正社員が欠勤したときの計算方法は?欠勤控除の考え方と注意点
月給制の正社員が欠勤や遅刻・早退をした場合、給与計算において基本的には欠勤控除を行います。
しかし、欠勤控除には法令による規定がないため、給与計算を行う際に「どのような計算方法を用いるべきか?」と疑問を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回の記事では、正社員が欠勤したときの計算方法について、具体例を用いて解説します。欠勤控除について正しく理解して、ミスのないよう計算しましょう。
この記事でわかること
- 欠勤控除の考え方
- 正社員が欠勤・遅刻・早退したときの計算方法
- 正社員の欠勤控除における注意点
こんな人におすすめの記事です
- 正社員の欠勤控除の計算方法を知りたい方
- 欠勤控除が発生するケースを理解しておきたい方
- 欠勤控除を計算するときの注意点を理解したい方
目次
正社員の欠勤控除についての考え方
月給制の正社員の欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイ」に基づいて考えます。
この考え方は「労働していない時間分・日数分の給与は発生しない」というものです。
欠勤控除について法律による規定はありませんが、就業規則や給与規定に詳細を明記・周知しておく必要があります。
具体的な計算方法は以降のセクションで解説しますが、従業員が欠勤や早退をした時間分・日数分を給与から差し引く前に、まずは自社の就業規則で定めている欠勤控除の方法を確認しましょう。
なお、リフレッシュ休暇や慶弔休暇等、各種制度として会社側が欠勤に対する給与の支給を認めている場合には、控除は発生しません。
【具体例あり】欠勤控除の計算方法
給与計算において、正社員の欠勤控除を行う場合の計算方法は主に以下の3通りです。
- 月平均の所定労働日数を用いる
- 該当月の所定労働日数を用いる
- 該当月の暦日数を用いる
各計算方法について、具体例を交えて解説していきます。
月平均の所定労働日数を用いる
一般的な欠勤控除の計算式は、以下の手順で月平均の所定労働日数を用いる計算方法になります。
①年間所定労働日数÷12=月平均の所定労働日数 ②月給額 ÷ 年平均の月所定労働日数 × 欠勤日数 =欠勤控除額 |
例:月平均の所定労働日数が20日で、3日欠勤した場合
200,000円 ÷ 20日 × 3日=30,000円
この計算方法の特徴は、1日あたりの欠勤控除額が一定になる点です。月ごとで変動しないため計算しやすく、多くの企業で採用されています。
メリットは、計算方法がシンプルで、欠勤による月ごとの不平等が発生しないことです。
ただし、この計算方法の場合、例えば月平均の所定労働日数が20日で、その月の所定労働日数が21日の場合、1日出勤しても給与が支払われません。
欠勤日数が月平均の所定労働日数とイコールなため、先ほどの計算式に当てはめると欠勤控除額が月給額と同額になるからです。
こういったケースへの対策として、「一定の日数以上欠勤をした場合には、欠勤日数で給与計算を行うのではなく、出勤日数で計算を行う」のが望ましいでしょう。
出勤日数で計算を行う場合の計算式
月給額 ÷ 年平均の月所定労働日数 × 出勤日数=支払額 |
例:月平均の所定労働日数が20日で、12日欠勤した(8日出勤した)場合
200,000円 ÷ 20日 × 8日=80,000円
欠勤日数が多い場合には、後でご紹介する「最低賃金を下回らないようにする」点にも注意が必要です。
該当月の所定労働日数を用いる
平均の所定労働日数を用いるのではなく、その月の所定労働日数を用いる方法もあります。
月給額 ÷ 該当月の所定労働日数 × 欠勤日数=欠勤控除額 |
例:該当月の所定労働日数が22日で、3日欠勤した場合
200,000円 ÷ 22日×3日=27,272円(端数切り捨て)
この計算方法の特徴は、月によって欠勤控除額が変動する点です。
年末年始やGWなど長期休暇がある月は所定労働日数が少なくなるため、上記と同じ欠勤日数でも控除額が増えることになります。
該当月の暦日数を用いる
該当月の暦日数を用いて欠勤控除を計算する方法もあります。
暦日とは、「午前0時から午後12時までを一区切りとする一日」のことです。
つまり「該当月の暦日数」とは、「欠勤があった給与計算期間の実日数」を指します。
月給額 ÷ 月間の暦日数 × 欠勤日数=欠勤控除額 |
例:該当月の暦日数が30日で、3日欠勤した場合
200,000円 ÷ 30日 × 3日=20,000円
この計算方法の特徴は、暦日数の変動によって欠勤控除額も変わる点です(28日・29日・30日・31日)。
暦日数には休日分も含まれるため、従業員は控除額が少なくなりメリットと感じるでしょう。
一方、企業には「毎月異なる暦日数を当てはめる」という手間がかかります。
【補足】遅刻・早退は月給額を労働時間で割って計算
欠勤とは異なりますが、同じく給与から控除を行う項目ということで、遅刻と早退の控除についても解説します。
遅刻や早退に関しては、月給額を1ヶ月の労働時間で割った上で計算します。
月給額 ÷ 所定労働時間数 × 欠勤時間数=欠勤控除額 |
例:1日の所定労働時間が8時間で、月の所定労働日数が21日、月3時間の遅刻・早退があった場合
200,000円 ÷ 168時間(1日8時間×21日) × 3時間=3,571円
各種手当の欠勤控除について
各種手当の欠勤控除については、会社ごとに控除対象とする手当や採用する計算方式が異なります。
各種手当には大きく、営業手当や役職手当といった「労働にかかわる手当」と住宅手当や扶養手当といった「直接労働にかかわらない手当」がありますが、そもそも手当のあるなしが会社によって異なるため、各手当を控除の対象にすべきか否かを定める法律はありません。
まずは自社の就業規則や給与規定を確認し、欠勤時に手当をどのように処理するかを確認しましょう。
月給制の種類上の話をすると、給与形態が「日給月給制」の場合は各種手当を含めて計算する必要があります。
月給制の種類
日給月給制:月の給与額があらかじめ定められており、遅刻・早退・欠勤があった場合にはその分の基本給・手当を月の給与額から減額する給与形態 月給日給制:月の給与額があらかじめ定められており、遅刻・早退・欠勤があった場合にはその分の基本給のみを月の給与額から減額する給与形態 月給制: 月の給与額があらかじめ定められており、遅刻・早退・欠勤があっても減額されない給与形態 |
月給制と日給月給制の給与形態の違いについては下記の記事で詳しく解説しています!
▼給与計算で押さえておくべき基礎知識3つ|初心者向けにわかりやすく解説
ただし、毎月一定額を支払う各種手当については、出勤日数が少ないからといって不要になるものではなく、手当は従業員の生活の負担を軽減する福利厚生的な役割を担っているため、基本的に日割り支給ではなく全額支給が望ましいとされています。
正社員の欠勤控除を計算するときの注意点
正社員の欠勤控除を計算するときは以下の点に注意しましょう。
- 欠勤控除は就業規則に明記しておく
- 最低賃金を下回らないようにする
- 残業代(みなし残業)の取り扱い
- 税金の扱い
- 端数処理について
各注意点について、詳しく解説していきます。
欠勤控除について就業規則に明記しておく
欠勤控除については、就業規則や給与規定に明記しておく必要があります。
給与計算に関する決まりが就業規則にないと、従業員の欠勤控除が発生したとき「勝手に差し引かれていた」など不要なトラブルを招きかねません。
欠勤控除には法律による定めがないからこそ、従業員全員にわかる形でルールを決め、周知しておくことが大切です。
また「リフレッシュ休暇」「生理休暇」などの制度がある場合は、これらを明記しておくことで従業員が安心して働ける環境を整えることができます。
最低賃金を下回らないようにする
欠勤控除を行う際には、控除後の賃金が最低賃金を下回らないように気を付ける必要があります。
特に「所定労働日数の多い月に、数日だけ出勤して残りは欠勤した」ような場合には、以下の例のように実労働に対する最低賃金を下回る可能性があるため注意が必要です。
例:月平均の所定労働日数21日の会社で、1日の労働時間8時間、基本給200,000円の正社員の場合
その月の所定労働日数が23日あり、3日だけ出勤して20日は欠勤したとします。
控除額:(200,000円÷21日)×20日=190,460円
当月給与額:200,000円−190,460円=9,540円
算出された金額を、出勤した3日分(24時間)で割ると、以下の通り最低賃金額を下回ってしまいます。
時給換算:9,540円÷24時間(1日8時間×3日)=397.5円
こういったケースに対応するため、「月平均の所定労働日数で計算する方法」でご紹介した「一定の日数以上欠勤をした場合には、欠勤日数で給与計算を行うのではなく、出勤日数で計算を行う」ことをあらかじめ就業規則に定めておくことで、最低賃金を下回るリスクを回避することができます。
出勤日数で計算する場合
当月給与額:(200,000円÷21日)×3日=28,572円
賃金の日割り計算の具体的な方法についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています!
▼給与の日割り計算のやり方は?欠勤や手当はどうする?注意点についても徹底解説
残業代の取り扱い
従業員が該当月に欠勤していても、発生した残業代は通常通り支払う義務があります。
しかし、「みなし残業代(固定残業代)」を採用している場合には扱いが若干異なります。
みなし残業とは、毎月一定の残業があるものとみなして、あらかじめ給与に含めておく制度です。
もし実際の残業がその時間よりも少なかったとしても、給与に含まれるみなし残業代分は支払われる他、定めた時間数を超えた場合にはその分の残業代を支払う必要があります。
就業規則に定めることで、このみなし残業代を欠勤時に控除することは可能です。
しかし、みなし残業代を欠勤に合わせて控除する場合、「控除後のみなし残業代」は当然通常の「一定時間分」には満たない時間となります。
そのため、控除後のみなし残業代が一体何時間相当の残業代となるのかを算出し、その月の実際の残業時間と比較して改めてみなし残業分を超えているかいないかを判定する必要があります。
「控除後のみなし残業代相当分」を超えている場合には、超過分の支払いが必要となりますので注意しましょう。
このように、取扱いがややこしいためみなし残業代については控除の対象としない方法が一般的です。
税金の扱い
欠勤控除を行う場合、所得税等の計算を行う前に総支給額から欠勤額を控除します。
そのため、欠勤分だけ税金額は低くなります。
総支給額合計額 − 欠勤控除額=課税合計額 |
端数処理について
欠勤した時間より多くを控除するのは違反となりますので、月給制の正社員の欠勤控除において、基本的に端数は切り捨てます。
端数を切り上げすると、労働した分も控除してしまう可能性があるためです。
給与計算の端数処理についてはこちら!
▼給与計算の端数処理の方法と注意点!端数処理が認められる3つのケースとは?
欠勤控除の給与明細への記載方法
欠勤控除があった場合、給与明細では「勤怠科目」「支給科目」に記載します。
「控除科目」は社会保険料・雇用保険料・所得税に限られるため、こちらには記載できません。
欠勤日数・遅刻・早退回数は「勤怠科目」へ記載し、欠勤控除・遅刻・早退控除の金額は「支給科目」にマイナス値で記載しましょう。
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正社員の給与から欠勤・遅刻早退を差し引く場合は、会社の規定に従い、計算方法や控除対象の手当などを基に計算します。
しかし、手入力によるエクセルや従来の会計ソフトを使用すると、どうしてもミスが発生する可能性があります。
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