kintoneを使って災害ボランティアのマッチングシステムを構築|サイボウズ社の災害支援プロジェクトに参加しました
令和6年の元旦に発生した能登半島地震では、石川県を中心に大きな被害を受け、今なお多くの方が避難生活を余儀なくされています。
被災された皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。
大規模な災害による避難生活や復興には、ボランティアの協力が欠かせません。
しかしその一方で、災害が起きるたびに支援物資やボランティアの調整が問題になります。
いつ・どこで・どれくらいの人や物が必要なのか、といった情報が整理されるまでに、時間がかかってしまうのです。
被災地になるべく負担をかけずに情報を共有し、速やかに支援を開始するためには、ITツールの活用が不可欠となります。
今回の能登半島地震で、私たちコムデックはkintoneの開発元であるサイボウズ社の災害支援プロジェクトに参加しました。
kintoneを使った災害支援として、ボランティアのマッチングシステムを構築するお手伝いをしましたので、その活動についてご報告します。
目次
炊き出しボランティアを手作業で調整するのは限界に…募集や受付、個別連絡を効率化したい!
地震から何日か経ったころ、道路状況が少しずつ改善し、奥能登の外からも民間グループが支援物資の提供や炊き出しに入れるようになりました。
しかし支援が本格化するにつれて、現地のボランティアが手作業で調整する方法には限界が近づいていました。
実際に、加賀から近い七尾や輪島南部では、炊き出しのバッティングも起きていたのです。
この状況を打開するためには、ボランティアの調整を手作業からシステムに移行し、次のような環境を整える必要がありました。
- 避難所を一覧化できる
- 避難所の代表者が状況を書き込める
- 避難所のイベントカレンダーが見える
- 支援団体が避難所に支援の申込みをできる
- 全ての情報をスマホで確認でき、支援の申込みもネットでできる
- なるべく電話でのやりとりを減らす
このような環境を実現するため、サイボウズ社のkintone(キントーン)と拡張機能を使って、ボランティアのマッチングシステムを構築することにしました。
マッチングシステムの全体像を設計し、試作品となるアプリを作成
まず必要なのは、炊き出しのニーズを登録する機能です。
避難所の代表者が、炊き出しを依頼したい場所・時期・量・メニューの要望・調理設備などを登録します。
次に、ポータルサイトで避難所の一覧と各避難所のカレンダーを表示できるようにします。
日付を選択すると、その日の全避難所の炊き出し予定が見える仕組みです。
最後に、ボランティア希望者が参加を申し込むためのシステムを構築します。
場所や日付などの条件で自分が行ける避難所を検索し、連絡先を添えて申し込むと、個々の避難所と直接やりとりができるようにしました。
これらの避難所とボランティアのマッチングシステムを、現場のニーズをふまえて設計していきました。
kintoneの情報は拡張機能を使ってボランティア希望者と共有
避難所や炊き出しの情報をkintoneに集約することは、そこまで難しくありません。
問題は、「一般のボランティア希望者に、どうやってkintoneの情報を共有するか」という点です。
ボランティアに興味がある人全員にkintoneのアカウントを付与するのは現実的ではありません。
この問題を解決するため、kintoneの拡張機能「じぶんシリーズ」と「kViewer(ケイビューワー)」を活用することにしました。
じぶんシリーズとは
じぶんシリーズは、kintoneのアカウントが無くても外部と情報共有ができるツールで、共有方法によってサービスが3つに分かれています。
1つめは、問い合わせや申込みができる「じぶんフォーム」、2つめはログインをせずにkintoneの情報を閲覧・編集できる「じぶんレコード」、3つめはログインして利用する「じぶんページ」です。
今回のマッチングシステムでは、避難所の代表者に「じぶんページ」を作成してもらい、ボランティア希望者には「じぶんフォーム」から参加を申し込んでもらうことにしました。
ボランティアの申込みがあると、避難所代表者の「じぶんページ」にプッシュ通知が届くので、内容を確認してステータスを「確認済み」に変更します。
そうすると、避難所代表者は「じぶんページ」のコメント機能でボランティア希望者とコミュニケーションがとれるようになる仕組みです。
「じぶんフォーム」から申し込みをしたボランティア希望者は、「じぶんレコード」のコメント機能でやりとりができます。
コメントはメールで通知され、「じぶんページ」ではプッシュ通知が届くため、連絡を見逃す心配もありません。
kViewerとは
kViewerも、じぶんシリーズと同じくkintoneのアカウントが無くても外部と情報共有ができるツールです。
じぶんシリーズと異なるのは、kViewerの利用にはID・パスワードの設定が不要で、不特定多数に公開できるという点です。
ログインが必要ないので、ホームページへの埋め込みもできます。
ただし、データの登録や編集はできず、閲覧のみとなります。
今回のマッチングシステムにおいては、避難所一覧の表示にkViewerを使いました。
これにより、ポータルサイトを訪れた人なら、誰でも避難所情報を閲覧できるようになりました。
システム構築のポイントは「ストック情報」と「フロー情報」の使い分け
避難所とボランティアのマッチングシステムを構築するうえでポイントになったのが、「ストック情報」と「フロー情報」の使い分けです。
ストック情報とは、特定の型で蓄積して後から見返したり再利用したりする情報のことで、アクセスしやすい場所で管理するのが原則です。
今回の事例で言うと、避難所の住所やボランティアの作業マニュアルなどがストック情報にあたります。
フロー情報は特定の型を持たず、その場限りの共有を目的とする情報のことを指します。
災害支援においては、このフロー情報のスピーディーなやりとりがカギとなります。例えば「明日は〇時に集合してください」「資料を送ってください」などのやりとりが、フロー情報です。
ストック情報とフロー情報は、情報としての価値に優劣があるわけではありません。
ストック情報はkintoneのレコードとして残し、フロー情報はコメント等で共有するというように、それぞれに適した形で管理できるよう工夫しました。
kintoneなら災害ボランティアのマッチングアプリもおまかせ!
今回、私たちコムデックは災害支援のプロジェクトに参加したことで、kintoneが幅広いニーズに対応できるツールであることを改めて実感しました。
ノーコードで開発できるので、災害支援のように急を要する場面でもスピーディーに対応でき、拡張機能や連携ツールも豊富なのがメリットです。
実際にマッチングシステムを導入してみた結果、運用上の都合で電話でのやりとりは残ったものの、データ入力や共有の面では事務局の負担を減らすことに成功しました。
避難所のITリテラシーを考慮し、現時点ではなるべく簡単なシステムにしていますが、まだまだ発展の余地があると感じています。
今後、すべてのやりとりをコメント機能でできるようになれば、さらに運用を効率化できそうです。
株式会社コムデックでは、ボランティアマッチングや地域住民からの相談対応を行う法人さま向けに、kintoneの「社会福祉協議会(社協)業務改善パッケージ」というサービスを提供しております。
ボランティア希望者の名簿や活動履歴の管理、マッチング、設備や備品の管理などが可能なパッケージです。
LINE WORKSやマネーフォワードなど、他のツールとも連携できるため、大幅な業務効率化が期待できます。
「ボランティアのマッチング業務が、個人の力量や経験に左右されている」「過去の活動実績や研修履歴が管理できていない」といったお悩みのある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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