労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインとは?対応するための方法を解説
使用者は、労働者の労働時間を適切に管理しなければなりません。
厚生労働省では、使用者が労働時間を適切に管理するためにやるべきことを明らかにするものとして「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定しています。
この記事では、同ガイドラインの具体的な内容や、ガイドラインに対応するための方法について解説します。
ガイドラインの内容を正確に理解し、労働時間を適切に管理するのにお役立てください。
この記事でわかること
- 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」の内容
- 労働時間とは何か
- ガイドラインに対応した勤怠管理の方法
こんな人に向いている記事です
- ガイドラインの具体的な内容を知りたい方
- ガイドラインに対応した勤怠管理の方法を知りたい方
目次
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインとは?
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(以下「ガイドライン」)は、労働基準法に違反する長時間労働や割増賃金の未払いなどの問題に対応すべく、平成29年1月20日に厚生労働省が策定したものです。
ガイドラインでは、使用者が労働者の労働時間を把握するために具体的に取り組むべきことが示されています。
使用者は、ガイドラインに従って労働者の適切な管理に努めなければなりません。
ガイドラインの趣旨
ガイドラインが策定された目的は、労働者の労働時間を適正に把握するために、使用者がやるべきことを具体的に明示することです。
労働基準法では、使用者に労働時間を適切に管理すべき義務を課しているものの、その具体的内容については明確ではありません。
その結果として、日本の企業では、労働時間の把握が適切に行われず、労働基準法に違反する長時間労働や割増賃金の未払いが常態化していました。
ガイドラインは、この問題に対処すべく、適切な管理のために行うべきことを明確化しています。
ガイドラインの概要
ガイドラインに準じて使用者は何をしなくてはならないのか、簡単に箇条書きでまとめました。
労働時間を適正に把握するために、事業者が行うべき措置の内容は主に以下の5つです。
- 始業・終業時刻を確認して記録する
- 賃金台帳を調製する
- 労働時間の記録を保存する
- 労働時間が適正に把握されているかを管理する
- 労使協議組織を活用して問題解決に努める
これらの内容は、後ほど詳しく解説します!
ガイドラインの適用範囲
このガイドラインは、原則全ての事業者に適用されます(労働基準法の労働時間の規定が適用されない例外的な事業を除く)。
また、基本的には全ての労働者が労働時間の管理が必要な対象者となります。
管理監督者など、労働基準法の労働時間の規定が適用されない労働者及びみなし労働時間制が適用される労働者は適用対象外となりますが、いずれにしても健康維持のために労働時間の管理を行う義務はあるため注意が必要です。
管理監督者の勤怠管理についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
▼管理監督者の勤怠管理が義務化!管理職の勤怠管理方法と注意点を解説
厚生労働省が定義する労働時間とは?
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを言います。
具体的には、次の時間が労働時間に含まれます。
- 作業着への着替えなど業務に必要な準備のための時間や清掃など業務に関連した後始末の時間
- 使用者の指示があり次第すぐに業務を開始するために現場で待機している時間
- 参加が義務付けられている研修などの受講時間、使用者の指示による業務に必要な学習の時間
これ以外でも、労働者の行為を客観的に見たときに、使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間は全て労働時間となります。
労働時間の定義や計算方法については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
▼労働時間の正しい計算方法・残業代を計算する際の注意点
労働時間の把握のために使用者が講ずべき措置
ここでは、先ほどご紹介した5つの「労働時間を把握するために使用者が行うべき措置」の具体的な内容を解説します。
始業・終業時刻の確認及び記録
労働時間を把握するためには、当然のことながら、何時から業務を始めて、何時に終えたのかを記録する必要があります。
記録する方法としては、使用者が現認し、それを適正に記録するか、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など客観的な記録を基礎として適正に記録します。
使用者が全ての労働者の始業・終業時間を現認するのは現実的ではないため、客観的な記録が重要です。
自己申告制により始業・終業時間の確認及び記録を行わざるを得ない場合には、自己申告を行う労働者、その労働時間を管理する者それぞれにガイドラインの趣旨に沿った説明を行い、労働時間が適正に記録されるよう努めなければなりません。
賃金台帳の調製
まず「調製」という言葉自体あまり目にしたことがないかもしれません。
「調整じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ガイドラインにおいては「調製」という言葉が使われています。
調製とは、 決まりなどに合うように整えてつくることを指します。
賃金台帳には、労働者ごとに、労働日数、労働時間、休日労働時間、時間外労働時間、深夜労働時間など決められた項目を適正に記入しなくてはなりません。
これらの項目を記入していない場合や、故意に虚偽の内容を記入した場合、使用者には、30万円以下の罰金が科されます。
賃金台帳に記載すべき事項
- 賃金計算の基礎となる事項
- 賃金の額
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働、休日労働及び深夜労働の労働時間数
- 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
- 労使協定により賃金の一部を控除した場合はその額
労働時間の記録の保存
労働時間の記録には5年間の保存義務があります。
以前は保存期間は3年間とされていましたが、2020年4月1日の労働基準法改正に伴い、5年間に延長されました。
さらに、7年間の保存が必要となる場合もあります。
勤怠データの保存期間に関してはこちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
▼タイムカードを含む勤怠データの保管期間は基本は5年!違反した際の罰則は?
労働時間が適正に把握されているかを管理する
労働時間を管理する人事や労務の責任者は、事業所内で労働時間が適正に把握されているかを管理しなくてはなりません。
過重な長時間労働の実態がある、勤務形態などによって労働時間を適正に管理できない状態となっているなど、労働時間の管理上の問題を発見した場合には、その解消を図るために行動する必要があります。
例えば、長時間労働を避けるために月の途中であっても残業の状況を確認できるようにしたり、リモート出社の場合でも客観的な記録を取れるようにするなど、適正な労働時間を把握するための措置を行わなくてはなりません。
労使協議組織を活用して問題解決に努める
ガイドラインにおいては、使用者・労働者それぞれを構成員として「労働時間等設定改善委員会」を設置することを推進しています。
労働時間等設定改善委員会とは、労使双方が労働時間等に関する事項を話し合うための体制を整え、問題点の解消策を検討し、効果的に改善していくための組織です。
例えば、自己申告により労働時間の管理が行われている会社では、労働時間等設定改善委員会を活用し、自己申告制による労働時間把握の問題点や、それを解消するための方法を議論・検討するべきです。
労働時間の適正な把握には勤怠管理システムを
ガイドラインの要請に従って労働時間を適正に把握するには、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。
勤怠管理システムでは、クラウド上の客観的な記録で労働時間を管理することができます。
どこにいても打刻することができるため、自己申告による労働時間の管理が行われている会社であっても、ガイドラインに沿って客観的に管理することが可能です。
残業時間の上限を超えそうな従業員がいた場合はアラートで知らせてくれる機能もあるため、法令を遵守しつつ適正な勤怠管理を行うことができます。
勤怠管理システムにはさまざまな種類がありますが、コムデックではKING OF TIME(キングオブタイム)をおすすめしています。
KING OF TIMEは豊富な機能を備えているため業種や規模を問わず導入しやすく、勤怠管理システムでシェアNo.1の実績があり安心です。
KING OF TIME(キングオブタイム)の詳細に関しては、以下記事をご覧ください。
▼KING OF TIME(キングオブタイム)の評判は?料金や導入事例を解説
ガイドラインに対応した勤怠管理体制を整えよう
労働時間を適正に把握することは使用者の義務となっています。
ガイドラインで求められている内容は、当然遵守しなければなりません。
この記事を参考に、ガイドラインの内容を理解し、自社の勤怠管理がガイドラインに沿ったものとなっているかをチェックしてみましょう。
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