給与計算の端数処理の方法と注意点!端数処理が認められる3つのケースとは?
給与計算を行う中で、お金や時間の端数が生じることがあります。
給与計算を担当される方の中には、端数を切り捨てるべきなのか、切り上げても良いのか頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
会社には労働に対する対価を支払う義務があるため、基本的に賃金の端数切り捨て処理は認められません。
ただし、労働者の不利にならないケースなどでは例外的に端数処理を行うことが認められています。
この記事では、端数処理を行う際の原則を説明したうえで、例外的に端数処理が認められる3つのケースを解説します。
この記事を最後までご覧いただければ、今後、端数処理の方法に頭を悩ませることはなくなるでしょう。
この記事でわかること
- 給与計算における端数処理の原則
- 例外的に端数処理が認められるケース
- 端数処理の具体的な計算方法
こんな人に向いている記事です
- 給与計算の端数処理方法を知りたい方
- ミスなく効率的に給与計算を行いたい方
目次
給与計算における端数処理の方法
企業は労働時間を1分単位で記録する義務があります。
そのため、給与計算を行う際には、1円未満のお金や、30分を下回る時間の端数が生じることが多いです。
端数処理で悩まないために、まずは端数処理の原則を押さえておきましょう。
端数は原則として切り捨てできない
端数の切り捨て処理は、原則として認められません。
労働基準法24条では、賃金は全額を支払わなければならないと定められており、1円を下回る労働についても全額を支払うのが原則となるからです。
端数の切り上げについては、労働者にとって有利となるため問題なく認められます。
ただし、遅刻・早退・欠勤などを理由に給与を控除する場合については、端数の切り上げは労働者に不利となるため認められません。
つまり、給与計算における端数処理を簡潔にまとめると、以下のようになります。
- 賃金は切り上げ
- 控除は切り捨て
「労働者が不利にならないように処理する」と覚えておけば間違えることはないでしょう。
給与計算の端数処理が認められる3つのケース
給与の端数処理ができないのは、労働者を不利に扱ってはならないという理由からです。
そのため、労働者の不利にならず、事務処理を簡便にするものであれば端数処理を行うことが可能です。
ここでは、端数処理が認められる3つのケースを紹介します。
割増賃金の端数処理
割増賃金の計算では、50銭未満となる端数は切り捨て、それ以上は切り上げるという処理は違法とはなりません。
事務処理を簡便にするもので、切り上げる場合もあるため、労働者に常に不利となるものではないからです。
割増賃金の計算は、以下の2つの方法があります。
- 1時間当たりの割増賃金額を算出し、端数を処理したうえで1か月分の割増賃金の総額を計算する
- 1か月分の割増賃金の総額の端数処理を行う
時給換算で1,850円の従業員が月に9時間の時間外労働を行ったケースでは、1か月分の割増賃金は次のように計算されます。
例:1時間当たりの割増賃金額を算出し、端数を処理したうえで1か月分の割増賃金の総額を計算する方法
1,850円 × 1.25 =2,312.5円= 2,313円(端数切り上げ) 1か月分の割増賃金 = 2,313円 × 9時間 = 20,817円 |
例:1か月分の割増賃金の総額の端数処理を行う方法
1か月分の割増賃金 = 1,850円 × 1.25 × 9時間 =20,812.5円=20,813円(端数切り上げ) |
給与計算ソフトを利用している場合には、各ソフトで採用している計算式がありますので、それに従う形となります。
1か月分の賃金の端数処理
1か月分の賃金に端数が発生した場合、以下のどちらかの方法での端数処理が認められます。
- 50円未満は切り捨て、50円以上100円未満は切り上げ処理を行う
- 1,000円未満を来月に繰り越す
給与が細かい金額となると、現金の場合の支払処理・事務処理が大変になるため、事務処理を簡便にする方法としていずれかの方法を選択することが可能です。
例えば、1か月分の賃金が305,706円の場合、支給額としては次の3パターンを選択できます。
- 端数処理を行わず、305,706円を支給する
- 50円未満を切り捨てて、305,700円を支給する
- 1,000円未満の706円を来月に繰り越して、305,000円を支給する
端数処理の方法については、従業員が給与を予測できるようあらかじめ就業規則に規定しておく必要があります。月や従業員によってルールを変更することは認められません。
1か月分の労働時間の端数処理
1か月分の労働時間については、30分未満を切り捨て、30分以上60分未満を切り上げるという端数の処理方法が認められています。
労働時間の端数処理は、時間外労働、休日労働、深夜労働などにつき個別に行うことができます。
例えば、以下のようなケースがあったとします。
- 1か月の時間外労働が5時間23分
- 1か月の休日労働が7時間34分
- 1か月の深夜労働が9時間40分
この場合に個別の端数処理を行うと、以下のようになります。
- 1か月の時間外労働は5時間
- 1か月の休日労働は8時間
- 1か月の深夜労働は10時間
労働時間について端数を処理することが認められるのは、1か月分の労働時間の合計についてのみとなります。
1日の残業時間が2時間10分であった場合、これを端数処理して2時間とすることは認められていませんので注意しましょう。
労働時間の端数処理については、こちらの記事で詳しくご紹介しています!
▼時給を15分単位で計算する際の注意点・正しい勤怠の計算方法
給与計算の端数処理に関する注意点
給与計算の端数処理は、切り捨ては基本的に認められないという原則と、端数処理が認められる3つのケースを押さえておけば間違えることはありません。
ここでは、それ以外に押さえておくべき注意点を補足的に解説します。
減給する場合の注意点
遅刻・早退・欠勤などを理由に給与を控除する場合に切り上げは認められないとの説明をしましたが、実際にこれらを理由に減給するには、客観的な合理性や社会通念上の相当性が必要です。
遅刻・早退・欠勤による控除を行う場合には、それらの根拠である勤怠の記録がきちんとそろっていること、就業規則の記載や処分を行うことの合理性などを十分に確認するようにしましょう。
労働者の有利になる切り上げ処理は問題なし
給与の切り上げ処理は基本的に労働者の有利になるものなので問題はありません。
ただし、切り上げ処理は許されると機械的に覚えておくと、認められない処理をしてしまう可能性もあるため注意が必要です。
先に挙げた、控除額の切り上げ処理などは労働者に不利になるため認められません。
切り上げ処理を行う際には、それが労働者に有利なものであるかを確認するようにしましょう。
ルールは就業規則などで明確に
法律上認められる端数処理であっても、実際に端数処理を行う際には就業規則などで従業員にあらかじめ周知しておくことが必要です。
周知なく端数処理を行うことは、従業員の不満にもつながります。
給与計算の端数処理を正確かつ効率的に行う方法
ここまで給与の端数処理について解説してきましたが、すべて切り捨てれば良いわけではなく、場合によっては切り上げる必要があり、複雑な部分も多くなっています。
そんな給与計算をミスなく正確に行うためには、クラウド型給与計算ソフトの利用が効果的です。
クラウド型給与計算ソフトのおすすめは「マネーフォワードクラウド給与」です。
マネーフォワードクラウド給与では、自社のルールを設定しておけば、端数処理を含む月々の給与計算を自動化できます。
認められない端数処理を行ってしまったり、翌月に繰り越した端数処理を忘れてしまったりすることも防ぐことが可能な上、担当者が変わってもシステム側がルールを記憶しているため引継ぎが容易になります。
給与計算の正確性に不安のある場合や給与計算業務を効率化したい場合には、クラウド型給与計算ソフトの導入を検討してみてください。
「マネーフォワードクラウド給与」で給与計算の端数処理を正確に行う
給与計算のミスについてはこちら!
▼給与計算のミスが多い原因と対処法・ミスを防止するためにやるべきこと
クラウド型給与計算ソフトで給与の端数処理を効率的に行おう!
給与計算の端数処理については、労働者の不利になるような切り捨ては認められないという原則を押さえておけば基本的には対応できます。
そのうえで、どのような時に端数処理が認められるのかを理解するようにしましょう。
端数処理を正確かつ効率的に行うにはクラウド型給与計算ソフトの導入がおすすめです。
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