不動産部門の複雑なエクセルもkintone化!バックオフィスの効率化で営業に注力|総合建設業 株式会社アイケーディさまのアプリ開発事例
kintone導入後、社内のエクセル資料はどれくらい減りましたか?
実は、kintoneを取り入れたものの、なかなか社内のエクセル業務がなくならないという悩みを持つ企業さまは少なくありません。
「担当者がエクセルに慣れている」、「今のエクセルを使い続けることに不便さを感じていない」「エクセル内の計算式等の仕組みが複雑で、kintone化のために仕組みを分解するのは難しい」など理由はさまざまですが、それこそまさに属人化、ブラックボックス化の要因の一つです。
もし今不便さは感じていなくても、会社全体の目線で「このままエクセルを使い続けることが正しいのか?」、「コア業務に注力できる体制をつくれているのか?」を考えたらどうでしょうか?
今回の記事では、不動産部門の共益費を管理していたエクセルをkintone化し、バックオフィス業務を効率化することで、本来時間をかけたい営業業務に注力できる状態を目指した事例をご紹介します。
目次
バックオフィスを中心にkintone活用、営業に注力したい
三重県津市に本社を構える株式会社アイケーディさまは、「お客さまに満足していただける構造物を提供する」を経営方針に掲げ、1942年の創業以来、地域社会の発展に挑戦し歩み続けている総合建設業の会社です。
工事を行うだけではなく、賃貸管理や駐車場の管理も行っています。
株式会社アイケーディさまは、現代の働き方や情報化時代に合わせて、かねてより最新機器の導入やバックオフィスのDX化に力をいれており、kintone(キントーン)やLINE WORKS(ラインワークス)等のクラウドサービスを積極的に活用してきました。
バックオフィスの業務改善に乗り出したきっかけは「現状認識」
今回さらなるバックオフィスの改善を目指したきっかけは、自社の置かれている現状と、それを踏まえてどんなことに取り組んでいくかを検討するための「現状認識」でした。
「バックオフィスの改善」と一言でいっても各社が抱える課題はさまざまで、やみくもに改善を試みても部分最適化に陥って「便利になった」で終わってしまい、会社としての目標達成には繋がりません。
バックオフィスの改善でもたらされるゴールは、事務工数の削減がもたらす人件費の「コスト削減効果」や、事務仕事で発生していたリソースをコア業務に注力することで生まれる「生産性の向上」です。
バックオフィスの改善でどのような効果を得たいのか?
まずは、明確なゴールを設定し、課題を洗い出し、解決する施策を考案し、優先順位を定めて実行していくことが必要になります。
現状認識のプロセス
- 今回の改善のゴールをどこに設定するのか
- そのゴールを達成するために何を改善すべきか課題の洗い出し
- その課題を解決するための施策の検討
- 施策の優先順位を定め、実行に移す
現状認識についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をチェック!
▼現状認識から始めるDXの挑戦!DXのカギを握る「CX」の考え方のポイント
1.ゴールの設定
株式会社アイケーディさまの社長と経営企画部長、事務担当者とコムデックが一緒に現状認識を進める中で、最終的なゴールは「売上の増強」であると再認識しました。
2.課題の洗い出し
売上を伸ばすためには、営業に力を入れる必要があります。
しかし、その時の株式会社アイケーディさまの営業担当者は社長ともう一人、経営企画部長が兼務で行っている状態。
経営企画部長の担う事務作業は多く、営業のリソースを充分に確保できない状態でした。
3.施策の検討
そこで、バックオフィスの業務改善により事務作業の工数を減らし、減った工数を営業のリソースに充てることで営業を強化して、ゴールの実現を目指すこととしました。
つまり、経営企画部長の事務作業を減らし、営業に注力できる体制を作ることが課題に対する施策となります。
具体的にどんな事務作業を削減していけるかについては、当時事務で行われていた事務作業のリストを挙げていただき、kintone化の検討を進めました。
4.施策の優先順位を決定
多くの業務の中でどこから業務改善(アプリ化)をしていくべきか?は各社の状況によって変わってきます。
例えば、kintoneをこれまで使っていない部署や担当者にkintoneを使ってもらいたいということであれば、できるだけ簡単でシンプルな業務をアプリ化すべきでしょう。
逆に、もうkintoneは使い慣れているということであれば、「時間がかかっていて複数の資料が絡むような複雑な業務(kintone化する効果が大きい業務)」のkintone化を進めるのがおすすめです。
株式会社アイケーディさまの場合には、数年前からkintoneを導入しており、事務員の方々はkintoneも使い慣れています。
そのため、時間がかかる複雑な業務のkintone化にも取り組める状態でした。
列挙していただいた事務作業の中で、まず取り組んだのは駐車場の管理でした。
株式会社アイケーディさまが管理する駐車場は20箇所ほどあり、それぞれ駐車場のオーナーが存在しています。
駐車場には10~30台ほどのスペースがあり、各駐車スペースに車1台ずつ契約者が存在、さらに立地や軽自動車用などで月極賃料も異なる状態で現場の賃貸管理・契約管理は限界に達していました。
この複雑な賃貸管理契約管理を紙ベースからkintone化して効率化した事例です。
▼kintoneで不動産管理!駐車場の契約情報を一元化|建設業 株式会社アイケーディさまのアプリ開発事例
続いて着手したいと考えたのは、駐車場管理と同じく不動産部門で、ビルの中の各テナントに対して電気代や水道代を請求するための共益費の管理でした。
複雑な計算式、属人化で分担できない……そんなエクセルありませんか?
共益費の管理とは、株式会社アイケーディさまが管理しているビルに入っているテナントに対して毎月の共益費として請求する電気、ガス、水道等の費用の計算を行う事務作業です。
当時、株式会社アイケーディさまが利用されていたエクセルの共益費管理はこちら。
このエクセルシートは全部で13もあり、さらにひとつのフロアに複数のテナントが入っているため以下のような課題を抱えていました。
- 各テナントの面積に応じた費用の按分も行っているため、エクセルの計算式が複雑すぎる
- シートが複数に分かれているため、入力も各シートに対して行う必要があり、操作が分かりにくい
- 仕組みを理解している人が担当者一人のため、計算式を壊してしまう恐れがあり担当者以外は怖くてエクセルをさわれない
- エクセルファイルや計算式が破損や何らかの障害があったときに再構築できない
以前少しでも業務を楽にしようと構築したエクセルが逆に属人化を生んでしまうケースは少なくありません。
今回、この共益費管理のエクセルをkintone化するにあたっては、今度こそ事務のスタッフが誰でも簡単に操作できて一覧できる仕組み作りを目標としました。
13のエクセルシートを4つのkintoneアプリに集約
エクセルのシートごとの連携が複雑だったため、実際に利用しているエクセルを参照しながら、不要な項目やシートごとの計算式の連携、また、既に活用しているkintoneの項目との紐づけをヒアリング。
ヒアリングの内容を元にいったんプロトタイプのアプリを開発し、使い方を説明しながらその場で修正をしていく対面開発方式で構築を進めていきました。
従来のエクセルでは一つのエクセル内の13シートに入力していく形でしたが、「1シート=1アプリ」というわけではなく、ヒアリングの結果アプリは4つに集約させることができました。
アプリ1:共益費入力(全体)…共用部分の電気代等をアプリ
アプリ2:テナント電気代入力…個別の電気代を入力するアプリ
アプリ3:共用電気/掃除/セコム/空調機…1のアプリに入力された共用部分の電気代等を各テナントの床面積を元に按分し微調整するアプリ
アプリ4:参考合計…アプリ1~3を集計するアプリ
共益費入力(全体)アプリには、共用部分の電気代や水道代、ごみ処分費やエレベーター、浄化槽等の料金を入力します。
このアプリに入力された情報を元にテナント面積に応じた按分を行います。
テナント電気代入力アプリでは、各テナント毎の電気代をテーブル形式で入力します。
共用電気/掃除/セコム/空調機アプリでは、共益費入力(全体)アプリに入力された料金を、テナント毎の面積に応じて自動的に按分した結果を表示しています。
端数の調整が必要なため、自動算出された値を手で修正できるようにアプリ化しました。
これら複数のアプリからデータを集計したり、床面積に応じて按分するのには、複数アプリからの集計が可能なプラグイン「krewData(クルーデータ)」を活用しています。
krewDataを使うことで、プログラムを書かなくても複雑な集計処理をこなすことが可能です。
各アプリに入力された値から、自動的に各テナント別の請求金額を算出してくれます。
参考合計アプリからは、プリントクリエイターでテナントへの請求書を印刷することで、一連の業務をkintoneだけで完結させることができる環境が整いました。
脱エクセルの効果とは?必要な情報をkintoneで一元管理
今回の株式会社アイケーディさまのバックオフィス改善プロジェクトでは、いままで属人化し複雑で手をつけることが難しかったエクセルをkintone化したことで、各テナント毎の共益費額を自動計算するためのアプリが出来上がりました。
今後、株式会社アイケーディさまでは今回構築したアプリを使っていくことで、以下のような効果が期待されています。
- 自動化により事務作業効率化・部長の事務工数を実現し、営業リソースの増加に貢献
- 自動計算から請求書印刷まで一括してkintoneで実施できるようになる
- kintone化と手順のマニュアル化により属人的な管理方法から脱却し、誰もが簡単に操作できるようになる
バックオフィスのkintone活用で売上増へ
バックオフィスの改善は、作業工数の削減によるコストダウンをゴールとする事例が多く見られます。
しかし、コストダウンばかりに目を向けるのではなく、作業工数を削減して、その工数をコア業務に充てることで生産性の向上を促して売上増をゴールにすることで、「業務改善」そのものが目的にならず、より生産性の高い組織を目指していけると考えています。
今回の株式会社アイケーディさまの事例では、kintoneとプラグインを活用しながら共益費管理をアプリ化し、事務作業工数を削減することで売上増につなげるための営業リソースの確保を目指しました。
実際のアプリ活用はこれからですが、今後はさらなるリソース確保を目指し、他のビルの共益費を計算するアプリの開発や、電気メーターの月次確認を省力化する方法も検討しています。
「バックオフィスの改善で売上増を目指したい」、「属人化を脱却したい」、「不動産業の業務改善をしたい」、「賃貸管理や契約管理を効率化したい」事業者さまは、ぜひ一度kintoneの活用を検討してみてはいかがでしょうか?
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