設備点検をkintone化!QRコードで保全記録を登録|製造業 伊勢舗装工業株式会社さまのアプリ開発事例
製造業において、製造機器の設備点検は定期的に発生する業務です。
実施すべきタイミングで点検がおこなわれていないと製造効率が下がったり、電気代が高くなったり、最悪の場合には急にトラブルが発生して製造スケジュールに影響を及ぼす可能性もあります。
今回は、設備点検・保全業務を紙でおこなっていた製造業の企業さまが、設備管理をkintone化したことによりどのように変わったのか、効果とアプリ開発の工夫をご紹介します!
目次
在庫管理や備品購入申請をkintone化!次なる目標は設備点検
三重県度会郡玉城町の伊勢舗装工業株式会社さまは、アスファルト合材の製造販売をおこなっている製造業の企業さまです。
1972年の創業から、地域における交通網整備の担い手として活動されてきました。
近年は環境配慮型アスファルトプラント工場をリニューアルするなど、地球や環境に優しい事業展開が特徴で、三重県内で県内で圧倒的なシェアを誇っておられます。
そんな伊勢舗装工業株式会社さまでは、kintone(キントーン)を活用して在庫量をリアルタイムで見える化したり、備品購入申請をペーパーレス化したりと、業務の効率化に取り組んでこられました。
▼在庫量はスマホで確認!kintoneを活用した生産/在庫管理
▼kintoneの申請アプリで備品購入をクラウド化
kintoneやLINE WORKSを導入しながら社内の業務や環境を整えていく中で、「次はこれを!」と挙がったのは「製造設備の点検業務やその情報の管理」でした。
紙の設備点検表の問題点
伊勢舗装工業株式会社さまにあるさまざまな設備機器。
これまで、それらの設備点検の情報はすべて紙ベースで管理していました。
設備ごとのチェックポイントが記載された用紙(点検表)があり、設備ごとにファイリングされています。
同じように設備管理やその点検表を管理されている製造業の企業さまもまだまだ多いかと思いますが、紙の点検表には以下のような問題点があります。
紙の設備点検票の問題点
- 記録は残せるが、過去の記録を見たいときに探す手間がかかる
→ファイルのある場所へ移動し、ファイルを探して、該当の点検表を探す - 過去の記録を活かしづらい
→点検記録の検索性が低いため、前回の点検時の記録が生かせない
また、各機器の点検時期には明確な決まりが無く、過去の記録を確認してみたら本来推奨されている機器点検のタイミングを逃していた、ということもありました。
製造業において、設備の状態は品質や効率に大きく関わる部分であり、思わぬ設備機器のトラブルは製造スケジュールにも影響します。
特に、伊勢舗装工業株式会社さまの場合には点検を怠ると機械の効率が悪くなり、結果として稼働時間が長くなって電気代等の経費が上がってしまうという、コストに直結する課題がありました。
設備管理を属人的なものにしないこと、クオリティを統一すること、点検や保全の業務効率をあげること。
製造機器を多く保有する製造業の企業であればあるほど、この3点に気を配る必要があります。
伊勢舗装工業株式会社さまでは、設備点検表を紙からkintoneに切り替えることで設備点検に過去の記録を活用し、タイミングを逃さず効率よく点検ができる環境を実現したいと考えたのです。
まずは点検すべき機器管理をアプリ化
設備点検業務やその情報をkintone化するため、まずは点検に関する業務フローや社内にある対象となる機器を確認し、それぞれの点検項目などを紙で管理していた点検表をもとに、早速「点検機器管理アプリ」を作成しました。
1設備を1レコードとして登録することで、点検すべき設備がリストで表示されます。
各設備機器を選択して確認できる詳細画面では、区分・機器名・設備の写真などのほか、その設備の点検項目を登録することができます。
点検項目はテーブル形式になっているため、設備に合わせて好きなように項目を追加削除することが可能です。
さらにこのアプリに、デジタル化した各設備機器の資料や図面なども一緒に保存することにしました。
写真があれば点検すべき設備を間違えることも無く、点検時に「ちょっと図面も確認しながら…」となった際、スマホでkintoneアプリを開けばその場から離れずとも資料や図面を確認できるようになりました。
点検・保全の記録は別アプリに登録!チェック項目は自動反映
毎回おこなう機器の点検や保全の記録は、「点検機器管理アプリ」とは別に「点検管理アプリ」を作成し、そちらに登録する形としました。
このアプリと先に用意した「点検機器管理アプリ」のデータを紐づけることで、「点検機器管理アプリ」から過去の点検記録等も参照できるようになるのです。
「点検管理アプリ」を構築する際には、「ルックアップ内サブテーブルコピープラグイン」と「テーブルデータ一括表示プラグイン」、2つのプラグインを利用しています。
ルックアップ内サブテーブルコピープラグインで点検項目をコピー
ひとつめは「ルックアップ内サブテーブルコピープラグイン」です。
「点検管理アプリ」は「点検機器管理アプリ」からルックアップ機能で必要な機器名などを取得するのですが、kintoneの標準機能ではテーブル形式の値をルックアップ時にコピーしてくることができません。
ルックアップの際にテーブルのコピーが可能になる「ルックアップ内サブテーブルコピープラグイン」を利用し、「点検管理アプリ」に「点検機器管理アプリ」に登録した点検用のチェックポイントをコピーできるようにしています。
これにより、点検や保全をおこなう際に「点検機器管理アプリ」に登録されている点検機器名を取得すると、自動的に点検項目が一覧化されたチェックシートが表示される状態になりました。
点検をおこなった項目に直接チェックを入れたり、コメントを入力したりでき、紙で行っていた点検をスマホで実施することができます。
例えば、「ローラーが回っているか?異音はないか?」という点検をおこなったら、該当項目の確認「済」のチェックボックスにチェックを。
気になることやメモしたいことがあれば各項目についてコメントを記入したり、状態を撮影したファイルを添付したりできます。
テーブルデータ一括表示プラグインで一覧画面で状況把握
もうひとつ利用しているプラグインは、「テーブルデータ一括表示プラグイン」です。
kintoneの標準機能では、一覧画面でテーブル(点検項目)の内容を確認することはできません。
テーブルを追加した一覧を用意しても、「表示する」というボタンが出て、それを押してテーブルを表示させる、というフローに。
これでは手間がかかり、視認性にも欠けます。
そこで、「表示する」のボタンをテーブルの内容に置き換えられる「テーブルデータ一括表示プラグイン」を利用。
一覧画面からもそれぞれの機器の点検項目のテーブルが確認できる仕様にしました。
点検実施はQRコードをスマホで読み取るだけ!
「点検機器管理アプリ」と「点検管理アプリ」、ふたつのkintoneアプリを作成したことで、チェックリストがスマホ内で表示され、そのまま登録していけば点検表が完成する状態となりました。
過去の点検履歴はすぐ参照できるようになり、すべてスマホで完結できる機器の点検情報管理が実現したことで、ペーパーレス化に一歩近づきました。
しかし、現在の状態ではただアプリができただけなので、点検を実施する際には「点検管理アプリ」を開いて、点検する機器名を取得して……という処理が必要となります。
紙の点検表を印刷する必要はなくなりましたが、kintoneにログインするところから……となると実際の手間はそう変わりません。
手間のかかる作業は後回しになりがちなので、点検のタイミングを逃してしまう懸念は依然として残っています。
そこで、伊勢舗装工業株式会社さまでは、点検を実施し記録を残す手間を削減するために、QRコードを活用した点検記録登録を実装しました。
言ってしまえば「点検記録を新規登録するためのページを最初から開けるQRコードを点検機器付近に貼り付けておく」だけなのですが、この形であればスマホのカメラでQRを読み取ればすぐに点検記録を登録できるため、kintoneを開いてアプリを探して、新規登録ボタンを押して……という手順を省くことができます。
点検時にはスマホでQRコードを読み取ればその設備や機器名が入った点検記録新規登録ページがすぐに開きます。
あとは表示されている項目を点検し、記録していくだけ。
スマホで完結するだけではなく、点検しはじめるまでのハードルもかなり低くでき、製造業の現場における点検業務のコストを引き下げることが可能です。
このQRコードによる「新規レコード登録画面のダイレクトアクセス」は、プラグイン等が無くてもどのkintone環境でも実装可能です。
ただし、設定には少しコツが必要になりますので以下の手順を参考にしてみてください。
新規レコード登録QRコードの作成手順1:アクションボタンを設定
kintoneには、元アプリから任意のデータをコピーして別アプリにレコードを新規登録できる「アクションボタン」という機能があります。
まずは「点検機器管理アプリ」から、機器名が入った状態で「点検管理アプリ」にレコードを作成するアクションボタンを作成します。
アクションボタンの設定画面スクショ
新規レコード登録QRコードの作成手順2:新規登録画面のURLをコピー
アクションボタンを設定出来たら、アクションボタンを押して遷移するページ(機器名が入った状態の点検記録新規登録ページ)のURLをコピーします。
新規レコード登録QRコードの作成手順3:QRコードを作成
コピーしたURLを使ってQRコードを作成します。
kintoneでQRコードを生成することはできないため、WEB上でQRコードを作成してくれるサービス(https://qr.quel.jp/)等を利用してください。
作成したQRコードは「点検機器管理アプリ」に登録しておくと、貼り付けたQRコードが劣化してきたときに作り直す必要が無いので便利です
新規レコード登録QRコードの作成手順4:QRコードを設備付近に貼り付け
作成したQRコードは、点検や保全が必要な設備・機器本体に印刷して貼り付けておきましょう。
ラミネート加工か、クリアファイルに入れて貼り付けておくのがおすすめです。
新規レコード登録QRコードの作成手順5:2~4の手順を点検機器分繰り返す
アクションボタンで遷移して作成される新規レコード登録画面は、遷移元、つまり「点検機器管理アプリ」の登録レコードごとに異なります。
そのため、「点検機器管理アプリ」の登録機器別にURLを取得してQRコードを作成する手順を実施する必要があるのです。
設備点検管理のkintone化によるメリット
こうして、製造業の現場における設備機器の点検と情報管理のkintone化が完了しました。
アプリの操作に慣れるまでは、紙でささっとチェックを入れていく方が速い、という声もありましたが、アプリ内でできるだけ文字入力を減らせるようにアプリを改良していくことで対応。
各従業員さんが操作に慣れてしまえば、点検関連業務がスマホひとつで完結できるようになりました。
点検すべき設備や個別の点検項目が一元化されたことにより、誰が点検しても同じように実施できる、つまりはクオリティの統一を図ることができます。
また、「次はどの設備をいつ点検したほうがいいのか」についても、これまでは感覚的に実施していたものから生産や製造のスケジュールを見ながら計画性をもって対応できるようになりました。
加えて、これまでの紙の点検記録では難しかったその時の写真なども残すことができ、設備管理に必要な情報がデータとして蓄積していける環境になりました。
これまでなかなか活用できていなかった過去の点検記録の活用についても「点検記録を探す」という作業そのものが30分から5分に短縮されたことにより、活用しやすい状況が整いました。
スムーズに過去の点検記録を確認できることで、部品交換のタイミングや今回の点検でいつも以上に気にした方がよいところなどに適切に対応できるようになったのです。
kintone化できる業務や情報はまだまだ多くある!
製造業の設備点検に関する業務や情報管理をkintone化し、脱紙を実現できた伊勢舗装工業株式会社さま。
今後は設備管理だけではなく、社内のあらゆるマニュアルのkintone化を進めていかれるとのことでした!
設備点検がきちんと運用されることで、生産性を高めたり製造に関するトラブルを最小限に抑えたりといった効果が期待できます。
もし御社が設備管理を紙やエクセルで実施しているようであれば、ペーパーレスを目指してkintone化を検討してみてはいかがでしょうか?
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