これからの時代に経営者が知っておくべき「経営の原理原則」とは?|IT活用戦略セミナー2023 眼から鱗合同会社 長島代表
2023年6月27日、伊勢神宮の目の前でコムデックが開催したIT活用戦略セミナー。
「令和のお伊勢参り」をコンセプトに掲げ、全国から集ったお客様が次の日からの活力を得て帰っていただけるようにと企画しました。
IT活用戦略セミナー全体については、こちらの記事でご紹介しています!
IT活用戦略セミナー2023 サイボウズ株式会社青野社長登壇!リスキリングで社内にデジタル活用人材を増やそう
今回の登壇者のおひとりである眼から鱗合同会社の長島代表は、コロナ前のIT活用戦略セミナーから継続して登壇してくださっているレギュラー講師。
前職は株式会社船井総合研究所のコンサルタントで、現在は経営者自身に寄り添いたいという想いから起業し、さまざまな業種の代表とのセッションや9社のマーケティング支援をされています。
そんな長島代表がセミナーで語ったのは「経営者が知っておくべき経営の原理原則」。
2023年の時流を軸に、これからの時代のために知っておくべきことをご紹介します。
目次
2023年以降の時流とは?
そもそも時流とはなんでしょう。
よく似た言葉に「流行」がありますが、時流とは5年から10年の大きな周期で変化するもの、流行はより短期的なものを指します。
時流とは、その時代の風潮や傾向、つまり「その時代の人の考え方や行動の傾向」のことです。
企業経営をおこなう上で、この時流を無視することはできないと語る長島代表。
時流には以下の3つの要素が大きく影響を与えます。
- 法律や規制の施行
- 環境の変化
- テクノロジーの進化
時流が変化する=人の思考や行動が変化する、ことを感じられるポイントはたくさんあります。
長島代表は、日々のニュースからFADS(時流の変化の予兆となるもの)を徹底的に拾ってこれからの時流を予想しているとのことですが、今回は既に皆さんもご存知の代表的な時流変化のポイントをいくつかご紹介していきます。
法律や規制の変化
時流に最も大きな影響を及ぼす要素として、最近のものだと働き方改革関連法案を挙げることができます。
2023年4月から月60時間超の時間外労働の割増賃金率が企業規模を問わず50%以上へと引き上げられました。
そして2024年4月にはトラック運転手の時間外労働上限が月80時間となります。
これを受けてコンビニやECサイトなどでは納期や納品頻度の変更を決める動きもあることはご存知でしょうか?
その一方で、道路交通法改正によりレベル4の自動運転(特定条件下での完全自動運転)が可能になったため、今後流通へのAI活用は加速していくでしょう。
また、育児・介護休業法改正により、常時雇用労働者が1000人超の企業は育児休業取得状況の公表が義務付けられました。
育児休業の取得を視野に入れている求職者は、より取得率の高い会社を選ぶことができるようになります。
環境の変化
2023年5月に、新型コロナが感染症法上の5類相当に引き下げられました。
新型コロナ流行に伴って人々の考えや行動は大きく変化し、以前の状態に完全に元に戻ることはありません。
在宅勤務が当たり前になった期間を経て、人々も企業も在宅と出勤のバランスを考えるフェーズに入っている一方で、企業側はアイデアの枯渇などを理由に、改めて一定の出勤を求める動きが見られます。
総務省が子育て世代への在宅勤務環境維持を提言するなど、在宅と出勤のバランスはあらゆる面から検討されていくことになるでしょう。
また、2022年に始まったロシアとウクライナの戦争により、地政学的リスクへの意識の高まりや原料材価格への影響によるインフレが発生していることは皆さんご存知のことと思います。
人件費の高騰はすでに始まっており、インフレはしばらく続くと考えられます。
少子高齢化による仕事の担い手不足も深刻化しています。
年間出生数は77万人となり、ベビーブーム世代の1/3~1/4まで減少しました。
例えば家を建てるときには不可欠な大工はここ20年で半減し、高齢化も進んでいます。
ハウスメーカーの積水ハウスでは大工の自社育成をはじめており、給与もこれまでの3倍にする等の施策を打ち立てていますが、上昇した賃金は当然販売価格に上乗せされていきます。
飲食チェーンの吉野家は人手不足によって好立地店舗でも時短営業や休業を余儀なくされており、ドコモや三菱UFJ銀行などでは店舗での手数料を値上げする動きも見られます。
つまり「人に何かをしてもらうことにお金がかかる時代」へと大きく変わってきているのです。
採用現場では売り手市場が続いており、新卒者の早い時期の内定率が高水準となっている他、転職サイトへの登録者数も急増しています。
これは、採用や入社にコストをかけても、人材がすぐに流出してしまうということです。
現在、企業が転職対策をおこなったり、インターンやバイトで関わりのあった学生の採用に力を入れたりしているものの、今後担い手は減少の一途を辿っています。
その他にも、デジタル広告にも新たな規制が入っています。
これまでユーザーの趣味嗜好に合わせたデジタル広告を打つために利用されていた「Cookie情報」を、ユーザーが許可しない限り使えなくなりました。
18歳以下の広告規制も強化されたため、これらによってマーケティング戦略が変化し、リアルな顧客情報を持っている企業がその情報を活用してサービスをおこなう動きが加速していくと考えられます。
今ご紹介した環境の変化はほんの一部であり、さまざまな方面に時流に作用する環境の変化が見られるのです。
テクノロジーの進化
生成AIの浸透が進み、特にChatGPTユーザーは提供開始2か月で1億人に到達しました。
ユーザー1億人到達はTikTokが9か月、LINEは19か月、Instagramが30か月だったことからも、その速さがずば抜けていることがわかります。
ただ、その一方でChatGPTの業務利用率は7%であり、半数は「知らない」と回答するなど、情報格差が生じているのが現状です。
とはいえ、今後AIの業務利用は増えるとともに、人はAIとの協働が求められていくことは想像に難くありません。
ロボットや受付アバターの普及も進んでおり、ファミリーレストランチェーンのガストは食事を提供する「猫ロボット」を1年半で3,000店に導入、コンビニのローソンもアバター接客サービスの実証実験を始めています。
担い手不足をデジタルで補う動きが加速する一方で、高齢者には対応が難しいようにも感じられ、社会の二極化が進む可能性がぬぐえません。
3Dプリンタは今では住宅を施工できるまでに進化しました。
それをドローンと組み合わせることで、これまでは難しかった環境や条件下での建設作業を実現させる動きもあり、減少の一途を辿る大工がいなくてもできる家づくりの実現も夢ではなくなってきました。
自動運転ロボットやドローンの進化は、配送業へも変化を生んでいます。
日本郵便は山間部でのレベル4のドローン配送実証実験をスタートするなど、さまざまな取り組みが進行中です。
変化を周期でとらえることも重要
ここまで、時流に影響を及ぼす「法律・規制」「環境」「テクノロジー」の変化に注目してきましたが、長島代表はもうひとつ重要な観点として「変化には周期があること」を挙げました。
2019年から2021年はコロナによる習慣の破壊期、2022年から2024年は戦争による破壊と再生の開花期であると長島代表は話されます。
働き方改革関連法案と新型コロナの流行が重なり、これまで続いてきた習慣が大きく破壊されました。
新型コロナが5類になるまで3年かかったことで、人々には新しい習慣が植え付けられています。
2022年からはそこに戦争が加わってさらに変化が生じました。
これまでにも破壊と再生は、30年程度の周期で繰り返され、その30年周期のスタート期が今である、ということはよく言われることです。
断続的な変化が起こるとお客様も不安定に
2019年から6年ほどかけて新しい時代へ移行していく中で、断続的に起こる変化によってお客様は不安定になりがちなため、消費傾向も大きく変わります。
不安が引き金となる消費傾向の変化は以下の5つです。
- 生活防衛型消費
→必要経費の上昇から可処分所得が減少することで不安を感じ、必需品以外への出費が減る - 言い訳型消費
→購入意欲がないわけではないため、その背中を押せる商品を提供できるかがキーになる - 一括払い長期利用型消費
→今はサブスク時代だが積みあがればそれなりの出費。払える時に一括払いというモードに切り替わる - 価値/価格重視型消費
→インフレや無料提供されていたサービスが有料化 - 予算先行型消費
→衝動買いが減り、予算を確保した上での出費や今の支出の置き換え予算が基本となる
そんな時代に商品・サービスを売るためには、必需品カテゴリーを狙ったり、提供価値をはっきりさせてそれを磨きこんだり、言い訳(購入時に背中を押せる)に配慮したマーケティングを考えたり、修理・修繕サービスに力を入れたり(人間的密着商法でファンづくりを徹底し、長く顧客を掴んでいく)といった取り組みが重要になっていくでしょう。
2023年以降のキーワードとは?
ここまでは、2023年までの時流の変化をご紹介してきました。
これを踏まえて、2023年以降企業はどうすれば生き残っていけるのか、よりお客様に貢献して売上を伸ばしていけるのかを検討するときに、キーワードとなるのは「経営の原理原則」と「本質的価値を見極めること」です。
原理原則経営
時代が荒れると最終的には原理原則に戻っていく、と語る長島代表。
原理原則とは、「ツキの原理を意識する」「天地自然の理で考える」「時流適応を徹底する」という3つのポイントを押さえていくこと。
ツキの原理を意識するとは、実際にツキがある(=明るい状態になっている)と事業にプラスの動きが増えるため、経営者自身や経営者の家族が明るい状態になっていることが大前提で、その上で組織が明るい状態を意識することです。
次に、天地自然の理で考えるとは、争う、対立する、分けるという考え方をなるべくせず、調和や一体化を経営するうえで意識することが大切であるということを指します。
最後に、時流適応を徹底するとは、これまでご紹介してきたような時代の変化を徹底的に意識することが大切だという考えです。
本質的価値の時代
変化の激しい時流の中では、「人々が何を求めているのか」を突き詰めて考えることが鍵になります。
テクニックに頼るマーケティング論などは一度忘れて、「自分たちはどんな価値でお客様を喜ばせているのか」にまっすぐ答えられることが大切になるという長島代表。
マーケットの中でその商品の価値は何なのかをシンプルに争っていく時代になり、わかりやすいものが喜ばれる時代になります。
そのような状況下ではファン=信者客を掴むことが重要になっていくため、お客様との関係性を見極めることが欠かせません。
時流適応力相応一番化法
長島代表が今の時代に経営者が知っておくべき経営の原理原則として挙げたのが「時流適応力相応一番化法」です。
「力相応一番化」とは、今持っている力で一番になれる商圏・顧客・商品を探すこと。
どこだったら自分たちは一番になれるのかを探し、把握して磨きこむことが重要になります。
今、力を持っている(=一番である)なら総合化する、力を持っていない(=一番ではない)なら絞り込むことで徹底的に一番を目指しましょう、という考え方です。
では、「一番」を探すために大切な視点とは何でしょうか。
長島代表は、「独自化、商圏、固定客化」の3つのポイントで探すと良いと話されました。
- 商品力で独自化できないか
まず、スペック・サービス・人・体験の4軸で独自化ができないかを徹底的に探ります。
ここが弱いと、マーケティングにコストをかけても成長は困難に。
大切なことは、自分たちの商品が見定まっているかということです。 - 一番になれる商圏は定められないか
どのセグメントでも小さくてもよいので、一番になれるところはないかを探します。 - 固定客化できる顧客層を見つけられないか
新規顧客獲得は欠かせませんが、日本のマーケットは縮小傾向であることもふまえ固定客を見つけることが重要です。
ツキを伸ばすワクワク伸展法
「一番伝えたかったこと」として長島代表が最後に語ったのがこの「ワクワク伸展法」です。
長島代表が企業の社長や代表などとお話する中で大切にしているのは、社長や代表がやりたいと真に思っていることを後押しすること。
やりたくないことをしょうがなくやっていると結局うまくいかなくなってしまうため、社内にいる得意な人に任せることも大切です。
「経営者が人生をかけて実現したいと信じていることこそが経営の原点」だと考える長島代表が掲げる「ワクワク伸展法」とは、とにかく経営者がワクワクすることを軸にして、それを会社の方向性と一致させることで社員・顧客・関係者を巻き込むこと。
経営者に限らず、誰にでも当てはまるワクワクの前提として「自分は簡単にできて周囲に感謝されること=長所」があり、これをどこまで生かせるかがキーになります。
時流を捉え、ワクワクとともに成長できる企業へ
時流をしっかり捉え、商品・サービスが一番になれるところを見つけること、そして、ワクワクすることで企業も人も伸びる、と語ってくださった長島代表。
自社の商品、サービス、自分の人生、ワクワクすることに取り組みながら、時流に乗って成長していきましょう!
長島代表に登壇いただいたIT活用戦略セミナーで、コムデックの生田社長がお伝えしたことはこちらの記事でご紹介していますので、是非ご覧ください。
生田社長が語った「中小企業に必要なIT活用2023」大公開!いい会社づくりのためにできることとは