してしまいます。
対して、「満足感」や「喜び」といった体験価値は模倣されにくく、顧客をファン化する大きな要素となるため、DXのゴールにはCXを設定した方が自社の事業価値向上につながるという仕組みです。
CXを考えるときには、以下の5つのポイントで考える必要があります。
  1. 自社の強味に着目して考える
  2. 中期目標を軸にして考える
  3. 将来に向けて打っている手を加味する
  4. ビジネス環境の変化を捉える
  5. 自社の課題を整理する

例えば、コムデックでは以下のようなCXを設定しています。

Zoom版担当者勉強会:参加できなかった顧客も動画を共有する事でDXのヒントをつかむことができる
オウンドメディア(コムデックラボ):顧客が自分の好きなタイミングでDXに関する事例を検索し学ぶ事ができる

建築業の会社様では、「引き渡し時に施主様の新しい家に合ったプレゼントをサプライズでお渡しする」といったCXを設定したり、商社の会社様では「代理店経由の販売を促進するため、最新の営業ツールをクラウドからいつでもダウンロードできるようにすることでお客様が商品を購入できる窓口を広げる」といったCXを設定したりしています。

しかし、これらのCXが一番最初に出てくるかというとそうではなく、先ほど挙げたような5つのポイントを一つ一つ確認する現状認識を行うことで「自社のCXとは?」を導き出しています。

CXを見える化する「現状認識」

現状認識とは、その言葉の通り「自社の現在の強味や課題、取り巻く環境を整理し、今後の方向性を明確にするための手段」です。
現状認識のやり方はいろいろありますが、コムデックではこの一枚のシートで考えていくことをおすすめしています。

流れに沿って進めるので考えやすく、後から見返してもわかりやすい、つまり参加できなかった人にも共有しやすくなっています。

コムデックラボでは、株式会社来夢さまで実施した現状認識の様子をご紹介しました。

強味や課題、は考えやすいのですが、「アキレス腱」や「伸びる引き金」といったワードは、中期経営計画には出てきませんし、耳慣れないワードのため考えにくく、なかなか出てきません。

アキレス腱とは、ひとつは中期目標を達成するために重要となるポイントであり、中期目標達成のために自社がより強化していく必要がある部分です。

さらにもう一つ、課題の中で“このまま放っておくと中期目標を達成できない”というポイントという側面もあります。

課題をクリアするか、アキレス腱に頼りすぎない方法を探していく必要がある部分ということですね。

伸びる引き金とは、アキレス腱のポイントの質量を高めていくために取り組むべきこと、つまり顧客または従業員にとって新たな価値が生まれる取り組みとなります。

これこそがCXであり、現状認識の要と言える部分です。

現状認識の考え方

現状認識を実施する際、アプローチ方法は2通りあります。

まず一つ目は、1番の「我が社の強味/成長要因」からスタートし、順番通りに検討していく「現状からアプローチ」する方法です。

この方法は、実際に業務を行っている現場の方が行う際におすすめの方法になっています。

なかなか意見が出てこない時には、下の画像のような「問いかけ」を互いにすることで現状を洗い出していきます。

現状から考えていくと、4番の「我が社の課題」がたくさん出てくることがありますが、その際にはぜひ「中期目標」に関連性が高いものから優先的に検討するようにしてください。

二つ目は、中期目標を実現するために重要となる5番の「アキレス腱」から考える「目標からアプローチ」する方法です。

「 5.アキレス腱→4.我が社の課題(中期目標実現に足りない部分)→6.伸びる引き金」という流れで検討し、その上で自社の現状(目標との乖離)はどうなっているのかを「我が社の強味/成長要因」から順に振り返っていくやり方になるため、中期目標が明確にわかっている経営者や管理職の方が現状認識を行う際におすすめの方法になります。

現状認識の具体例

先ほどお伝えしたコムデックのCXを導き出すために、コムデックで実施した現状認識の一部をご紹介します!

※今回は、強味/成長要因から順番に検討するアプローチ方法を取りました

まずコムデックでは、5年以上前から毎月お客様にITの最新情報をお伝えする広報誌を発行していたり、夏にはIT活用戦略セミナーを実施したりと「情報発信」に力を入れてきたことが強味/成長要因になります。

そんな中、コロナウィルスの影響により大規模なセミナーは実施できなくなったことはやはり大きな環境変化になります。

一方で、コロナに対応したIT導入補助金C型、D型の登場や、非対面・非接触の広がりはプラスの環境変化と言えるでしょう。

しかし、コムデックでは、コロナ禍以前からの課題として、情報発信の場である担当者勉強会の参加者がいつも同じメンバーになってしまうことや、新規受注はご紹介案件であることが多く、全くの新規から営業によって受注する力が弱いという点がありました。

補助金を活用したい!というお客様や、自社もリモートワークができる環境を整えていきたいというお客様にとって、「自社がどうなりたいのか」を具体的にイメージできるコムデックラボの事例は新たなCXとなります。

また、そこに力を入れることで新規受注力も高まると考えました。

そういった事例や、DXの手法を共有する場としての担当者勉強会をオンラインで開催することで、間口を広げて多くの方に参加いただける環境や、共有できる仕組みを整えることも伸びる引き金であると考えました。

現状認識ができたら、見出したアキレス腱や伸びる引き金から、取組の優先順位を決め、実際に行動に移すための具体的な取り組み計画を立てていきます。

DXとは、これまでの日常業務とは軸の異なる活動のため、テーマから実施内容を細分化し、可能であれば担当者と期日を決めておくとより実現性が高まるでしょう。

現状認識から導き出されるDX設計図…DX設計図が中小企業DXの勝敗を決する!

ここまでできれば、あとはDX設計図に落とし込むことで自社のDXの方向性が定まります。

単なる業務効率化にフォーカスするのではなく、事業価値向上、競争優位性の獲得を目指すためには、現状認識で良いCXを導き出し、そこに向かって行うべきこと、使うべきツールを組み立てていくという考え方が必要です。

また、現状は日々変動するもののため、一度決めたCXは必ずしも1年後、2年後も有効かというとそうではありません。

半年程度のタイミングでもう一度現状認識を行い、CXもアップデートすることが理想です。

DX設計図を構築するために現状認識を行う際には、是非以下の4つのポイントに気を付けて、自社なりのCXを見つけ出してみてください!

現状認識を実施する際の4つのポイント

1.環境変化は広い視点で検討する

  「周りの環境(社会、市場)はどうなっているか」
  「ベンチマーク企業,競合他社は何をしているか」

  「自社の実績(売上/粗利/総労働時間)はどうなっているか」

2.「我が社の課題」≠人手不足

  人手が足りないのはどこの企業も同じ!人手不足を課題にしない

3.「現状の一言集約」は「現在の状態のまとめ」

  今後どうしていきたいかではなく、~という状態で表現できるとなお良い

4.中期目標ベースで考える

  出てきている課題やアキレス腱、伸びる引き金は、中期目標達成に大きくかかわるか?という視点を持つ

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この記事を書いた人

生田 智之

『DXの第一想起者』

日本人の心のふるさとである”三重県伊勢市”を拠点に、中小企業のDX化を支援しています。 kintoneをはじめとする、各社に合ったクラウドサービスの提案から導入、伴走まで一貫したサービスを得意としています。 また、youtubeではkintoneのノウハウを大公開する「kintone芸人」として活動しています。 「DX化したいけど具体的なイメージができない」「こうなりたい!はあるけど手段がわからない」…等の想いをお持ちの企業様、是非一度ご相談ください!

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