勤怠管理における法律・労働基準法改正の重要なポイント【2022年版】
働き方改革が進む近年、労働基準法がたびたび改正されていることはご存知でしょうか?
労働基準法は従業員の勤怠管理を行う上で非常に重要な法律であり、改正に伴って企業が管理すべき事項は増加しています。
法改正の中には大企業と中小企業で義務化のタイミングが異なるものもあり、自社が本当に漏れなく対応できているのか不安……という声を勤怠管理のご相談を受ける中でお伺いします。
そこでこの記事では、2022年に留意すべき法律・労働基準法改正のポイントについて、わかりやすく解説!
勤怠管理をする上で重要なポイントに絞って、勤怠担当者が対応すべき法律についてご紹介します。
「勤怠管理とは何なのか」「何を管理すべきなのか」についてはこちら!
▼勤怠管理とは?効率的な方法とクラウド勤怠管理システムの選び方
この記事でわかること
- 勤怠管理に関わる法律
- 労働基準法改正で勤怠管理において意識すべきポイント
- 労働基準法を遵守して勤怠管理を行う方法
こんな人におすすめの記事です
- 勤怠管理において労働基準法で意識すべきポイントを知りたい方
- 自社が労働基準法改正に対応した勤怠管理をできているか不安な方
目次
勤怠管理が法律で義務づけられている理由
労働基準法では勤怠管理が企業の義務として位置づけられており、労働時間や休憩時間をはじめとする勤怠項目について管理する必要があります。
では何故勤怠管理が法律で義務化されているのかというと、「過重労働の防止」と「労使トラブルの回避」の二つを理由として挙げることができます。
労働者の過重労働を防止するため
人手不足が慢性化している企業では、依然として長時間労働による労働者の健康障害が問題になっています。
残業や休日労働に対して、いくら適正な割増賃金を支払ったとしても、睡眠時間や私生活を犠牲にした働き方が健全だとは言えません。
法律で勤怠管理を義務づけることで、労働者の過重労働を防止し、心身の健康を守っているのです。
労使トラブルを避けるため
勤怠管理が適切に行われていない状態では、残業代や休日手当などが正しく計算できないため、賃金の未払い問題が発生しやすくなります。
また、勤怠管理を怠ると過重労働も深刻化しやすく、労働者の健康障害や退職者の増加、賠償問題、最悪の場合は過労自殺などにも発展しかねません。
こうした労使トラブルを回避し、いざというときに企業を守る意味でも、勤怠管理は重要だと言えます。
勤怠管理で注意すべき法律のポイント
勤怠管理の重要性は前述の通りですが、実際のところ「何を」「どのように」管理すれば良いのでしょうか。
労働基準法で定められている労働時間の定義や管理方法について解説します。
労働時間の定義
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれた時間を指し、拘束時間から休憩時間を除いた時間のことを言います。
労働時間には、所定労働時間はもちろんのこと、時間外労働や深夜労働、休日労働なども含まれており、出勤簿などで日々細かく記録する必要があります。
労働時間の管理方法
出勤簿やタイムカードなどに記録した労働時間は、原則として起算日(最後に記録した日)から3年間(※)は保存しなければなりません。
※保存期間については、2020年の法改正で3年から5年に延長することが決まりましたが、現在は経過措置として3年が適用されています。
これは余談ですが、実際の勤怠管理の現場においては、定められた期間より長く保管していらっしゃる企業さまがほとんどです。
理由をお伺いすると「捨てるのはなんだか不安だから……」。
タイムカードや出勤簿も、年数が重なればその分保管コストがかかります。
現状の保存期間は3年ですので、御社の書庫やキャビネットに眠っている3年以上前のタイムカードは是非一度整理してみましょう。
勤怠管理で意識すべき法律・労働基準法改正の3つのポイント
最近の労働基準法の改正の中で、勤怠管理に影響するものは次の3つです。
- 時間外労働の上限規制
- 年次有給休暇の年5日の取得義務化
- 労働時間の客観的な把握の義務化
それぞれ、どのような影響があるのか詳しく解説していきます。
時間外労働の上限規制
労働基準法では、原則1週間につき40時間、1日につき8時間を超えて労働してはならないとされています。
この範囲を超えて労働させる場合には、労使協定(36協定)の締結・届出が必要になるのですが、2019年(中小企業は2020年)の法改正により特別条項を設けた場合の条件が変わりました。
特別条項には、「臨時的な特別の事情がある場合、年6ヶ月に限り原則の月45時間を超えて時間外労働をさせられる」という効果があります。
法改正前は、この45時間を超える部分に制限がありませんでしたが、改正後は以下の3つの上限が設けられました。
- 複数月平均80時間以内
- 月100時間未満(休日労働含む)
- 年720時間以内
つまりどういうことかと言うと、特別条項を結ばない36協定の場合には月45時間(年間360時間 ※ただし法定休日労働を含まない)が残業の上限となり、特別条項を結べば年6回(6か月)までは45時間を超過することが可能となります。
ただしこの法改正により、「45時間は超えてもいいけれど、2か月~6ヶ月の複数月を平均して80時間を超えない事、休日出勤を入れて100時間を超えない事、年間720時間を超えない事」という3つの規制が新たに追加されたということです。
月の残業上限 | 年間の残業上限 | |
原則 | 1日8時間を超える労働はしてはならない | |
36協定 | 45時間 ※法定休日労働を含まない |
360時間 ※法定休日労働を含まない |
特別条項付36協定 | ・45時間を6ヶ月まで超えても良い ・ただし1か月100時間または2~6か月の平均が80時間を超えてはならない ※法定休日労働を含む |
720時間 ※法定休日労働を含まない |
この「複数月平均80時間以内」というのが少しわかりにくいですが、「2か月で平均しても3か月で平均しても、4か月で平均しても5か月で平均しても6ヶ月で平均しても80時間を超えてはならない」という意味です。
よく「2か月平均か6か月平均で80時間を超えなければ良い」と勘違いされているケースが見受けられますので注意しましょう。
年次有給休暇の年5日の取得義務化
年次有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、パートタイマーやアルバイトにも適用されるものです。
雇い入れの日から6ヶ月以上継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上を出勤していたら、年次有給休暇を取得できます。
2019年4月の法改正により、年10日以上の有休を付与される労働者については、付与から1年以内に5日間取得することが義務化されました。
また、年次有給休暇の取得義務化に伴い「年次有給休暇管理簿」を労働者ごとに作成し、3年間記録を保管しなければならなくなった点にも注意が必要です。
取得義務化以前に、そもそもパートやアルバイトに対して有給休暇を付与できていなかった、という話も稀に伺います。
まずはきちんと付与ができているかどうか、次いで取得義務に対応できているかどうかを確認しましょう。
労働時間の客観的な把握の義務化
これまで労働時間の把握については、厚生労働省の「ガイドライン」という形で企業がとるべき措置が決められていました。
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
しかし、2019年4月に労働安全衛生法が改正されたことで、客観的な方法で労働時間を把握することが法的な義務となりました。
客観的な方法とは具体的に、タイムカードによる記録やパソコンの起動時間の記録など、自己申告ではない方法を指します。
労働時間を客観的な方法で把握することにより、長時間労働者に面接指導を実施するなど、健康障害の防止や早期治療をする目的があります。
2023年の法改正により割増賃金率が引き上げ
ここまで近年施行された法改正を見てきましたが、法改正は今後も予定されています。
その中でも重要なものの1つが、割増賃金率の引き上げです。
労働基準法37条では、時間外労働や休日労働をした際には割増賃金を支払うべきことが定められています。
月60時間を超える時間外労働に対しては、より高い割増率が定められているのですが、中小企業は猶予規定で一部が免除されていました。
この猶予期間がまもなく終わるため、2023年4月からは中小企業でも、月60時間を超える時間外労働に対する割増率は50%以上となります。
勤怠の区分 | 割増率 |
時間外労働 | 25%以上 |
深夜労働 | 25%以上 |
休日労働 | 35%以上 |
時間外労働かつ深夜労働(25%+25%) | 50%以上 |
休日労働かつ深夜労働(35%+25%) | 60%以上 |
月60時間を超える時間外労働(※) | 50%以上 |
月60時間を超える時間外労働かつ深夜労働(※) | 75%以上 |
(※)は2023年3月までは大企業のみに適用。
勤怠管理で法律に違反した際の罰則
前述した法改正には企業としてきちんと対応することが鉄則ですが、万一違反してしまった場合にはどのような罰則があるのでしょうか。
この記事で解説してきた項目について以下の表でまとめます。
条項 | 罰則 |
労働時間の記録と保存 | 30万円以下の罰金 |
時間外労働の上限規制 | 6ヶ月以下の懲役もしくは超過している労働者1人当たり 30万円以下の罰金 |
年次有給休暇の年5日取得 | 30万円以下の罰金 |
労働時間の客観的な把握 | 直接的な罰則はなし |
割増賃金率の引き上げ | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
実際のところ、1つの不備だけで罰則が適用されたという例はあまり聞きませんが、日頃の管理不足の積み重ねが労使トラブルや賠償問題を招きかねません。
勤怠管理がきちんと行われていないということは賃金が正しく支払われていない可能性も高く、昨今は賃金未払いの請求等も弁護士が積極的に行っているため、勤怠管理に関する法律は確実に守っておきたいところです。
法改正の対応には勤怠管理システムがおすすめ
ここまで見てきた通り、この数年だけでも管理すべき勤怠項目は増えました。
残業時間ひとつをとっても、36協定(特別条項)に関連して「月45時間超」の部分と、割増率50%に関連して「月60時間超」の部分を区別して管理しなければなりません。
これらを紙媒体やエクセルで管理するには、時間の面でも正確さの面でも限界があります。
そこでおすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。
勤怠管理システムとは?
勤怠管理システムとは、パソコンやタブレット、スマホなどを利用して勤怠を管理する方法です。
最近はテレワークの普及などもあいまって、インターネットがあればどこでも利用できる「クラウド型の勤怠管理システム」を導入する企業が増えています。
テレワークにおける勤怠管理の方法とポイントについてはこちら!
▼テレワークでの勤怠管理はどうする?3つの課題と解決方法を解説
勤怠管理システムのメリット
クラウド勤怠管理システムを利用することで、この記事でも解説したさまざまな課題が解決できます。
- 客観的な労働時間が、リアルタイムで把握できる
- 不正打刻や計算ミスが起こりにくいため、正確な時間管理ができる
- 法改正にも対応し、計算方法を簡単にアップデートできる
- 異常な勤怠や、過重労働などをすばやく察知するアラート機能がある
- 有給休暇等の管理をほぼ自動で行うことができ、5日取得義務の対象者についてもアラートで通知できる
- タイムカードや有休管理簿は必要な時にデータ出力できるため、紙で保管しておく必要がない
これらのメリットは、働き方が多様化すればするほど、また、従業員規模が多ければ多いほど、大きくなると言えます。
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勤怠管理システムを導入して適切な管理を行おう
勤怠管理や給与計算の担当者は、常にアンテナをはって法改正の情報をキャッチする必要があります。
しかし、法改正のたびに新しい管理表を作成したり集計項目を増やしたりすることは、あまり生産性が高いとは言えません。
データ管理や集計作業は勤怠管理システムの力を借りることで、一歩踏み込んだ働き方改革に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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