kintoneを建築業で活用!年間建築棟数アップに繋げた顧客管理・案件管理アプリの作り方|建築業 株式会社中美建設さまのアプリ開発事例
どんな会社でも業務の軸となるのはお客様の情報や案件の情報。
お客様にとって一生に一度の買い物となりうる住宅を扱う建築業においては、お客様の情報管理の重要性はことさら高いと言えるでしょう。
今回は、kintoneを活用して複数のツールやエクセルに分かれていた情報を一元化し、全社で一貫した顧客管理・案件管理を実現した建築業の企業様の事例をご紹介します!
目次
複数のエクセルに分かれた顧客情報……一元化して業務を効率化したい
「感動の家創り」をコンセプトに掲げ、新築の注文住宅を中心に手がける三重県伊勢市の建築業 株式会社中美建設さま。
kintone(キントーン)を活用されるまで、社内で管理している情報は複数のツールやエクセルに分散していました。
建築の場合、案件のフェーズにより管理すべき情報が変わります。
必要な時に必要な情報だけを参照できるように複数のツールやエクセルに分けて管理をしていましたが、同じ情報を複数のツールに入力する必要があり手間がかかる、社内でしか最新情報を確認できないといった課題が生まれていました。
複数ツールに分かれていると、二重三重の情報入力が必要になるのはもちろん、お客様からお問い合わせがあった際等に「回答に必要な情報がどこにあるか」を探すのにも時間がかかります。
株式会社中美建設さまの場合には、各従業員の方が他部署の管理している情報にまで目を配ることでお問い合わせにも素早く対応できる状態を保っていましたが、案件数が多くなるにつれ「各自の努力」で補うには情報管理コストがかかりすぎる、そんな状態になっていました。
そこで、「各ツールに何度も同じ情報を入力しなくてはならない」「必要情報を探すためにいくつもツールを確認しなくてはならない」状態を脱し、情報管理コストを削減して株式会社中美建設さまの目指す「感動の家創り」に注力したいという思いを実現すべく、kintoneを導入した情報管理をスタート。
株式会社中美建設さまの抱えていた課題や、kintone導入によって社内に起きた変化について、詳しくはこちら!
▼データ入力作業を効率化してモチベーションを上げよう。kintoneによる働き方改革事例|建設業株式会社中美建設さまの事例-前編
▼データ入力作業を効率化してモチベーションを上げよう。kintoneによる働き方改革導入事例|建設業中美建設さまの事例-後編
株式会社中美建設さまの業務改善の要となったのは「顧客管理アプリ」と「案件管理アプリ」です。
複数ツール・エクセルに分散していた情報を一元化した、建築業に必要な顧客管理・案件管理の仕組みを解説していきます。
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全社で一貫して利用する「顧客管理」「案件管理」を作成!各アプリの情報管理区分は?
株式会社中美建設さまのkintone活用では、まず顧客管理アプリ、案件管理アプリを作成しました。
建築業では、家を建てて終わりではなく、アフターフォローも重要です。家を建てることはそこからの長いお付き合いの始まりとも言えるでしょう。
専任のアフターメンテナンススタッフがいたり、オーナーさまを集めたイベントを開催したりと長いおつきあいを大切にされている株式会社中美建設さまだからこそ、お客様のデータは営業部門・設計部門・工務部門・アフター部門等、社内の全ての部門が活用します。
そこで、これまでの複数ツールや複数のエクセル管理のように各部門で必要な顧客情報を管理するためのアプリを作成するのではなく、全社共通で使用、管理できる顧客管理を第一の軸としました。
お客様の情報が変更になったときには顧客管理のデータを一度更新すれば、各部署での更新は必要なく、ミスや漏れも起こりません。
顧客管理ともう一つ、株式会社中美建設さまで業務の軸として作成したのが案件管理アプリになります。
どの業種においても、顧客情報と案件情報は強くリンクします。
株式会社中美建設さまの場合には、受注確定前、案件発生の段階から案件管理に登録し、その後案件が完了するまで全社で情報を活用できるようにアプリを構築しました。
一人のお客様から一つの案件しか発生しない場合には、顧客管理と案件管理を分ける必要はないかもしれません。
しかし、建築業の場合には、同じお客様から新築から増築やリフォームなど複数の案件が発生することもあるため、「顧客管理アプリで管理すべき情報」と「案件管理アプリで管理すべき情報」の線引きはなかなか難しいものです。
株式会社中美建設さまの場合には、社内の業務フローを追いながら検討し、以下のように管理情報を割り振りました。
顧客管理アプリで管理している情報の例 | 案件管理アプリで管理している情報の例 |
お名前(ふりがな) 連絡先(電話番号・メールアドレス) 契約前住所 引渡し後住所 自社担当者 メルマガ送付対象かどうか 家族構成 |
お名前・連絡先(顧客管理アプリから連携) 案件状況(確度) 建築地番 案件名 自社担当者(営業・設計・工務等各担当を登録) 初報の経緯や初報時ヒアリング内容 契約までの経緯 お施主様の写真 着工予定日や地鎮祭等各種重要日付 |
案件管理は営業担当が使いやすいようにカスタマイズ!具体的なアクションが起こせる仕組みづくりへ
先ほど、案件管理アプリは受注確定前の案件発生の段階から登録する仕組みであるとご紹介しました。
受注前の段階で、案件管理アプリの使用頻度が最も高いのは営業担当です。
そのため案件管理アプリ作成にあたっては、営業部署で管理したい情報、営業担当がヒアリングすべき項目を中心に、登録・表示項目を設定。
経験に頼らずとも、確認すべき事項がアプリでわかるようになりました。
さらに、案件状況を可視化することで、その案件に対して次にどのようなアプローチをすべきかが明確になり、営業会議でPDCAサイクルを回していきやすくなりました。
関連レコード一覧とルックアップで案件情報を一元管理
案件管理アプリ作成にあたってこだわったのは「ひとつのアプリで全部を管理しようとしない」ことでした。
先ほど「案件管理アプリで管理している情報」を見て、「これだけ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、家を立てるまでには何度も打合せを重ね、もっと多くの情報が必要となるはずですが、案件管理アプリで管理している情報にはそれらの膨大な情報は含まれていません。
何故かと言うと、株式会社中美建設さまの案件管理アプリで「直接」管理はしておらず、案件管理アプリと紐づけた各業務に適したアプリでそれぞれ情報を管理しているからです。
「それだと複数のツールやエクセルを使っていたころと変わらないのでは?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
株式会社中美建設さまの案件管理アプリでは、「別のアプリで管理している情報も案件管理アプリで全て確認できるようになっている」のです。
この仕組みの秘密は、kintoneの関連レコード一覧とルックアップという機能にあります。
関連レコード一覧は、紐づけたほかのアプリや同アプリ内で条件に一致したデータを一覧表示できる機能。
例えば、1件の顧客データを選択した際、そのお客様に関連する案件データを一覧で表示してくれます。
エクセルで例えると、別のエクセルファイルで管理している情報を見られるようにする機能です。
ワンクリックで参照先へジャンプすることもでき、わざわざ画面を切り替えて探す必要がありません。
ルックアップは、関連する他のアプリから必要なデータをコピーして取得する機能です。
各アプリへの二重入力の必要がなくなり、入力ミスを減らすことができます。
例えば、案件管理アプリにお客様の名前を登録する際、顧客管理アプリに登録してある情報をルックアップすることで、個別に入力するのではなく、顧客管理アプリに登録された顧客一覧から選択できるようになります。
この関連レコード一覧機能とルックアップ機能でkintoneの各アプリを紐づけることで、例えば「このお客様から発注いただいた案件は何件あるのか」といった情報を検索しなくても把握することができるようになるのです。
一つのアプリに全てを盛り込む必要がなく、業務ごとにアプリを分けることができるため、アプリを適宜分けて作成することでひとつひとつのアプリの項目がシンプルになり、入力の手間や抜け漏れのミスも減らすことにもつながります。
他部門のアプリと紐づけることもできるため、これまでのように「各部門でそれぞれのツール・エクセルで情報を管理しているため、各ツールに入力が必要」といった状態を回避することが可能です。
株式会社中美建設さまでは、DM管理・スケジュール・日報・原価管理・工事の進捗・アフターフォロー・定期点検や展示場にお越しいただいた際のアンケート結果などを全て別のアプリとして作成し、紐づけを行いました。
「案件管理アプリ」をチェックすることで、すべての情報が確認できるようになっています。
案件管理アプリに紐づけた従業員のスケジュールやアンケートの回答結果集計については、以下の記事でご紹介しています!
▼全社員のスケジュール管理をグループウェアからkintoneへ移行|建設業株式会社中美建設さまの事例
▼アンケートの回答転記や集計の作業をスリム化したい!kintoneでアンケート管理業務の効率アップに成功|建設業株式会社中美建設さまの導入事例
建築業kintone活用のポイントは「情報登録フローを仕組化する」こと
kintoneでは、顧客管理・案件管理のアプリを軸として関連するアプリを枝葉のように作成して増やしていけます。
運用の範囲や必要なアプリを、自社の業務に合わせて拡大していけるため、現場の状況に沿った展開が可能です。
顧客管理アプリや案件管理アプリを業務の主軸とする置く場合、そのデータをどのタイミングで登録するか、その仕組みづくりも重要なポイントになります。
株式会社中美建設さまでは、初回対応の際にアンケートへのご回答をお願いし、担当部署が顧客管理アプリと案件管理アプリへの登録を必ず実施する、というフローにし、この二つのアプリを出発点として必要に応じてその他のアプリに登録していくフローにしました。
また、kintoneアプリが増えてくると、従業員さんが使いたいアプリを探すのに時間がかかることがあります。
kintoneトップページ「ポータル」は自由度が高く、ここによく使うアプリを表示しておくと業務がスムーズになります。
また、部署単位・チーム単位で参加者を設定してコミュニケーションに使える「スペース」にもアプリを追加でき、部署やチームで頻繁に使うアプリはスペース内アプリとして表示することも可能です。
顧客管理・案件管理をkintone化するメリット
顧客管理や案件管理をkintone化し、全部署で同じ情報を管理できるようになった株式会社中美建設さま。
二重入力が不要になったのはもちろん、kintoneに案件に関する全ての情報が集約されているため、案件一件一件の原価等をリアルタイムに集計することも可能となりました。
株式会社中美建設さまで顧客情報・案件情報をkintone化することで得られたメリットをまとめると、大きく以下の3つです。
- 契約後から案件に関わる部門でも、受注の経緯や進捗がわかる
- 情報の在り処を確認する手間がなくなり、オフライン業務が削減される
- データを蓄積できるため振り返りができる(原価/粗利、所要時間など)
さらに、業務改善が実現できたというこれらのメリットに加えて、年間の建築棟数が増加!
業務効率化や顧客満足度アップが業績にもつながっていることがわかります。
原価管理をkintone化して効率化&意識改革に活用した事例は以下の記事で紹介しています!
▼脱工事台帳!kintoneで原価管理|建設業株式会社中美建設さまの事例
kintoneアプリに集約した情報から、電話対応に必要な情報を着信時に表示できるようにした、事例はこちら!
▼kintone登録情報を連携!カイクラで電話対応品質向上|建設業株式会社中美建設さまの事例
原価管理だけじゃない!データを分析して営業支援
kintone導入により、全社で一貫した顧客管理・案件管理を実現した株式会社中美建設さま。
顧客管理アプリや案件管理アプリ、他アプリとの紐づけなどによって、さまざまなデータが蓄積されるようになりました。
これを活用すべく、複数のkintoneアプリのデータを集計・加工できるプラグインkrewDataの導入を進めています。
自社の見たい切り口で自動集計されたデータを分析することで、営業時に失注が起こりやすいフェーズや強化すべきポイントを洗い出し、次のアクションに繋げていくことが目標とのことです。
他にも、アプリで集約できたデータを協力業者さんと共有するなど、外部連携も検討中。
株式会社中美建設さまでのkintoneの活用、まだまだ広がっていきそうです!