従業員が早退・遅刻した場合の給料は?給与の控除額の計算方法と注意点
従業員の早退・遅刻が発生したときには、給与からその分を控除する必要があります。
しかし、早退や遅刻の控除には法的な定めがないため、どのように給与計算に反映させたらいいか迷ってしまう担当者の方もいらっしゃるでしょう。
就業規則で計算方法の定めがあることが大前提となりますが、今回の記事では早退・遅刻控除の計算方法と注意点を解説します。
正しい給与計算で、従業員との不要なトラブルを防ぎましょう。
この記事でわかること
- 従業員の早退・遅刻控除の考え方と計算方法
- 早退・遅刻控除をするときの注意点
こんな人におすすめの記事です
- 従業員の早退・遅刻控除について知りたい方
- 早退・遅刻控除の計算方法と注意点を理解したい方
目次
早退・遅刻控除の考え方
早退や遅刻の控除は、基本的に「ノーワーク・ノーペイ(働いていない分の給与は支払わない)」に基づいて考えます。
ノーワーク・ノーペイは、労働契約法第6条や民法第624条に基づく、根拠ある考え方です。
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
※労働契約法のあらましより引用
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/leaf.pdf
民法624条1項によれば、労働者は、労務の供給が終わった後でなければ賃金(報酬)を請求することができない。このように、賃金請求権(具体的請求権としての支分権)は、労働義務が現実に履行された場合にはじめて発生するのが原則である。
※賃金請求権についてより引用
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000491237.pdf
会社には、従業員の労働に対して給与を支払う義務がありますが、労働が提供されていない時間に関しては支払いの義務はありません。
ノーワーク・ノーペイの原則は正社員だけでなく、パートやアルバイトなど全ての従業員に対して適用できます。
ただし、会社側に問題があった場合に生じる欠勤や早退は控除できません。
ノーワーク・ノーペイは、あくまでも従業員側の都合で生じた欠勤・早退・遅刻に対して適用される原則です。
早退控除・遅刻控除の計算方法には法律による定めがないため、事前に計算方法を就業規則等に明記し、従業員への周知を徹底しておく必要があります。
欠勤・早退・遅刻の取り扱いの違い
欠勤・早退・遅刻の取り扱いに、大きな違いはありません。どれもノーワーク・ノーペイの原則に従って給与計算を行います。
先ほどもお伝えした通り、欠勤・早退・遅刻の基準や計算方法には法的な定めがない分、以下のような事項を就業規則を定めておくことが大切です。
就業規則に記載しておくべき欠勤・早退・遅刻の定めの例
- 欠勤・早退・遅刻の申告方法はどうするのか
- 当日に突発的な欠勤・早退・遅刻が発生したときの取り扱いについて
- 早退・遅刻が発生したときはどのような計算方法を用いるのか
- 早退・遅刻が発生したときの計算にどの手当を含めるのか
- 遅刻扱いとならないケースがあるかどうか(例:電車の遅延 遅刻扱いとしないための条件を含む)
就業規則に定められた以上の規定を踏まえたうえで、実際に控除額を計算するときは従業員が不利益を被らないような計算方式を用いる必要があります。
早退・遅刻控除の計算方法
早退・遅刻控除は、月給額を1か月の労働時間で割った上で計算します。
月給与額 ÷ 所定労働時間数 × 早退・遅刻時間数=早退・遅刻控除額 |
例:月給与額が20万円で、月5時間の遅刻・早退があった場合
200,000円 ÷ 168時間(1日8時間×21日) × 5時間=5,952円(端数切り捨て)
この時、計算の元となる月給与額に各種手当を含めるかどうかは各社様々です。
全ての手当を含めて計算するという会社もあれば、営業手当等業務に関わりのある手当は含み、住宅手当や家族手当は含まないとする会社もあります。
ただし、毎各種手当は従業員の生活の負担を軽減する福利厚生的な役割を担っているため、基本的に欠勤や遅刻、早退があっても控除の対象には含まないのが望ましいとされています。
欠勤と早退・遅刻控除の詳しい計算方法については、以下の記事で解説しています。
具体例を挙げて解説しているので、参考にしてみてください。
▼正社員が欠勤したときの計算方法は?欠勤控除の考え方と注意点
早退・遅刻控除を計算するときの注意点
早退・遅刻控除を計算するときは、以下の5点に注意しましょう。
- 就業規則への明記と周知
- 控除額は1分単位で計算
- 早退・遅刻分以上の控除禁止
- 控除できない給与形態あり
- 残業と相殺できない
各注意点について、詳しくご紹介していきます。
早退・遅刻控除の方法を就業規則に明記・周知する
早退や遅刻控除を計算するときのまず最初の注意点は、控除の方法を就業規則に明記し、従業員へ周知しておくことです。
就業規則などに記載されていないと、「勝手に控除された」といったトラブルを招く可能性があります。
早退・遅刻の控除方法には法的なルールがないからこそ、配慮が大切です。
もちろん、就業規則に変更があるときは、変更点や給与への影響等を周知する必要があります。
控除額は1分単位で計算する
早退・遅刻の控除額は、必ず1分単位で計算します。
例えば、3分の遅刻に対して15分単位で計算する(切り上げる)のは労働基準法・民法違反です。
早退・遅刻分以上を控除してはいけない
控除額を計算するときに発生した1円未満の端数は切り捨てます。
切り上げは「実際の早退や遅刻の時間分以上を給与から差し引く」こととなり、逆に労働分が満額支払われないことになります。
控除額の切り上げは従業員の不利益となるため、早退・遅刻に限らず、端数は切り捨てましょう。
給与計算の端数処理に関しては以下記事で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
▼給与計算の端数処理の方法と注意点!端数処理が認められる3つのケースとは?
給与形態によっては控除できない
早退や遅刻が発生しても、給与形態によっては控除できないケースがあります。
控除額を計算するときは、従業員ごとの給与形態を確認して正しい計算方法を用いましょう。
月給制
例えば「(完全)月給制」は、月の給与額があらかじめ定められており、遅刻・早退・欠勤があっても減額されない給与形態となります。
そのため、早退・遅刻があっても原則として控除・減給できません。
ただし、正社員の場合は「月給制」と言いながらも実態的には「日給月給制」や「月給日給制」の場合がほとんどです。
そのため、後者2つの形態の場合は以下のように控除できます。
- 日給月給制:遅刻・早退・欠勤があった場合に、その分の基本給・手当を月の給与額から減額する
- 月給日給制:遅刻・早退・欠勤があった場合に、その分の基本給のみを月の給与額から減額する
月給制と日給月給制の給与形態の違いについては下記の記事で詳しく解説しています!
▼給与計算で押さえておくべき基礎知識3つ|初心者向けにわかりやすく解説
年俸制
就業規則に控除方法を明記している場合は控除が可能です。
多くの場合、年俸額を年間所定労働時間で割った上で計算します。
1時間分の控除額=年俸÷(1日の所定労働時間×(365日-年間休日日数)) |
例:年俸600万円で年間休日120日の場合
6,000,000円(年俸) ÷ 1,960時間(1日8時間×245日)=3,061円(1時間分の控除額)
歩合給制
基本給をもとに早退・遅刻分のみを控除します。
歩合部分は控除できません。
フレックスタイム制
基本的に、総労働時間を満たしていれば、欠勤・早退・遅刻控除はできません。
コアタイムがある場合も同様で、コアタイムに遅刻や早退をしても、総労働時間を超えている場合は控除できません。
ただし、総労働時間を満たしていない場合は当然、その分の控除が可能となります。
(不足分は翌月の労働時間で清算としている場合はこの限りではありません)
また、労働日の変更は認められないため、労働日に出勤していない場合は欠勤扱いとなります。
残業との相殺はできない
原則として、従業員との合意がない場合は早退・遅刻と残業との相殺はできません。
ただし、就業規則への明記・従業員との合意がある、かつ以下の条件を満たす場合は相殺できるケースがあります。
- 遅刻と残業が同日内で、労働時間が8時間を超えないケース ※早退・遅刻分を翌日以降に相殺するのは違法
- 変形労働時間制を採用しており、変形労働時間の枠内で相殺するケース
また、従業員との合意の上相殺する場合でも、1日の労働時間が8時間を超える場合は、割増賃金を支払う義務があるため注意しましょう。
割増賃金の一例
- 時間外労働:25%以上
- 深夜労働:25%以上
- 休日労働:35%以上
懲戒処分を想定した場合の制裁規定について
従業員の勤怠状況が悪い(遅刻・早退を繰り返すなど)場合は、懲戒処分を想定したペナルティを課すことができます。
ペナルティは、ノーワーク・ノーペイの原則とは別に減給が可能です。
ただし、ペナルティの制裁規定には注意点があります。
- 就業規則に明記・周知しておくこと
- 制裁規定には上限があること
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
※労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)より引用
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049
ペナルティとして減給できるのは、「1回の額が1日の平均賃金の半額以下」「減給額が賃金総額の10%以下」です。
例:1日の平均賃金10,000円 / 賃金の総額200,000円場合
1回のペナルティで減給できるのは5,000円以下
1回5,000円を減給する場合は、月4回を超えて減給できない(賃金総額の10分の1を超えるため)
この例のように、ペナルティによる減給には上限があります。
就業規則に定める場合は、事前に「制裁規定の上限(労働基準法第91条)」を確認しておきましょう。
クラウド型給与計算システムで早退控除の計算を効率化しよう!
早退や遅刻の扱いについては、あらかじめ就業規則で定めておく必要があります。
自社で定めたルールに従い、早退・遅刻などで発生する控除を正しく計算しましょう。
一方、早退・遅刻控除の手計算には、ミスが発生する可能性・手間や時間がかかるといった懸念点があります。
そこでおすすめなのが、給与計算に関わる多くの処理を自動化できるクラウド型給与計算システムです。
中でも、コムデックは「マネーフォワードクラウド給与」をおすすめしています。
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