kintoneとChatGPTを連携して介護記録に基づく資料作成を効率化|介護福祉事業 株式会社ワンセルフさまの開発事例

介護福祉業界には、サービス利用の記録や家族との面談記録、関係各所への報告資料作成など、数多くの事務作業が存在します。
人手不足が深刻な業界でもあるため、なるべくパソコン作業の時間を減らし、利用者さまと向き合う業務に集中したいと考える方も多いのではないでしょうか。
そんなときにおすすめなのが、kintoneとChatGPTの連携です。
2つを連携して使えば、これまで時間をかけていた事務作業の時間を大幅に短縮することができます。
本記事では、kintone × ChatGPTで資料作成の時間を60分から3分に短縮した、株式会社ワンセルフさまの事例を紹介します。
パソコンが苦手な方の多い職場でも役立つ事例となっていますので、是非ご覧ください!
目次
自社でChatGPTを使ってみたけど効果はいまひとつ……誰でも簡単に使える仕組みを作りたい!
株式会社ワンセルフさまは、群馬県の高崎市と富岡市で10の介護福祉施設を運営する企業さまです。
子ども向けの放課後等デイサービスから成人向けの生活介護まで、幅広い福祉サービスで障害を持つ方とそのご家族を支えていらっしゃいます。
株式会社ワンセルフさまでは、以前は活動記録や面談記録を紙やエクセルで管理していましたが、少し前からkintone(キントーン)を導入し、アプリでの管理に移行されています。
報告用の資料を作る際はこれらのアプリに保存した記録を参照しながら要点をまとめる必要があるため、この作業にもChatGPTを活用してさらなる効率化を図ろうと考えていた株式会社ワンセルフさま。
ところが実際にChatGPTを使ってみると、プロンプトや作業手順はある程度形になったものの、データ加工や受け渡しに手間がかかり、思うように活用が進みません。
現場スタッフの中にはパソコンやAIに苦手意識を持つ方が多いことも活用が進まない要因でした。
そこで株式会社ワンセルフさまは、もっと簡単にChatGPTを使える仕組みが作れないか検討を始めました。
活動記録をはじめとするkintoneデータを、手間なく簡単にChatGPTに流し込むことができれば活用が進むのではないかと考えたのです。
ここでポイントとなるのは、ChatGPTを使うと言っても、全てをAIに任せて自動化するわけではなく、担当者の負担は減らしつつも、人の判断を介在させる余地は残したいという点です。
介護福祉事業である以上、効率化だけを追求するのではなく、スタッフによる共感や思いやりなど、人間らしいケアとのバランスを大切にしたいという思いがあった株式会社ワンセルフさまでは、kintoneでChatGPT連携のためのアプリを構築し、効率的に報告書が作成できる仕組みを作ることにしました。
ChatGPTでできること
そもそもChatGPTとは、米国のOpenAI社が開発した文章生成AIのことを言います。
文章で質問や指示を入力すると、事前に学習したデータをもとに、文章で答えたりデータをまとめたりしてくれる便利なツールです。
無料でも利用できますが、有料プランならさらに豊富な機能が使えます。
ChatGPTを使ってできることには、次のようなものがあります。
- 文章の作成、要約、添削
- 翻訳
- 情報収集
- アイデア出し
- プログラミングコードの生成 など
今回の事例のように「膨大な記録データから要点を抽出して文章にまとめる」という作業は、まさにChatGPTが得意とする作業の1つと言えます。
ChatGPT連携用アプリと出力用アプリを構築
ここからは、実際に株式会社ワンセルフさまが行ったアプリ構築の流れを解説します。
株式会社ワンセルフさまのkintone×ChatGPT連携アプリ構築手順
- 活動記録や面談記録のkintoneアプリを用意する
- ChatGPT連携設定用アプリを作成し、API連携を行う
- ChatGPTが要約したデータの出力用アプリを作成する
まずは要約の元となる活動記録や面談記録のkintoneアプリが必要になりますが、株式会社ワンセルフさまの場合は既にこれらのアプリを使っているため、ステップ2から取り組みました。
ステップ2では、kintoneの中でChatGPTを使えるように、以下のようなChatGPT連携設定用アプリを作成してAPI連携を行いました。
API連携とは、システム間でデータや機能を連携して、利用できる機能を拡張することです。
このアプリでは、設定名、データを参照するアプリ、出力するアプリなどを設定します。
記録アプリ上の全てのデータを投入すると多すぎるため、「よかったこと」「悪かったこと」「食事」など、資料作成に関係するフィールドだけを絞って設定しています。
最後のステップ3では、ChatGPTが要約したデータの出力用アプリを作成しました。
このアプリでは、実行ボタンを押すだけで記録の要約を出力し、アプリに保存できるようになっています。
出力用アプリでは、所見とその根拠が文章でまとめられています。
例えば「この半年間で成長したこと」という項目では、「コミュニケーションが増えた」という所見が出力されています。
これは、活動記録のうち12月20日の「疑問や気になったことを自ら質問できた」や12月17日の「自分で予定を書けない理由を話せた」といった記述が根拠になっていることが分かります。
このように、要約の結果だけでなく具体的な根拠も示すことで、担当者は情報の取捨選択がしやすくなり、面談でもエピソードを話しやすくなりました。
kintoneとChatGPTを連携させるメリットとは
株式会社ワンセルフさまでは、kintoneとChatGPTを連携させたことで資料作成の作業時間を大幅に短縮できました。
エクセルや紙を使ったアナログな運用をしていた頃は、活動記録を半年分印刷してマーカーでチェックし、スタッフにも聞き取りをしながら作成していたため、利用者様1人あたりに1時間程度かかっていました。
その後、kintoneを導入して自分たちでChatGPTを活用してからは、一人当たりの作業時間が15分程度にまで短縮していましたが、ChatGPTに資料を作ってもらうためには活動記録をCSV出力してデータを加工し、ChatGPTに投入するという手間が必要でした。
パソコンに慣れている人であれば簡単にできる操作かもしれませんが、パソコンが苦手な人には扱い辛く、利用できない人が生まれてしまいます。
今回、kintoneとChatGPTを連携して自動化したことで、「kintoneからデータを書き出して加工してChatGPTに読み込ませる」という作業はいらなくなり、作業時間も3分程度にまで短縮されました。
kintoneアプリでボタンを押すだけになったので、パソコンが苦手な人でも簡単に実行でき、社内のIT化を加速させることができています。
また、要約された文章には根拠となるデータも示されているため、「機械が勝手に作り上げた文章」という印象がなく、AIへの抵抗感が和らいだこともポイントです。
これにより、スタッフによる気付きや判断は大切にしつつも、客観的な情報に基づいた面談ができるようになりました。
ChatGPTによる回答が想定通りの内容となっているかどうかについては、人の目による最終的な判断や調整が必要ですが、株式会社ワンセルフさまの場合は、もともとAIに全てを任せるつもりはなかったのでこの点は問題ありませんでした。
強いてデメリットを挙げるとすれば、ChatGPT自体は定額制ですがAPI連携は従量課金制になるという点があります。
株式会社ワンセルフさまの場合は、利用者さま全員分の資料作成が対象となるため、APIのコストもそれなりにかかりますが、削減できた手間や時間を考えると、メリットの方が大きいとのことです。
kintone × ChatGPTでスタッフが介護に集中できる環境を実現しよう
株式会社ワンセルフさまは、kintoneとChatGPTの連携によって資料作成の効率化を実現されました。
面談資料以外にも利用者さまの情報を元に作成する帳票はたくさんあるため、今回の仕組みを応用してChatGPTの活用範囲を広げていきたいとのことです。
介護福祉事業は、人と人との関わりが重要な仕事です。
今後もAIで全自動化を目指すのではなく、効率化して浮いた時間で本来の介護業務に専念できる環境を整えたいとのことでした。
コムデックでは、お客さまのご要望をお聞きしてその場でkintoneアプリを構築する「対面開発」を行っております。
対面開発なら、今回のように「途中まで自分たちでやってみたけれど、つまづいてしまった」というケースにも対応できるのがメリットです。
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