給与の日割り計算のやり方は?欠勤や手当はどうする?注意点についても徹底解説
月の途中で従業員が入退社したり、欠勤があったりした場合は「給与の日割り計算」が必要となります。
計算方法について明確な定めはないものの、合理的な計算方式を適用することが大切です。
そこで今回の記事では、具体的な「給与の日割り計算」のやり方を徹底解説いたします!
正しい計算方法で従業員の不利益を回避し、ミスやトラブルを防ぎましょう。
この記事を読んでわかること
- 給与を日割り計算する際の具体的な計算式
- 日割り計算時の注意点
こんな人におすすめの記事です
- 従業員の給与計算方法について知りたい方
- 給与の日割り計算について正しく理解したい方
目次
給与の日割り計算に法的なルールはない
結論から述べると、給与の日割り計算に法的なルールはありません。
日割り計算する際の計算方法は、各企業の裁量に任せられています。
ただし、計算方式は根拠のある合理的な方法を用いる必要があります。
また、従業員ごと・経理担当者ごとに計算方法が異なることは避けなければいけません。
企業は従業員の労働に対して対価を支払う義務があるため、不利益が生じない公平な計算方法を採用しましょう。
給与の日割り計算3つのやり方
給与の日割り計算のやり方は、主に以下の3つがあります。
- 暦日を用いる
- 当該月の所定労働日数を用いる
- 月平均の所定労働日数を用いる
公平かつ複雑すぎない計算方法のため、多くの企業で採用されています。
暦日数を用いる
当該月の暦日数を用いる計算方法です。
暦日とは、「午前0時から午後12時までを一区切りとする一日」のことです。
つまり「該当月の暦日数」とは、「その給与計算期間の実日数」を指します。
月給÷当該月の暦日数×出勤日数=支給額 |
例:月給20万円の社員が、30日ある月の内10日出勤した場合
200,000円÷30日×10日=66,667円(端数切上)
この計算式の特徴は、月の暦日数によって金額が変動する点です。
先ほどの例で言うと、暦日が28日の場合は71,429円、31日の場合は64,517円となります(端数切上)。
シンプルな計算方式のためミスが発生しにくく、事務処理をスムーズに行えることがメリットと言えます。
当該月の所定労働日数を用いる
当該月の所定労働日数(営業日)を用いる計算方法もあります。
月給÷当該月の所定労働日数×出勤日数=支給額 |
例:月給20万円の社員が、所定同労日数が22日ある月の内10日出勤した場合
200,000円÷22日×10日=90,910円(端数切上)
土日祝日などの休日分を数えないため、暦日を用いるよりも1日あたりの金額が高くなるのが特徴です。
月の所定労働日によって金額が変動するため、年末年始のある1月やゴールデンウィークのある5月等は計算に用いる所定労働日数が少なくなります。
(年末年始やゴールデンウィークは休みの企業の場合)
月平均の所定労働日数を用いる
ここまでご紹介した方法は、その月の日数によって金額が上下します。
一方、各月の日数格差をなくす方法として、月平均の所定労働日数を用いる計算式もあります。
①年間所定労働日数÷12=月平均の所定労働日数 ②月給÷月平均の所定労働日数×出勤日数=支給額 |
例:年間休日日数111日の会社で月給20万円の社員が10日出勤した場合
①365-111日=254日÷12=21.6日
②200,000円÷21.6×10日=92,593円(端数切上)
この計算式の特徴は、月ごとで1日あたりの金額変動がない点です。
年間の所定労働日数を12ヶ月で平均化するため、月による損得が発生しません。
そのため、企業にとっても従業員にとってもフェアな計算方法になります。
【補足】労働時間単価で計算する場合
ここまでご紹介した方法は「出勤日数」を元に計算する方法でしたが、給与の日割り計算には、上記3つのほか「労働時間単位で計算する」という方法もあります。
この方法を用いれば、残業代や休日出勤などの計算も可能です。
計算方式の手順は以下のとおりです。
①年間の所定労働日数を計算(年間の歴日数−年間休日) ②年間の所定労働時間を計算(年間の所定労働日数×1日の所定労働時間) ③1ヶ月の所定労働時間を計算(年間の所定労働時間÷12ヶ月) ④時間単価を計算(月給÷1ヶ月の所定労働時間) ⑤該当の労働に合わせた割増賃金を計算(時間単価×時間×割増率) |
例:年間休日日数111日の会社で月給20万円の社員が10時間残業した場合
①365日−111日=254日
②254日×8時間=2,032時間
③2,032時間÷12ヶ月=169.3時間
④200,000円÷169.3時間=1,181.3349….円
⑤1,181.3349….円×10時間×1.25=14,767円(端数切上)
今回は計算が分かりやすいよう20万円で計算しましたが、そのほかに割増基礎単価に加えている手当等がある場合にはそれも含めて計算を行う必要があります。
また、残業代や休日出勤手当、深夜手当等は労働時間に基づいた所定の割増率で計算を行いましょう。
各種手当の日割り計算について
残業代等時間を元に算出される単価以外の、毎月一定額を支払う各種手当については、基本的に日割り支給ではなく全額支給が望ましいとされています。
何故なら、住宅手当・扶養手当などは、出勤日数が少ないからといって不要になるものではなく、手当は従業員の生活の負担を軽減する福利厚生的な役割を担っているためです。
ただし、こちらも法的なルールはないため、会社の裁量に委ねられています。
基本給だけではなく、各種手当についても日割り計算も行うのであれば、基本給と同様の方法で日割り計算を行いましょう。
また、資格手当や皆勤手当などの扱いについては、あらかじめ就業規則等へ明記・周知しておくことが大切です。
給与を日割り計算する時の注意点
給与を日割り計算する時は、以下の3つの点に注意しましょう。
- 計算方法の明記
- 従業員の不利益回避
- 最低賃金の確保
これらを遵守することで、従業員とのトラブルを防ぐことができます。
計算方法を明記する
給与の日割り計算には法的なルールがないからこそ、就業規則や賃金規定などに計算方法を明記し、従業員に周知しておく必要があります。
皆がわかる形で明記し、その通り運用することで、従業員間での格差・不平不満の発生を防ぐことにつながります。
また、規則で定めることにより、担当者が変更になった場合でも事務処理をスムーズに進められます。
従業員の不利益を回避する
給与の日割り計算は、従業員に不利益が生じない計算式を採用すべきです。
給与は労働に対して支払う対価であるため、適切に支払う義務があります。
以下はよくあるケースなので注意してください。
- 勤怠情報に間違いがあり、支給金額が少なくなってしまった
- 本来含めるべきではない各種手当を日割り計算に含めてしまった
- ルールを定めていなかったため、入社時期の異なるAさんは暦日、Bさんは所定労働日数で日割り計算を行ってしまった
正確な給与計算・支払いは、従業員との信頼関係に直結します。従業員とのトラブルを予防し、良好な関係を築きましょう。
最低賃金を下回らないようにする
日割り計算をする時は、支給される給与が最低賃金を下回らないようにしましょう。
特に「所定労働日数の多い月に、数日だけ出勤して残りは欠勤した」ような場合には注意が必要です。
気を付けるべきポイントを具体例で解説します。
- 基本給:200,000円
- 月平均の所定労働日数:21日
- 1日の労働時間:8時間
- 出勤日:3日
- 欠勤日数:20日
まず、所定労働日数を用いて1日当たりの給与額を算出します。
1日あたりの給与:200,000円÷21日=9,524円(端数切上)
続いて、1日当たりの給与額と欠勤日数を元に、控除すべき金額を算出します。
当月の欠勤控除:9,523円×20日=190,460円
給与額から控除額を差し引くと、当月の給与額が算出されます。
当月給与額:200,000円−190,460円=9,540円
しかし、算出された金額をよく見ると、ほぼ1日当たりの給与額と変わりません。
3日×8時間で24時間は勤務をしていますから、この給与額を出勤時間で割ると、以下の通り最低賃金額を下回ってしまいます。
時給換算:9,540円÷24時間(1日8時間×3日)=397.5円
このような結果になる場合は、月平均ではなく当該月の所定労働日数の計算方式を用いるか、時間単価での計算を行う等の方法で回避する必要があります。
ただし、すでに就業規則に定めている欠勤控除に関する計算方式を変更する際は、就業規則の改定が必要です。
所定労働日数で計算する場合
1日あたりの給与:200,000円÷23日=8,696円(端数切上)
当月の欠勤控除:8,696円×20日=173,920円
当月給与額:200,000円−173,920円=26,080円
時間単価で計算を行う場合 ※年間休日111日の場合
年間労働日数:365日−111日=254日
年間労働時間:254日×8時間=2,032時間
一か月あたりの労働時間:2,032時間÷12ヶ月=169.3時間
一時間当たりの単価:200,000円÷169.3時間=1,182円(端数切上)
1,182円×3日×8時間=28,368円
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従来のソフトやエクセルでの日割り計算には注意点が多く、手間がかかります。
また、従業員とのトラブルを防ぐためにも、計算ミスは許されません。
給与計算のミスについてはこちら!
▼給与計算のミスが多い原因と対処法・ミスを防止するためにやるべきこと
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▼給与計算ソフトおすすめ10選を徹底比較!少人数・中小企業にも最適
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給与の日割り計算は、従業員の入退社や欠勤時などに発生する業務です。
正しい日割り計算は従業員とのトラブルを防ぎ、会社との信頼構築につながります。
しかし、給与の日割り計算は担当者自らが1から計算すると、手間や時間がかかります。
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