工数・売上の自動集計で生産性を見える化|税理士法人アクセスさまのアプリ開発事例
税理士をはじめとした士業の多くは、お客様から毎月一定の顧問料をいただいて業務を請け負っています。
そのため、従業員がどの顧問先や案件にどれくらいの時間をかけていて、その顧問先からどれだけの売上を得ているのかを把握することは、生産性の観点からとても重要です。
例えば、従業員が一か月間にその顧問先にかけた時間でその顧問先の売上を割ることで時間当たりの単価を算出することができます。この時間単価が極端に低ければ収益が出ていないということになりますので、業務効率を上げて時間を短縮するか、お客様から頂く料金を上げるなどの施策を考える必要があります。
生産性を高めるためには業務状況等を適切に管理し、かつデータ収集・分析による改善が欠かせません。
そこで今回は、kintoneの活用によって工数や売上を自動集計し、従業員一人一人の生産性分析を可能にした税理士事務所のアプリ開発事例をご紹介します。
目次
kintone活用で月次進捗管理表を自動作成!次の目標は生産性の管理
大阪府大阪市を拠点として、法人財務や相続・事業継承、さらに飲食店向けのサポート事業などを展開されている税理士法人アクセスさま。
以前からkintone(キントーン)は導入していたもののなかなか活用できておらず、その状況を打破するためにコムデックへとご相談いただきました。
当時一番の課題となっていた「月次で請け負っている業務の進捗管理」について、kintoneの一覧をExcelのように操作できるkrewSheetというプラグインを活用することで一元化に成功。
対象となる顧問先も自動抽出してくれるため、抜け漏れなく月次進捗管理を実施できるようになりました。
月次進捗管理のkintone化については、こちらの記事で詳しくご紹介しています!
▼税理士業でkintone活用!月次の予定を自動作成し進捗管理を一元化
税理士法人アクセスさまが月次進捗管理の次に取り組みたいと考えたのは、従業員一人一人の生産性管理でした。
冒頭でお伝えした通り、士業においては「かけた時間と実際の売上で収益が出ているのか」をきちんと分析しなくてはなりません。
税理士法人アクセスさまの場合には、従業員1人あたりが1時間にどれだけの粗利益(=付加価値)を生み出すのかを表した「人時生産性」を指標として用いており、従業員一人当たりの月次の付加価値を100万円以上にしたいという具体的な目標がありました。
月100万円と聞くと大きな数字に思えますが、仮に1日8時間働く従業員が月に21日勤務したとしたら168時間になります。100万円を168時間で割ると、人時生産性(1時間あたりの付加価値)は約5,952円。
人時生産性の目安は5,000円と言われていますので、まずは目安を上回ることを目標として従業員の生産性を見える化したいと考えたのです。
人時生産性の考え方や算出方法、業種別の平均については、こちらの記事で詳しくご紹介しています!
▼人時生産性とは?計算式と改善するための3つのポイント
生産性=付加価値向上の前に立ちはだかる壁とは?
生産性の管理を行うにあたって、税理士法人アクセスさまには大きく3つの課題がありました。
1つ目は、月次でPDCAを回せていないこと。
例えば目標を達成できなかった月があった場合、翌月も特に改善が無いままの状態になりがちだったのです。これでは生産性向上は望めませんし、問題点があっても解決に向けたアクションがすぐに起こせません。
2つ目の課題は、月次でPDCAを回せていない結果、担当者それぞれの付加価値が上がらないこと。
各個人の生産性が不明な状態では適切な評価が行えないほか、給与も上がりません。適宜改善によるボトムアップも難しく、組織全体としても成長が鈍化してしまいます。
そして3つ目の課題は、毎月の生産性分析に関する資料をエクセルで作っていたものの、資料作成そのものに手間がかかっている状態だったことです。
「生産性を向上させるためのデータ管理」に時間がかかり生産性が低い状態となっては本末転倒になってしまいます。
資料作成を効率化させて工数を削減すれば、その分別の業務に使える時間が増えるため、結果的に生産性は向上します。
この3つの課題を解決するためには、各担当者が計画的に業務を行いPDCAを回せる仕組みを作ることと、生産性を測るための各数値は日報の時間や顧問料等から自動で算出できるようにする必要があると考えました。
工数・売上を自動集計!脱エクセルで従業員別・顧問先別の生産性を見える化
担当者が計画的に業務を行えるような仕組みと生産性の自動算出を実現するため、税理士法人アクセスさまでは「担当者」と「顧問先」という二つの軸で生産性を分析できるようにアプリを構築しました。
メインとなる担当者軸では、「担当者別生産性<月報>」アプリに該当月の売上予定額や日報の工数データを自動集約し、実績金額を入力できるようになっています。
どのような仕組みになっているのか、機能ごと細かく説明していきます。
売上予定額を自動算出
原価や諸費用等を差し引いたとき、どれだけの売上が会社に残るのかを自動計算するのが「貢献売上金額」です。
「貢献予定金額」については、顧客管理にあたるアプリに登録された情報(顧問料や決算月)をもとに自動で算出されるようになっています。
「貢献実績金額」は月次進捗管理アプリに登録された納品日を元に、業務が完了していれば自動で集計されてきます。
決算処理先を自動抽出
通常、決算業務の期日は60日ですが、税理士法人アクセスさまでは45日を目標として取り組んでいます。
決算対象の顧客は自動でピックアップされるため、45日で完了できるようあらかじめ計画を立て、各顧客に対する達成状況を記録していくという流れで運用できます。
日報から自動で工数集計、人時生産性を自動算出
従業員が計画を立ててPDCAを回していけるよう、その月に実施すべき業務(担当先の月次業務、決算業務など)は自動でピックアップして登録されるようになっています。
自動抽出された業務に対して、月初に従業員がそれぞれの目標時間を手入力します。そして、実績時間は月末に日報から自動で集計され、目標に対する超過率が自動計算される仕組みです。
実績時間は業務分類ごとに小計を見ることも可能なため、業務分類ごとに予定超過を把握し、どこを改善すべきかを検討することができます。
最初にご紹介した貢献実績金額を自動集計した実績時間で割ることで、その月の人時生産性を算出できるようになっています。
過去の履歴も自動で集約 推移をわかりやすく
関連レコード(月別履歴)によって、自動集約された情報から過去の数値がどのように推移しているを確認できます。
推移を見ることで以前に比べて改善しているのか、悪化しているのか、その要因は何なのかを検討することが可能です。
krewSheetXrossモードで管理しやすく
先ほどまでご紹介していたのは「従業員一人一人の特定の月の業務を集約したページ」でしたが、全従業員の月別の情報を一画面で表示することも可能です。
この表示には、月次進捗管理にも活用したkrewSheetのXrossモードを活用しています。
これによって、従業員ごとに月々どのように売上が変化しているのかを一目で把握できるほか、その内訳も同じ画面内で確認することができるようになりました。
ある一時点の情報だけではなく、過去からの変化がわかるデータは業務改善等に向けた従業員に対する個別の指示・教育にも役立つでしょう。
顧問先別の粗利・工数集計も自動化
同じくkrewSheetのXrossモードを活用して実装したのが、従業員別のアプリとは別に作成した顧問先別で生産性を集計できるアプリです。
元のデータは同じ日報ですが、日報のデータから人別と顧問先別でそれぞれのアプリ用にkrewDataで自動集計をしています。
基準値を下回っているところが赤字で目立つように表示されるため、早期に改善を検討することができます。
社内の業務改善で顧問先あたりの業務時間を下げることも必要ですが、恒常的に業務が多く、毎月目標値を下回るようなら顧問料の変更も検討しなければなりません。
関連シートで内訳も同一画面に表示できるので、業務ごとの細かな所要時間や予定との比較を容易におこなうことができます。
工数管理をkintone化するメリットとは?
工数管理にkintoneを用いることにより、自動でその月に実施すべきことがピックアップされるため、従業員それぞれが仕事を計画的に進める意識が向上しました。
これまでExcelで月報を作っていたときは、対象顧客のピックアップ等を手動で行っていたためかなりの時間がかかっていました。
kintone化によってkrewDataが自動でデータを集めてくれるため、工数削減につながっています。
また、kintoneでは担当者ごとや顧問先ごとの生産性が一目ですぐにわかるほか、その経過・内訳も一画面で確認することができます。
どの担当者がどれだけの付加価値を生み出せているのか、kintoneによって生産性が明確化されているため、自動集計された結果を元に個別に生産性向上に向けた改善を促したり、担当業務を調整したりすることが可能です。
まさに税理士法人アクセスさまの目標である「ひと月あたりの付加価値100万円以上」に向けて、生産性管理のための土台が構築されたと言えるでしょう。
工数管理をkintone化するメリット
- 自動でその月に実施すべき業務をピックアップし、月報を作成してくれる
- 実績は日報から自動集計し、人時生産性まで算出
- 従業員別、顧問先別の粗利額や労働時間、生産性を自動的に集約してくれる
- 過去からの推移を一画面で確認できる
- 基準値以下になっている先が一目でわかるため、改善検討を進めやすい
工数管理で付加価値を上げよう
kintoneを活用することで、売上や工数等のデータを自動算出できるようになり、生産性の見える化を実現した税理士法人アクセスさま。
従業員自身が自分がやるべき業務を把握し、計画を立てて業務を進められるようになっただけではなく、エクセルへの手入力の手間もなくなり業務効率や工数削減にもつながっています。
税理士法人アクセスさまでは、今後は月報アプリをもとに各従業員との面談を毎月実施していく方針です。
毎月の業務の進め方を振り返ってアップデートし、目的としていたさらなる貢献金額の増加を目指すフェーズへと進んでいく予定となっています。
税理士法人アクセスさまが導入したkintoneは、「税理士業務改善パッケージ」として税理士の業務に必要なアプリをパッケージ化したものもリリースされています。
kintoneを活用して税理士法人アクセスさまのように工数管理をおこない、生産性を見える化したい税理士の方は、是非ご検討ください!
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